XFN-ASIAによると、中国人民銀行(中央銀行)は18日に金融機関の貸出基準金利と預金基準金利の再引き上げを発表、19日から実施したが、アナリストの多くは、銀行融資と投資過熱の抑制を狙いとした利上げはほぼ一巡しつつあると見ている。

  今回の基準金利の上げ幅はいずれも、1年物で0.27%ポイント。今年4月の同幅の利上げと今夏の銀行預金準備率の引き上げに続くものだ。これについて、ドイツ銀行のエコノミスト、馬駿氏は顧客向けリポートの中で、「(今回の)利上げで、もう一段の金融引き締めを求める圧力は弱まろう」との見方を示している。また、国家発展改革委員会の王暁光・研究員は、今年第4四半期に再利上げが行われ、それで、今年4月以来の金融引き締め局面が終わると見ている。

  中国経済は主として、固定資産投資の過熱により、第2四半期(4-6月)に過去10年来で最高の成長率を記録したが、7月には工業生産と固定資産投資に幾分、減速の兆しが見えてきた。このため、エコノミストの大勢は、今後は、これまで実施してきた金融引き締め政策と投資抑制などの行政指導の効果が浸透し、歯止めのかからなかった急速な経済成長に徐々にブレーキがかかるようになるとの見方になっている。

  7月の工業生産の伸び率は前年同月比16.7%増と6月の同19.5%増から減速した。一方、1-7月の都市部の固定資産投資の伸びも前年同期比30.5%増となり、1-6月の同31.3%増から減速に転じている。

  中国国際金融公司のエコノミスト、哈継銘氏は、「(今回の)1回の利上げが経済全体に大きな影響をもたらすことは考えにくいが、中央銀行のこのところの政策運営に注目する中で、金融政策を位置づける必要がある」と語る。哈氏や他のエコノミストは、今回の利上げで、預金は1年定期の金利が0.27%ポイント上がって、2.52%に、期間1年の貸出基準金利も0.27%ポイント上がって、6.12%になったものの、中国国内のインフレ率を考えると、金利の中立水準は、まだ引き上げられる必要があるとしている。しかし、これらのエコノミストは、金利を過度に引き上げると海外からの資本流入を招くリスクが高まり、人民元の為替レートの安定化に影響する懸念があることから、金融政策は自由度を失っていると指摘している。

  ただ、中国の経済紙「第一財経日報」は21日付の社説で、18日の再利上げ決定は、中国政府が、人民元の為替レートのより柔軟な運用に自信を深め、ある程度の人民元の対ドルレートの上昇を容認する姿勢であることを示していると分析している。【了】

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