“火”で始まり、“水”で終わる映画「怪物」。これを証明するかのように、映画の最後には故・坂本龍一さんの「Aqua」が挿入され、余韻を残す。

是枝裕和監督は「この映画の物語に音楽が必要だとすれば、坂本龍一さんの音楽でなければならないと思いました。撮影する村に行って、湖を初めて見た時からそのように感じました。 直感的に、『この映画には彼の音楽しかない』と思いました。しかし、坂本龍一さんが病床にあり、音楽をお願いした時に承諾してくれるという確信はありませんでした。そのため、もし断られたら、映画に音楽を入れないことにしようとも思いました。結果的には彼の音楽を使うことができて、本当に感謝しています」と述べた。

映画「万引き家族」「ベイビー・ブローカー」から「怪物」まで。是枝裕和監督の作品は、家族の概念だけでなく、疎外された人々を扱うことにも注目している。今回は性的マイノリティの物語まで、監督が映画を通じて観客に伝えたいメッセージがあったのだろうか。

監督は「『万引き家族』を例に挙げれば、私たちがいつも受け入れてきた家族と親子の関係を揺さぶり、それに対して疑問を投げかけたいという気持ちで、映画を作りました。このような映画が多くなるべきだと思ったからです。韓国も同じかもしれませんが、日本では“同調圧力”が強いです。皆が同じでなければならないとか、似ていなければならず、“普通の価値”を持たなければなりません。そうでない人は排除されます。その中で苦しんでいる少数者は本当に多いです。映画を通じて必ず変化を図らなければならないというわけではありませんが、一般的でない人々を映画の中で描きたいと思いました」と語った。

この日、監督は韓国と再びコラボレーションをしたいという願いを明かしながらも、「まだ秘密です」と笑った。彼は「まだ具体的に動いてはいませんが、これから実現させたいと思っている企画はたくさんあります。その中にはもう一度韓国の俳優たちと一緒にやりたいという計画もあります」と伝えた。

また「特に一緒に仕事をしたいと思う俳優は」という質問に彼は、「今まで一緒にやってきたソン・ガンホさん、ペ・ドゥナさんとも良い関係を築きました」と、彼らに対する愛情を示した。

そして「まだ一緒に仕事はしていませんが、映画祭や試写会で挨拶を交わした方々はすごく多いです。そのうち、キム・ダミさんとハン・イェリさんがすごく魅力的だと思っています」と答えた。 

さらに彼は、韓国映画の撮影現場の長所にも言及した。彼は「韓国映画の撮影環境は、日本よりも充実していると感じました。働く場所として映画の現場はとても豊かで、魅力的でした」と明かした。

続いて「そのような点では、日本が(韓国より)遅れていることを実感しました。韓国での経験を活かして、日本の映画環境を良い方向に発展させたいです。もちろん、両国間で学ぶ点はあると思います。日本とたくさん交流してほしいです」と述べた。