現代日本に転生した諸葛孔明がシンガー・月見英子をプロデュース、共に音楽業界の頂点を目指す姿を描くテレビアニメ『パリピ孔明』の総集編となる劇場アニメ『パリピ孔明 Road to Summer Sonia』が現在公開中。新規ライブシーンも追加され、ファン待望の作品に仕上がった。
月見英子の歌唱を担当するのは「歌ってみた」で絶大な支持を受けるシンガー・96猫。彼女が歌唱の際に込めた想いと、『ANIMAX MUSIX 2022』の思い出について語ってもらった。

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■英子の自信がないところは96猫そっくり?

――『パリピ孔明』劇場版公開を迎えての率直な思いは、どんなものでしょうか。

96猫 驚きですよね! 私自身としては観たいような、観たくないような……という感じなんですが(苦笑)。

――それはまた、どういった理由で?

96猫 映画館では大音量で曲を聴くことができるじゃないですか。それは心地よいことだとは思いつつ……逆に言えば自分の歌声を大音量で聴くことにもなる。それを体感したら「もっとこうすればよかった……」という反省点に目が行ってしまい落ち込む気がするんですよ。とは言え、皆さんからの反響は今から楽しみではあります。

――テレビアニメ放送時も、反響は大きかったかと思います。

96猫 すごかったですね。特に印象的だったのは中国の方からの反響。本作はテーマのひとつに”三国志” があり、中国の方が観てどう感じるのかは気になっていたんですよ。
でも、SNSを見る限り肯定的な意見が多かったので、すごくホッとしたのを覚えています。

――印象に残っているコメントなどはありますか?

96猫 私自身、中国語が読めるわけじゃないので「なんとなく好意的だな」くらいにしか理解できてないんですけれど……(苦笑)。ただ、「英子ちゃん可愛い!」といったニュアンスのコメントが多かったように思います。また、そんな英子ちゃんの歌唱を96猫が担当していることに驚いている人もかなりいましたね。

――改めて96猫さんが歌唱を担当した英子の印象をお聞きしたいです。

96猫 とにかく不器用。でも、そのおかげで真っ直ぐに生きられている女の子だと感じました。あと自分を客観的に見られていないため、実力があるのに自信を持てずにいることも印象に残りました。「もっと自信持って大丈夫だから!」とエールを送りたくなる存在でした。

――英子とご自身の中に通じる部分はありましたか?

96猫 自分に自信がないところは私そっくりですね(苦笑)。私自身、ライブやレコーディングの時はスイッチを切り替え、自信を持って歌うようにはしているんですよ。でも、素の私は常に自信がなく反省ばっかりしている。なので、英子ちゃんにはすごく共感しましたね。特に「DREAMER」完成に向けて自身を失ったり、それを取り戻す姿は「分かる!」と思いながら観ていました。

■バランス感が難しかった「六本木うどん屋(仮)」

――今作では96猫さんは英子というキャラクターを演じながら歌唱をしています。歌う際に注意していたことはありますか?

96猫 歌声が可愛くなりすぎないように注意していました。彼女はもともとマリア・ディーゼルという海外アーティストに憧れて歌手を目指しているので、普段はキュートでも歌う際はその可愛さを前に出さないはずだと考えたんです。なので、高音だけど芯がある声で歌うように意識をしていました。

――英子はクラブを中心に活動する歌手でしたので、クラブ映えする歌声にしようという意識もあったのでは?

96猫 そこはあまり意識してないですね。ただ、楽曲が良質なクラブミュージックだったため、曲に引っ張ってもらいながら歌うようにはしていました。あと、クラブはガヤガヤした場所というイメージは持っていたので、そういった環境でも耳に入ってくるような歌い方をするようには気を遣っていました。

――物語が進むにつれて歌い方を変化させる、ということもあったかと思います。

96猫 ありましたね。序盤で使用される「Be Crazy For Me」と終盤で歌われる「DREAMER」では歌い方も全然違う。最初は完全に英子ちゃんとして歌っていたのが、後半に向かうにつれて歌声に96猫要素が増していった気がします。

――その変化が訪れたのはどうしてなのでしょうか?

