前述したように番組のホストアーティストとして八面六臂の活躍を見せる黒沢だが、実は『Spicy Sessions』を誰よりも楽しんでいるのも彼だ。クリス・ハートのオリジナル曲「I LOVE YOU」を番組での歌唱曲に選んだ理由が「歌いたかったから」。Penthouseの浪岡真太郎、大島真帆と歌った、徳永英明「壊れかけのRadio」では、サビでボルテージが上がり、のけぞるように高音をシャウトする浪岡の様子に「いっちゃってるな、楽しそうだなって、ニヤニヤしちゃった」と感想を述べている。

さらに驚いたのは、浪岡に合わせ、本番で自分のハーモニーの一部のニュアンスを即興で変えてきたことである。「壊れかけのRadio」はセッション曲ではなく、事前に決めていた曲だったが、リハーサルとは異なる表情のハーモニーを聴かせてくれたのだ。声を楽器に見立てたら、これこそインプロビゼーション(即興演奏)である。オンエアされたセッション曲も、次にセッションするときには違う形になっているかもしれない。そう考えると、まさにその一瞬だけの楽曲の形が放送されるのが『Spicy Sessions』という番組である。

番組の第1回では、失敗してやり直した部分も放送された。なぜなら『Spicy Sessions』は音楽番組であると同時に、ドキュメント番組でもあるからだ。そう思って観ていただくと、また違った刺激が発見できそうである。

■黒沢薫&中西アルノ インタビュー
収録を終えた黒沢薫と中西アルノに『Spicy Sessions』という番組について訊いた。

Q.『Spicy Sessions』には“刺激的な音楽番組”ってキャッチフレーズがついていますよね。MCのおふたりは、この番組からどういう刺激をもらっていますか?
中西:刺激ばっかりです。この番組のすべてが刺激になっています。黒沢さんから歌のアドバイスをいただくことも刺激だし、黒沢さんがゲストの方とセッションしている姿を間近で観られることも刺激。収録中はずっと刺激的な時間です。
黒沢:僕は、アルノさんの歌声に刺激を受けています。最初にアルノさんの歌を聴いたときは本当に驚きました。それで、アルノさんの歌をもっと聴いてみたいと思って、MCを一緒にやってくれないかなって話になったんですよね。で、今それが叶って、一緒に『Spicy Sessions』をやらせていただいているんですけど、引き出しがどんどん開いていく感じを見ていて素晴らしいなと。一緒にセッションしていてすごく楽しいですし、尊敬してますね。

Q.中西さんは、この番組でいろいろなアーティストの曲を歌うにあたり、どんな準備をしていますか?
中西:まずは曲をちゃんと自分の中に落とし込んで、咀嚼してから歌うっていうことを心がけています。例えば、この曲を歌うってなったら、本家(オリジナル)だけじゃなくて、いろんな方のカバーを聴いたりします。
黒沢:おぉ、そうなんですか。オリジナルを聴いて、そこに対して“私の歌はこう…”って持っていくんじゃなくて、いろいろ聴いた中で取捨選択してるんですね。それは初めて聴いたなぁ、すごい!
中西:ありがとうございます!

Q.黒沢さんがこの番組の中でいちばん高まる瞬間は?
黒沢:観覧に来てくれたお客様との距離が近いから、顔とか反応からお客様も満足してもらえてるのかなって思える手応えがあるのが、まずうれしい。それから、収録が終わった後に、ゲストの人が“やってやったぜ!どうだ!”みたいな顔をして喜んでいると、番組のMC、ホストとしては成功したなと思いますね。アーティストが、セッションという少しヒリヒリしたスリリングなスタイルを楽しんでくれて、いい笑顔を見せてくれる。そこが出来ているのが1番うれしいし、セッションして歌っている中で自分もどんどんテンションがあがっていきますね。