路線バスに大型EV
2014年4月、鹿児島県薩摩川内市が全国に先駆けて路線バスへ導入した大型EVバスがわずか5年で運行を終了しました。
一般的な路線バスの寿命は10~20年ほどと言われており、比べると5年はかなりの短命です。
非常用電源や地域イベントの展示品として保管されていたこの大型EVバスは故障が多発したことや、引退後も活用される機会がほとんどなく、その生涯を終えました。
原因は相次ぐ故障
大型EVバスの路線バス導入は北九州市とならび日本初で、今回処分されたバスは1回の充電での走行距離は最長で80km、デザイン面においても九州新幹線「つばめ」を担当した水戸岡鋭治さんが手掛けるなど電気バスの話題性と一貫したデザイン面でまちをPRできたという評価があげられています。
しかし、処分に至った原因は予定した稼働日のうち運行休日が約3割を占めるほどの故障の数々だったようです。
故障の内容はおおやけにされていませんが、予想されることとしてはEV車特有の繊細なバッテリー周りにおける温度上昇や逆に冷え切ってしまうことで起こるトラブル、劣化問題などではないでしょうか。
また、バッテリーだけでなく充電周りの突発的に起こるトラブルによってもすぐに対処することは難しく、稼働予定だったとしても急遽取りやめになってしまうこともあったのではないかと考えられます。
気になる維持費や処分費用は?
このバスは13万6,000kmを走り、2019年3月に路線バスから引退することになり、その後は市総合運動公園の駐車場にて非常用電源として保管されていました。
1回の充電で最長80kmを走行し車体価格は約8,700万円、うち市の負担分は国からの補助金などもあり2,000万円ほどですが、維持費や点検代、充電設備の電気代で年間約180万円を必要としました。
そして、通常の路線バスの処分に比べて本体だけでなく充電設備の撤去などもあり、費用は大きくなったようです。
すでに市は充電設備を9月上旬に撤去しており、経年劣化が進んだためとして処分費用134万円を計上したうえで6月末にバスを業者へ引き渡しています。
維持だけでもお金がかかってしまう充電設備をそのまま残すというのは費用やメンテナンスの面からも難しかったのかもしれません。
EV路線バス、世界での活躍ぶりと今後の発展は?
少しずつ日本各地でも大型EVバスの導入が見られるようになっていますが、今回5年で幕をとじたバスを運用した市では「二酸化炭素の削減効果や費用と勘案して判断しなければならない」と、明言を避ける慎重な発言となりました。
少し視野を広げてみると、地球上で運行されているEVバスは約17%程度で、これは世界で約42万5,000台が活躍している計算になります。
このうちの約99%もの割合でEVバスを走らせている中国では国家からの命令もあり世界で一番EVバスが普及しています。
しかし、米国などを見るとまだまだEVバスは試運転の段階のようで、世界的に見てEV路線バスの普及はまだ難しいことなのかもしれません。
普及が進まない背景には、EVバスではない本来の大型バスでは必要のない”EVバスのシステムごと”購入、維持をしなければならないことが問題にあげられるのではないでしょうか。
今ある面積にさらに充電設備を追加しなければならないということからも特に都市部では確保が難しい、また充電時間を考えると車両自体を予備を確保しておく必要があるなど、運行するうえで難しい問題があげられていることから、現実的に普及はまだ時間がかかるかもしれません。
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