【アメリカの最新ごはん事情vol.21】1989年に渡米し、「セレブ御用達プライベートシェフ」としてアメリカで料理を作り続けてきた明比玲子さんに、日本ではなかなか知ることができないアメリカの食事情を教えてもらいます。

アメリカで日夜開発されるブラウニーレシピ


アメリカのお菓子といえば、カップで計量して、ささっと混ぜてオーブンに入れて出来上がり!誰でも失敗なく簡単に仕上がるイメージはありませんか?ブラウニーは、そんなイメージを代表するお菓子の1つだと思います。


ブラウニーは、チョコレートチップクッキーと並ぶアメリカ人の大好物で、レシピの数も星の数ほどあります。しかし、子どもでも作れるお菓子である反面、自分好みのブラウニーに仕上げようと思うと、たかがブラウニー、されどブラウニーで、それほど簡単に思っているような仕上がりにはなりません。お菓子作りに慣れた人でも、いかにおいしい自分好みのブラウニーを作れるか、アマチュアからプロのパティシェまでが日夜レシピ開発に励んでいるのです。その証拠に、新しいブラウニーのレシピは、次々と出現します。


100年以上前に誕生したブラウニー


オリジナルのブラウニーは、1893年にシカゴにあるパーマー・ハウス・ホテル(現パーマー・ハウス・ヒルトン)で作られ、今でもオリジナルレシピのものが同ホテルで提供されています。しかし、上にくるみがのり、アプリコットグレーズがかかっているため、現代のブラウニーとは少し違う印象です。

その後、卵の量が変わる・チョコレートを入れない、等レシピが数々の変化を経て、1900年代初めには、私たちが慣れ親しんでいるブラウニーになったそうです。

簡単に作れるスイーツは奥が深かった


とは言え、現在のブラウニーも見た目は同じ物でも、それぞれに食感が違います。ブラウニーは大きく分けて、ねっとり濃厚(fudgy)、もっちり(chewy)、パウンドケーキのようなどっしりした食感(cakey)の3つに分けられます。その他、fudgy & chewy, cakey & chewyなんていうのもあります。簡単に作れるブラウニーは、ちょっとの違いで食感が全く変わる、とても奥が深いスイーツなのです。そして、私の経験では、大半の人がfudgy & chewyが好みなので、今回は、この食感のブラウニーレシピをご紹介したいと思います。

fudgy & chewyブラウニーのレシピ



[材料] (20x20cm型)


・無塩バター……115g

・無糖チョコレート(細かく刻んでおく)……120g

・グラニュー糖(白砂糖不可)……250g

・エスプレッソコーヒーパウダー……小さじ1

・中力粉……120g

・ココアパウダー(無糖)……10g

・バニラエッセンス……小さじ1

・卵 (室温)……2個

・塩……ひとつまみ


[作り方]


1. 型に薄くバターを塗り、クッキングシートを切って型に敷き、その上にも薄くバターを塗っておく。(バターは分量外)

2. オーブンを180℃に温める。

3. 中力粉、ココアパウダー、エスプレッソコーヒーパウダーを、一緒にふるっておく。

4. 鍋にバターを入れ、溶けたら火からおろして、刻んでおいたチョコレートを入れる。

5. 2分ほど待ってから、チョコレートが溶けるまで混ぜる。

6. (5)にグラニュー糖、塩、バニラエッセンスを混ぜ合わせる。

7. (6)に卵を1個入れて、よく混ざったら、もう1個も入れて混ぜる。

8. (7)に(3)の粉類を入れて混ぜ合わせる。粉が無くなるまで混ぜる必要がありますが、極力混ぜ過ぎないように注意してください。ここで混ぜ過ぎると、食感が全く変わってしまいます!かなりもったりした生地ですが、ご心配なく。

9. (8)を型に流し込み、スパチュラなどで表面を均等にして、(2)のオーブンで約30分焼く。表面を均等にする時も、いじりすぎないように。


10. 焼きはじめて20分間は絶対にオーブンを開けないこと。20分経ったら、爪楊枝で焼け具合をチェック。オーブンや使用する型によって、焼き時間は異なります。写真のように、型からブラウニーが少し離れたら焼けたサインです。


11. 焼き上がったらオーブンから出して、ケーキクーラーの上で、型に入れたまま完全に冷まします。

12. 完全に冷めたら型から出して、好みの大きさに切り分けます。


作るときのポイント


1. チョコレートは、製菓用を使いましょう。良質の物を使うと、必ず味に出ます。

2. エスプレッソパウダーはお好みですが、スプーン1杯分入るだけで、ぐっと味に深みが出ます。出来上がったブラウニーは、コーヒーの味はしません。

3. バターとチョコレートを溶かす鍋は、最終的に全てここに材料が入るので、少し大きめのものを選びましょう。

4. 砂糖の量は減らさないでください。ブラウニー特有の表面の照りが出なくなってしまいます。

5. ブラウニーは、混ぜ過ぎ、焼き過ぎが禁物です。爪楊枝をブラウニーの真ん中あたりに突き刺し、少し粘りのある生地がぼそぼそとついてくるぐらいが焼き上がりのベストです。何もついてこなかったら、焼き過ぎです。爪楊枝チェックで悩んだ際は、型からブラウニーが離れているかどうかチェックして、オーブンから出してください。予熱で仕上がります。

6. 型の色が濃いと早く焼けてしまいますので、要注意です。20分で焼け過ぎと思った場合、次回からは温度を160℃ぐらいに下げて焼いてみてください。


アメリカ人の大好きな食べ方は、バニラアイスクリームと一緒に食べることです。濃厚なブラウニーの味も、アイスで一気に緩和されます。ぜひお試しください!

明比玲子

兵庫県芦屋市生まれ。1989年に渡米し、ニューヨークのシェフ養成学校で学んだ後、本格的に料理に取り組む。著名レストランでパティシェとして経験を積み、アメリカ人と日本人に料理とお菓子の指導も行う。日本の料理雑誌への寄稿やフードスタイリングも行いつつ、2008年からは、コンサルティングの仕事なども兼ねながら、ニューヨークセレブのプライベートシェフとして、活躍中。

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