お金持ちは、どうやってお金を貯めているのか。韓国で4年連続ベストセラーを記録した、実業家キム・スンホさんの著書『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)より、一部を紹介する――。
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■お金持ちは、お金を呼ぶ「種銭」を持っている

まだ水道が普及していなかった時代は、井戸を掘って地下水を汲(く)み上げて使ったものだ。

地下の水脈にパイプを挿入してポンプを取り付ける。そしてポンプにバケツで水を一、二杯注いでから、ピストンを力いっぱい上下に動かすと、地下にある水が汲み上げられるのだ。ポンプの構造を見ると、内部に水を引き上げるためのシリンダーがあり、そこにゴム弁がついている。水を汲み上げる際にゴム弁がシリンダーをふさぎ、汲み上げた水が下に漏れないようになっているのだ。

このときに上から注ぐ水を「呼び水」という。水を呼ぶ水、という意味だ。最初に呼び水を入れてやりさえすれば、ポンプを動かしつづける限り水を汲み上げることができるが、呼び水なしに水を汲むことはできない。だから、ポンプの横には常に呼び水用の桶(おけ)が備えてあった。

お金を貯めるときも同じで、資本を集めて投資して資本収益を得ようとするなら、呼び水にあたるお金が必要となる。それが種銭だ。

■若者でも1000万円を貯められる5つの方法

種銭とは、文字どおり作物でいえば「種」にあたるお金のことだ。適正な投資をおこなうには、1000万円ほどの資金が必要だ。それぐらいはないと、株や不動産で意味のある投資はできない。この資金は、これから1億円、10億円、100億円を生み出す種になるものだ。では、若い人たちが1000万円を作るにはどうしたらいいだろうか。その現実的な方法を5つ挙げておこう。

1.1000万円貯めようと言葉に出す。
2.「私は1000万円貯めてやる」と紙に書いて壁に貼る。
3.クレジットカードをハサミで切って捨てる。
4.銀行口座を用途別に複数作る。
5.まず100万円貯める。

何か成し遂げたいことがあるときは、まず「本当にこれをやってやる」という気持ちを持つべきだ。静かに机の前に座り、こう独り言を言ってみよう。

「私は自分の代で家族の貧困の連鎖を断ち、 みんなから尊敬されるお金持ちになって、 家族と愛する人を守っていきたい」

そう言葉に出した瞬間、言葉は力を持ち、それを実現するための行動へと導いてくれる。言語を閉ざすと、思考が閉ざされ、行動も閉ざされる。逆に言語を開いてやれば、思考も開かれ、行動へとつながるのだ。この言葉を心の底から、真剣に口に出そう。つらいときは、いつもこの言葉を繰り返してほしい。これがスタートだ。

■欲深いのではなく、欲がないからお金が貯まらない

次に、「私は1000万円貯めてやる」と紙に書いて、机の前などの目立つ場所に貼っておこう。

すぐ目に入る場所なら、トイレでもいいし、食卓の上でもいい。何カ所かに貼っておくと、なおいいだろう。あなたの欲望が強ければ、スマホの待ち受け画面やパソコンのスタート画面にもこの言葉を書くことだろう。誰かに見られてもかまわない。あなたの欲望を理解し、応援してくれる人が多ければ多いほど、目標に近づくはずだ。

冷やかす人がいても、かまわない。それも練習だと考えよう。富を築く道のりで、常に周囲から冷やかされるだろうからだ。こうした嘲笑や非難を投げつける人は、あなたの富が彼らの手の届かないほど大きくなれば自然と減っていくので、気にする必要はない。

以上のふたつの方法は、次に挙げる3つ目の方法に比べて簡単なように見えるが、じつはいちばん難しい。人の心を変えるほうが、行動するより大変だからだ。お金持ちになれない人の大半は、能力やチャンス、種銭がないからではなく、本当にお金持ちになろうという欲のない人だからだ。

■クレジットカードは「1000万円貯金」の大敵

3つ目の方法を実行するには、ある道具が必要だ。

ハサミを探してきて、クレジットカードを切り捨てよう。富を蓄えるための必要条件は、複利を味方につけることだ。片や、クレジットカードは複利の敵だ。敵に回した複利は、あなたの首を絞め、しばしば邪魔をするようになる。だから複利を自分の友にして、協力させるために、まずクレジットカードを切り捨てるのだ。複利を味方にすれば、お金を周りに集める準備ができたことになる。

