激闘来たる!カタールW杯特集
敗れたコスタリカ戦、トップ下でプレーした鎌田大地のプレーは冴えなかった。
細かいミスがあっただけでなく、得点機もあった。後半43分には三笘薫の折り返しに合わせたが、ゴール前の混戦で押し込みきれなかった。
「まあ、僕個人もそうだし、チームとしてもやっぱりイージーなミスが多かった。僕はイージーなミスはしてはいけない選手なので、僕自身もよくなかったし」
そう言って鎌田は反省した。この夏からW杯に入るまでフランクフルトでフル稼働し、ブンデスリーガからチャンピオンズリーグまでハードなスケジュールをこなしてきた鎌田だが、この試合ほど目立ったミスの多かった試合はなかった。
鎌田大地がW杯で本領を発揮するのはいつ?
鎌田のような中盤から前線で攻撃を担い、技術力の高さがストロングポイントの選手は、たしかにいつでも計算の立つプレーが信頼の源になる。だからこそ、この日のミスは意外なほど多く見えたし、本人もそう認識している。
「ふだんだったらありえないことだと思うし、特に今シーズンに関しては......。なので、自分のプレーに対して納得はしてないですけど、でも切り替えるしかないので」
では、何がそのイージーミスを誘ったのか。
ドイツ戦から中3日だからといって、疲労というのは難しい。この日程にはフランクフルトで国内と欧州の大会を繰り返すことで慣れている。実際、10月は公式戦が9試合、11月は13日までの間に3試合こなしてきた。
また、今大会の移動による身体的な負担は、フランクフルトでのそれに比べればない等しい。気候も暑いとはいえ、昼夜の寒暖差があるため比較的涼しい時間帯も多く、理由にならない。
鎌田は要因をふたつに絞っている。
「あれだけコンパクトにアグレッシブに守られると、なかなか僕たちだけじゃなくてどこの国の代表も苦戦していて。やっぱりそれが国を背負って戦うということだと思うし、W杯はどの試合でも難しいものだなというのは感じます」
あいかわらずの淡々とした口調で、ひとつは「相手の守備」、もうひとつは「W杯の難しさ」が多くのミスを誘ったと話す。
相手が堅守速攻型のチームであることは、当然ながら事前から把握していた。
「彼らはやっぱりコンパクトだったし、不用意に縦パスを入れてカウンターされるのもチームとしては嫌だったので、うまく相手を動かして、という感じになりますね」
ただ、その意図はなかなか功を奏することはなかった。また鎌田を中心に、前線の上田綺世、右の堂安律、左の相馬勇紀との関係性もうまくいかなかった。
「(攻撃的な)連係というよりも、守備がハマっていなかったので、いい攻撃につなげることができなかった」
逆に相手のプレッシャーに苦しみ、リズムを掴むのに苦労した。
もうひとつ、「国を背負う」ことについてはどうか。
鎌田はフランクフルトでは、こうした背負うものの重さや精神的なプレッシャーについて言及することはほとんどない。代表はクラブでのプレーの延長線上にあるとし、「クラブで活躍してこその代表」と語るものの、特に代表への思い入れ、フランクフルトへの思い入れを口にすることもない。それよりは、鎌田個人のことについて「結果を出して価値を上げる」ことに重きを置いている節もある。
かといって、完全にドライかといえばそんなこともなく、「フランクフルトは今の僕を放出できるわけはない」と「今の僕は絶対的な存在」「僕が(PKを)外しても文句を言う人はいない」と超強気であり、同時にフランクフルトへの愛着を感じさせる言葉を口にすることもある。所属先や仲間に愛着はあるものの背負うものがある、ということは感じさせないのだ。
だからこそ、いわゆる代表、W杯の重みについて鎌田が言及するのは、意外に感じられる。
「うーん、正直、試合をしている時はそんなことは考えられないし、考えてもない。ただやっぱり試合が終わってみると、その1回のチャンスの重みは感じます」
そう話す鎌田は、いつもに比べて殊勝であるように感じられた。決して敗戦のせいだけということでもないだろう。
コスタリカ戦でもいつもどおりのプレーとはいかなかった鎌田を阻んでいるのは、意外にも「W杯ならではの重み」ということなのかもしれない。第3戦スペイン戦ではそれにも慣れ、いつもの鎌田大地を取り戻してくれることに期待したい。