96猫 本作では序盤、英子ちゃんの中に ”歌う理由” があまりなかったと思うんですよ。なので私もただただ英子ちゃんになりきって歌えばよかった。対して後半では彼女の中に歌う理由が芽生え、歌声にメッセージ性がこもるようになる。結果、私自信の感情が歌声に乗り、英子ちゃんと96猫のクロスオーバーした歌声を発するようになったんだと思います。

(C) 四葉夕ト・小川亮・講談社/「パリピ孔明 Road to Summer Sonia」製作委員会

――心境の変化が如実に見られた楽曲として「DREAMER」と、そのデモとして制作された「六本木うどん屋(仮)」もありました。

96猫 この2曲の歌い分けにはかなり気を遣いました。特に「六本木うどん屋(仮)」は難しかったですね。この曲は英子の強い想いが詰まっているものの、曲として完成されてはいない。にも関わらず、聴いた孔明の心を打つんですよ。その全てを実現するバランスにはとても悩まされました。

――すると「DREAMER」の方が歌いやすかったのでは。

96猫 「DREAMER」は素直に、全力で歌えばよかったので「六本木うどん屋(仮)」よりも気楽で、収録も気持ちよくできました。ただ、決して簡単ではありませんでしたね。七海に対する強い想いが乗った歌でしたから、すごく気合を入れて収録に臨みました。

――物語終盤ではAZALEAの楽曲である「UNDER WORLD」も歌われています。この曲はどのように歌ったのでしょうか?

96猫 あのシーンで英子は、七海に対し「自分のことを見つめてほしい」と思っているはずなので、”英子から見た七海” を表現するように努めました。
英子になりきってAZALEAのインプットをして、それをアウトプットするように歌いましたが、これも難しかった……。

――完成したアニメのライブシーンを観ての感想は。

96猫 すごく不思議な気持ちになりました。歌声は私のものなのに、画面の向こうには確かに英子ちゃんが存在していて歌を披露している。これまでに味わったことのない感覚があり、新鮮な気持ちになりました。

■ANIMAX MUSIXでは英子が降りてくる感じがした

――その後96猫さんは「EIKO starring 96猫 & 久遠七海 starring Lezel from パリピ孔明」としてANIMAX MUSIXにも出演しています。

96猫 ありがたかったですね。ただ、あの日のパフォーマンスについてはかなり悩まされました。
月見英子と96猫、どちらとしてステージに立つべきなのか……おそらくオーディエンスの多くは英子ちゃんの歌を聴きにきていると思ったんですが、そこに確証が持てないまま本番を迎えてしまったんですよ。なので、歌い始めた時は英子と96猫の間でフワフワしながらのパフォーマンスになっていました。

――そこからどのように立ち直っていったのでしょうか。

96猫 きっかけは歌っている途中、イヤモニターを外した時、皆さんからの生の歓声が聴こえてきた時でした。
その熱量を直に感じることができた瞬間、自分の中に英子が降りてきた感じがして、そこからは自然と英子になりきって歌えたように思います。

――七海の歌唱を担当したLezelさんとの共演はいかがでしたか?

96猫 彼女からはすごい熱量を感じました。ライブの演出上、お互いの姿は見えていなかったのですが、すぐ側にいるような感覚で歌うことができました。出番が終わった後、ふたり共汗だくだったのを覚えています(笑)。

――英子と七海、共にステージの立つ姿は作中では見られない光景で貴重な機会となりましたね。

96猫 本当だ!! それ、すごい胸熱じゃないですか! 私も客席で観たかったな……(苦笑)。

――これだけの歩みを経ての劇場版公開となりました。改めて、楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

96猫 『パリピ孔明』は音楽を主題に、英子ちゃんの成長と周囲との絆を描いた作品となっています。観ていると元気と勇気を貰える作品になっているので、劇場で楽しんでいただけたら嬉しく思います。よろしくお願いします。

(C) 四葉夕ト・小川亮・講談社/「パリピ孔明 Road to Summer Sonia」製作委員会