クェーサーは極めて遠方にあり、絶対光度が明るく、かつては星のように点象としてしか捉えることができなかったため、日本では準星と呼ばれてきた。だが最近になり、その正体は活動銀河核の一種で、クェーサーのエネルギー供給源は銀河中心にある超大質量ブラックホールではないかとの考えが主流となってきた。
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この天体が注目されるゆえんは、非常に遠方でしか観測されず、最近の宇宙には存在しないためだ。つまりクェーサーの研究は、誕生直後の宇宙進化の謎に迫ることに直結するのだ。
北海道大学は2日、宇宙誕生から間もない129億光年の彼方にあるクェーサーJ2054-0005で、分子ガスの強烈な噴出を発見したと発表した。
北海道大学、筑波大学、早稲田大学の科学者らを中心とする国際研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、クェーサーJ2054-0005を観測し、今回の発見にこぎつけた。クェーサーが分子ガス放出をしている発見事例はこれまで2例しかなく、今回のような強烈な分子ガス放出事例は初めてのものだ。
この発見は、宇宙で数多く確認されている星の形成があまり活発でない巨大銀河の存在について、その謎解明につながるものだ。
J2054-0005では、星の材料となる分子(OH)ガスが強烈に噴出され、その速度は毎秒1,500kmにも及び、噴出量は1年で太陽質量の1500倍に相当する。この分子ガス噴出量は銀河で新たに形成される星の質量を超えると推定され、約1000万年でこの銀河では星を生成するための分子ガスが枯渇する計算になる。
宇宙に存在する多くの銀河は、かつて中心核を明るく輝かせる時期があり、それが現在の地球でクェーサーとして観測されている。だがそれらの銀河のうちのいくつかは、数多くの星を誕生させつつも、今回発見されたようなクェーサーでの強烈な分子ガス放出の時期を経て、やがて星を誕生させられなくなる時代を迎えたのだろう。
なお今回の研究成果は、2月1日公開のアストロフィジカルジャーナル誌に掲載されている。