――「スカー」は、イントロのギターがすごく格好いいです。フレーズは、やはりこだわったのですか?
キタニ:そこは初期衝動と言うか、手に染みついていると言うか。実は今回、フレーズの吟味はあまりしてなくて。逆に「Rapport」の時はめちゃめちゃ考えて、デモによって全くフレーズが違っていたんです。でも今回はギターのリフに限らず、ベースのラインもあまり推敲せず、思いついたらどんどん入れていくという、バンドの曲作りみたいな形でした。バンドって、みんなでスタジオに入って「せーの」で音を出すじゃないですか。それを家で、ひとりでやっていたみたいな。アドリブとか、突発的に適当に弾いたものでも、いいと思ったらすぐ採用する感じで、むしろこだわらない方向でがんばったという感じです。

――「Rapport」の時は違ったけど、今回はそういうやり方がいいと思った。
キタニ:そうですね。自分の中でも、初心を思い出せるような曲にしたかったからです。

――その初心と言うのは、『BLEACH』と最初に出会った小学生の時の気持ちとか?
キタニ:『BLEACH』がどストライクなのは、20代中盤の自分の世代だと思うんです。少年時代にアニメを観て、「こういう展開が来てうれしかった」とか、そういう気持ちをすごく意識しました。だから自分がその頃に好きだったものを、たくさん思い出しながら作りましたね。例えばその時代の、日本のロックシーンとか。

――アニメ『BLEACH』は、バンドがテーマソングを担当していたことが多く、日本のロックシーンとも親和性が高かったです。当時のテーマソングのことは意識しましたか?
キタニ:原画展の時は、「Rapport」を作る前に、ORANGE RANGEの「*〜アスタリスク〜」をすごく聴きました。当時、周りのみんなはアイドルとかが好きと言っていたんですけど、急にみんなが「格好いい」と言うようになったロックがあって、それが「*〜アスタリスク〜」だったんです。

――キタニさんが小学生だった時代、それまでロックを聴いていなかった人を振り向かせた曲が「*〜アスタリスク〜」で、それが『BLEACH』のテーマソングだったと。
キタニ:そこまで真剣に観ていたわけではないけど、やっぱりOP映像とか結構覚えているんですよね。当時『BLEACH』ってこういう感じだったなって。ただ今回に関しては、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「アフターダーク」をたくさん聴きました。そもそもアジカンが好きで、『BLEACH』のOPで流れた映像もアイコニックだったし。

■「あの日の少年キタニタツヤ」を喜ばせる曲にしたい!

――今「スカー」と一緒に流れている映像も、すごくスタイリッシュでびっくりしました。
キタニ:すごいですよね。モノクロにピンク一色ですから。「何それ? 新しい!」って思いました。格好よすぎます。

――タイトルの「スカー」は「傷跡」という意味ですが、それをタイトルにしたのは、どういう理由があってのことですか?
キタニ:傷という言葉自体は『BLEACH』に出てこないんですけど、怖かった経験がトラウマになっていたり、物理的に攻撃を受けて傷になっていたり、そういうものがどんどん自分の中に蓄積されていって、それが恐怖に繋がる。これから先、死ぬかもしれないのに生きていくのって、怖いじゃ無いですか。周りの仲間はどんどん死んでいくし。それが『BLEACH』の世界で。そうやって蓄積されたものの象徴が傷で、結局はそれと一緒に進んでいく。主人公も他のキャラクターもそうで、恐怖はあるけど、それに負けて逃げちゃおうじゃなくて、その人自身の人生と向き合っていく。そういうもののイメージの象徴として、傷という言葉がありました。それで、その言葉をタイトルに据えたいと思いました。