これからは現金とデビットカードだけを使おう。小銭が増えると不便だし、デビットカードは銀行に残高がないと使えない。だが、心配は無用だ。少し我慢していれば、複利が助けてくれる。最初の1カ月か2カ月は、買いたい物も買えず、苦しいかもしれない。だが、苦しさに耐えて薬物中毒から抜け出すように、未来の所得ではなく現在の所得で生きる習慣を身につけるべきだ。

4つ目の方法は、銀行口座を複数作ることだ。

ひとつの口座に光熱費や生活費など全部入れておくのではなく、追加で3つか4つ口座を作り、そのうちひとつは純粋な生活費だけを引き出す口座とする。この口座には、家賃、通信費、交通費など必須の生活費だけを入れておく。そして他の口座には、外食費やコーヒー代など、余裕資金と決めた金額だけを入れておくのだ。その額は月初に決まった分だけ入れておき、月中で使い果たしても、他の口座から移したり借りたりしてはならない。

■なぜ面倒をかけてでも複数口座が必要なのか

貯蓄のための口座もひとつ作っておく。このように、自分の予算に合わせて用途別に口座を作る。もしこれが面倒なら、銀行からまとめて現金を下ろして、封筒に仕分けしてもいい。手間がかかっても、ぜひやるべきだ。その理由はこうだ。

国家や企業を経営するには、予算を編成しなければならない。年間の収支を予測し、どの分野にどれだけの予算を割り当てるか決める。バランスの取れた予算を編成してこそ、統治も経営もうまくいくからだ。

個人の経済活動も同様だ。基本的な生活費、貯蓄、レクリエーション、教育など、主要な項目に分けて予算を編成しよう。適当に使って残った分だけを貯蓄するというスタイルでは、国家も企業も長くはもたない。国家や企業は部門別に予算を使う権限があるので、他部門の予算に手をつけることはできないが、個人だと境界があいまいになるので、このように口座を別にして強制的に切り分けしておくわけだ。

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最後の5つ目は、目標額である1000万円の10分の1をまず貯めることだ。1000万円は大金のようだが、100万円は誰でも努力すれば作れる額だ。目標額は1000万円だが、1年かかろうが2年かかろうが、最初にがんばって10分の1を貯めてしまえば、面白くなって要領もわかってくるので、追加収入も入ってきて興味も湧いてくる。

2回目の100万円を貯めるのは、1回目よりも簡単だ。こうして貯める過程を経験しよう。これが1000万円への道のスタートであり、すべてである。

■「お金に清潔な人」ほど、お金の奴隷になる

講演でこの話をすると、若い人たちから決まってこんな質問を受ける。

「お金のことを強調しすぎではありませんか。お金の重要性はわかりますが、そこまでしてお金を貯めていたら、お金の奴隷になってしまいそうです」

私はお金の重要性とお金持ちになる方法を説明しているだけなのだが、貯蓄や投資、節約について触れると、気を悪くする人がいるのだ。だが、私はこの質問をした若者は偽善的だと思う。

キム・スンホ『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)

お金について話すことさえも軽蔑するようなら、お金持ちになる最初の扉は閉ざされてしまう。それに、お金の存在をないがしろにすること自体、すでにお金の奴隷になったようなものだ。お金のせいで病院にも行けず、勉強もできない。お金のせいで、結婚や子どもも諦めなくてはならない。さらには、親の面倒も見られず、老いても働き口を探し、金策に走り回らねばならない。

それこそ、お金の奴隷ではないか!

韓国の高齢者の半数近くが貧困層だ。高齢者の自殺率は世界第1位を占めており、自殺の3分の1が経済的理由によるものだ。若いときにお金をないがしろにしたせいだ。

節約と貯蓄と投資の大切さを強調するのは、幸福な生活を捨てて守銭奴(しゅせんど)になれという意味ではない。むしろ逆だ。財産を増やし、経済の仕組みを理解して、お金持ちを目指すことは、たいへん幸せな生き方だ。若いうちからこの幸福への道を歩めば、豊かさが訪れ、さらには他の幸福もついてくる。いますぐハサミを手に机に向かおう。

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キム・スンホ(きむ・すんほ)
スノーフォックスグループ会長
韓国人として初めて、アメリカでグローバル外食企業を成功させた実業家。創業したスノーフォックス社は、世界11カ国に3900の店舗と1万人の従業員を抱えるグローバル企業。年間売り上げ1兆ウォンの目標を達成、米ナスダック上場を控えている。最近5年間で3000人あまりの事業家を養成し、「社長を教える社長」として知られる。1100万回以上再生された動画「伝説のお金の授業」を書籍化した『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』は、2023年まで4年連続でベストセラーとなり、100万部に到達した。
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(スノーフォックスグループ会長 キム・スンホ)