トンネルでは急に車のスピードが落ちる?

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トンネルに入ったとき、急に車のスピードが落ちるような感覚を覚えたことはありませんか?

ドライバーがスピードを感じるときは、体感覚や平衡覚などからの情報も影響を与えていますが、特に周囲の風景がどれだけ速く通過していくか、という視覚情報がわかりやすいでしょう。

トンネルに入ると、視覚的には二つの大きな変化があります。1つは、視野の範囲が狭まることにより、周囲の景色が速く流れる感じが減少し、スピードを遅く感じるのです。

2つ目はトンネル内部の照明により、視野のコントラストが減少することにより、景色の通過速度が難しくなり、スピード感覚が鈍くなる可能性があります。

「突然視界が暗くなり、一瞬見えずらくなる」のはなぜ?

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また、トンネル内で突然視界が暗くなり、一瞬見えずらくなる経験をしたことがあるのではないでしょうか。

これは「ブラックホール現象」と呼ばれ、日常的な運転でも注意がすべき現象の一つです。

ブラックホール現象とは、自動車が明るい場所から暗い場所へ移動する際、一時的に運転者の視野が悪くなる現象のことを指します。特に、晴天の日中にトンネルに入るとき、この現象はよく発生するのです。

しかし、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。これには、人間の目の構造が大きく関係しています。

人間の目は光の強度に応じて瞳孔の大きさを調節し、視界を保つように作られています。明るい場所から暗いトンネルに入ると、瞳孔がすぐには広がらず、一時的に視界が暗くなることから、ブラックホール現象が起こるのです。

逆に、トンネル内から急に外に出るとまぶしく感じることもあり、これは「ホワイトホール現象」と呼ばれています。これは、暗いトンネル内から急に外に出ると瞳孔の調整が追いつかず、前が白っぽく見える現象です。

ブラックホール現象が危険な理由

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この現象は、特に交通量の多い道路や高速道路のトンネルで起きやすくなります。

ブラックホール現象によって視野が狭まってしまうと、前方の車や歩行者、障害物を見落とし、交通事故につながる可能性があります。特に、年齢とともに視力が衰える高齢者にとっては大きな問題となります。

これに加えて、トンネル内で渋滞している場合などは、電光掲示板などに「トンネル内渋滞注意」や「追突注意」なども記されています。

これもブラックホール現象同様に危険で、トンネル出口付近で渋滞している場合など、操作が追いつかずに追突事故に発展しかねないケースもあります。

ブラックホール現象への対策はある?

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それでは、実際にこれらの現象から身を守り、安全に走行するためにドライバーが心がけられるべきことはあるのでしょうか。

自動車教習所の教官は、ブラックホール現象の対策として、次のように話します。

「ブラックホール現象への対策として、まずは事前の予測が重要です。トンネルへの進入を予測して速度を落とし、周囲の状況を確認することが求められます。これは、トンネルを抜ける際のホワイトホール現象にも同じことが言えます。

また、トンネル内部は暗く感じられますが、運転者の視野が戻るまで無理に視界を広げようとせず、焦らず待つことも大切です。

晴天の日はサングラスを活用するのも一つの手ですが、トンネル内では逆に暗すぎる場合もあるので、状況に応じて外す工夫が必要です。

さらに、多くの新型車では自動的にヘッドライトが点灯する「オートライト」機能が搭載されています。これにより、暗闇のトンネル内でも前方を明るく照らすことが可能となり、安全性が向上します」

このように走行中、事前に危険を予測することが重要です。安全にドライブを楽しむためにも、これらの現象を理解し、注意して走行することが求められます。