(写真:Ushico/PIXTA)

12月に入り、いよいよクリスマス間近です。街のイルミネーションの美しさを求めてか、心なしかカップルの姿がいつも以上に目につくように思います。

「いや、まだまだ自分はいいや。だってイマドキは30歳くらいでみんな結婚するものでしょ?」という考えの読者も少なくないかもしれません。

しかし、平均という指標は実は非常に危険な指標である、ということを知らない方がいまだに多いような気がします。統計に詳しくない一般的な読者がイメージする平均は「真ん中」「一番多い」ではないでしょうか。

しかし、日本の「平均初婚年齢」は男女ともに「真ん中」年齢でも、「一番多い」年齢でもありません。

男性の初婚同士結婚のピークは27歳

厚生労働省から9月に公開された2022年の婚姻の統計を分析した結果を今回は初婚同士カップルの年齢に注目してご紹介したいと思います。

まずは男性からです。結婚支援にかかわる現場の皆さんからのお話を聞く限り、結婚年齢について誤解が激しいのは、女性よりも男性かもしれません。


「27歳男性の結婚が一番多いなんて信じられない!」と思う読者も多いかもしれませんが、最近の有名人の結婚でみると、今年きゃりーぱみゅぱみゅさんと結婚した俳優の葉山奨之さんは現在27歳です。

2022年の男性の平均初婚年齢が31歳ですので、平均年齢とピーク年齢が男性ではなんと4歳も乖離しています。ですので、「30歳過ぎたら婚活でもしようかな」と考えている男性は注意が必要です。2022年に初婚同士で成婚した男性の年齢分布は次のようになっているからです。


実は晩婚化、というのは「結婚適齢期が上昇した」という話ではなく、「かつてはなかったような(統計的外れ値の)高齢者の結婚が発生するようになり、平均値を吊り上げている」という解釈がより正しいといえます。最初の棒グラフでまったく表示されていない高齢者でも、各歳において数件〜2桁くらいはそういった結婚があることが平均を引き上げてしまいます。

実際は、29歳までの「若者」男性の結婚が56%を占めています(2021年より割合が上昇)。半数を超えているので、「初婚同士で結婚した男性の大半は」というのが実態です。また30代でみると、前半と後半では大きな割合差が出ています。前半男性が24%に対して、後半男性は12%ですので、成婚発生確率が半分になっています。また、40歳以上の初婚男性の結婚は合計で8%にすぎません。

統計的にみれば初婚男女の結婚で8割以上の男性が30代前半までに結婚をしている、という状況です。このような状況下で、30代後半以上の男性が「子どもが欲しいから20代の女性で」とオーダーすることがいかに「難題」であるかを端的に示したグラフともいえます。

女性の初婚同士結婚のピーク年齢は男性と同じ

「ということは女性なんて25歳とかが初婚ピーク年齢だったりして!」と思う読者もいそうなところですが、男女ともにピーク年齢は27歳で同じです。2021年までは女性はピークが26歳でしたが、男性と同年齢となりました。

近年、男性はピーク年齢の早婚化がおこっており(27歳の次に多かった年齢が28歳から26歳に変化)、女性はピーク年齢の晩婚化(26歳から27歳にピークが変化)しており、2022年にはついに男女とも、件数1位も2位も同年齢(27歳、26歳の順)になりました。


ただ、少し男女の違いがあるのは女性のほうが「短期間集中型」である、ということです。男性と同じく年齢分布を円グラフにしてみると次のような結果となります。


女性のほうが25歳から27歳に発生が集中しています。ですので、初婚同士結婚に占める29歳までの女性割合は65%と、男性の56%と大きく異なります。

ただし、30代でみると30代前半で男性24%に対し女性22%、30代後半で男性12%に対して女性9%と僅差となっていますので、30代以降における結婚の発生に有意といえるほどの男女差は初婚同士婚ではそこまでない、といえるでしょう。

心のゆとりが欲しいなら20代婚活

さまざまな分野でジェンダーレスが叫ばれる時代ですが、成婚年齢についてみてみると、統計的にみて男女の成婚年齢の差はほとんどないといっても支障がなく、まさにジェンダーレスな状態といえます。

よく「お金が、男だから、女だから、見た目が」などといいますが、男女ともに「年齢に勝る婚活有利な要因はない」という状態になっています。
データからは、「男女関係なく若い方が有利」であることは間違いありません。

そういう意味では心のゆとりが欲しいなら20代での婚活は賢明な選択であるといえます。

統計的にみれば、30代に入ったならば、相手の女性の年齢(の若さ)ばかり求めている男性は「20代男性との争い」であることをしっかりわきまえて覚悟して活動していただくことになります。同様に、相手の男性のハイスぺ度(年収や社会的地位)ばかりを求めている女性は「20代女性との争い」であることを覚悟することが必要です。

ただ、この女性側の覚悟についてばかりがなぜか強調され、男性側の覚悟は極めて甘く考えられている点が婚活市場のいびつなところである、とも現場からは指摘されています。

同年齢ゾーンでの婚活が基本

婚活をどのように行おうと個人の勝手ではありますが、希望する年齢差で活動の成功率は大きく異なります。統計的にみると夫婦の年齢差は以下のようになっています。


最も多いのは同年齢婚です。そして1歳差までの結婚が全体の半数を占め、3歳差までの結婚で7割を超えます。

つまり3歳差を超えるような結婚を望む方は、性別・年齢を問わず、統計的に見れば「発生が難しい」結婚を望んでいることになりますので、よほどの競争有利な条件を相手(ならびに仲介者に)に提示することが必要となる、という覚悟を持っていただきたいと思います。

ちなみに最初のほうで例示したきゃりーぱみゅぱみゅさんの例でお話しすると、彼女が1993年生まれ、お相手が1995年生まれとのことなので、女性が2歳上の初婚同士の結婚は初婚同士婚全体の5.0%となっています。

そうはいうものの、どちらかが2歳差までの結婚であれば全体の62%となっていますので、彼女のような著名な芸能人女性でも、無理難題となる年の差結婚をされていない(2歳年上妻を選んだお相手の男性の選択についても同様です)ということにもなります。

より多くの結婚希望のある男女が無理難題な年の差狙いの婚活による「婚活疲れによる撤退」なく、運命の人にたどり着くことを祈っています。

(天野 馨南子 : ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー)