「1円玉は御遠慮下さい」などと呼びかける立て札が賽銭箱の上にあったと、ツイッターに写真が投稿されて話題になっている。

その理由も記されており、立て札を置いた神社にとっては、切実な事情があったようだ。

銀行入金で1円以上の手数料が必要になり、お賽錢が無意味に」

「奉納」との字が彫られた木製の賽銭箱は、古い伝統の重みを感じさせる。

箱の上には、お賽銭について、「1円玉は御遠慮」と赤字で強調された立て札がひもで括りつけられていた。そして、その下には、次のような理由が明記されている。

「1 円玉は銀行入金で1円以上の手数料が必要になり、お賽錢が無意味になります」

賽銭箱の上にある立て札の写真は、2023年6月26日にツイッターに投稿された。すると様々な意見が寄せられ、2万8000件以上の「いいね」が付いた。

報道などによると、銀行では、19年ごろから大量の硬貨の両替が有料になり、22年1月には、ゆうちょ銀行も有料化に踏み切った。ゆうちょでは、例えば、硬貨1000枚なら1100円の手数料がかかり、1円玉ばかりでは赤字になる計算だ。

立て札にあった「1円以上の手数料」とは、このことを指すとみられる。

とはいえ、「賽銭は気持ち」だと考える参拝者はおり、写真投稿のリプライには、「お金を無意味とするのは違うのでは」「こういう掲示でマイナスなイメージがつく」との疑問も寄せられた。一方で、「賽錢が無意味」になるとする神社の訴えに理解を示す声は多く、「神社仏閣にも運営がある」「神社を守るためのお賽銭だと思えばいい」との指摘が出ていた。

今回の立て札を出しているのは、東京都北区内にある王子稲荷神社だった。

北区の観光サイトなどによると、神社は、江戸時代から庶民に親しまれてきた。落語「王子の狐」の舞台となったほか、狐のお面や装束を身につけた人々が参拝する大晦日の「狐の行列」で知られている。

「社殿の修繕などに使わせていただいたりするなど貴重なもの」

立て札について、王子稲荷神社の社務所は6月27日、J-CASTニュースの取材に対し、1年ほど前から賽銭箱の上に出していると答えた。

「ゆうちょ銀行でも手数料が余計にかかるようになり、1円玉をいただいたとしても、かえってマイナスになってしまいます。お賽銭については、社殿の修繕などに使わせていただいたりするなど貴重なものですので、マイナスになれば影響は大きいですね。参拝者の方にお気持ちがあったとしても、それが生かせないことになってしまいます」

立て札を出したことで、参拝者に協力してもらって、1円玉のお賽銭は減っているのではないかとした。

1円玉のお賽銭については、他の神社仏閣でも、運営に影響が出ていると報じられている。その対策として、王子稲荷神社のように遠慮するよう呼びかけるところのほか、小銭が必要な商店街と両替する試みもいくつかあるようだ。また、電子マネーのお賽銭にするなどキャッシュレス化を進めるところもあった。

こうした対策について、王子稲荷神社では、「商店街の氏神ではありませんので、タイアップなどのルール作りは難しいです。電子マネーなどについては、興味がありませんので、まったく考えていません」と事情を明かした。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)