増上寺でおこなわれた安倍元首相の葬儀(写真:つのだよしお/アフロ)

 9月27日に予定されている安倍晋三元首相の国葬は、まだまだ未定な部分が多いようだ。8月17日、時事通信が「国民の黙とう『検討中』 公営賭博中止『未定』―追悼呼び掛け、政府手探り・安倍氏国葬」という記事を配信。国葬まで1カ月半しかないにもかかわらず、葬儀の具体的な内容があまり詰められていない様子が明らかになった。

 記事によると、企業や学校などに対し、追悼のため弔旗掲揚や葬儀中の黙とうを要請するかどうかについて、「葬儀の在り方は現在検討しているところであり、現時点でお答えすることは困難」と記すにとどめ、国葬当日に競馬・競輪といった公営ギャンブルの中止を求めるかどうかについて「現時点では決定していない」と回答した。

 戦後に「国葬」がおこなわれたのは、1967年10月31日、東京・千代田区の日本武道館で執りおこなわれた吉田茂元首相のみだ。

『国葬の成立 明治国家と「功臣」の死』(勉誠出版)の著者で、国葬研究の第一人者である中央大学文学部の宮間純一教授は、本誌の取材にこう語っていた。

「1967年の吉田茂元首相の国葬の際には、弔旗を掲げること、黙とうを実施することが要請され、官公庁・公立学校はできるだけ半休することとなりました。

 また、官公庁は公の行事や儀式、その他歌舞音曲をともなう行事は差し控え、民間企業や一般国民にも自粛するように『お願い』が出されています。弔意の表明を『強制』することはできませんから、今回もなんらかの要請があっても『お願い』になると思います」

 1975年6月に日本武道館でおこなわれた佐藤栄作元首相の国民葬でも黙とうの要請があったという。

「佐藤氏の郷里・山口県の教育委員会が、(1)各学校は弔旗を掲げること、(2)教職員、生徒は黙とうすること、という通達を出しました。

 これを受けて、ある小学校では校長が全校朝会で、佐藤氏の業績と国民葬の意義を説明し、通達に従うことを決めたところ『個人の思想的自由を侵害する』と山口県教組から抗議を受けています。

 今回も政府は『弔意を示すことは任意だ』と言うでしょうが、受け止める側がそうだとは限りません。黙とうを強制した・しないで、身近な人間関係のなかでトラブルが起きる可能性があります」(同)

 黙とうを要請する可能性、また公営ギャンブルを中止する可能性が報じられると、ネット上では批判の声が巻き起こった。

《統一教会の件自体何も進展してないし、むしろ解決する気もないんだし 一番関わってた人に黙祷なんて出来ないわ》

《旧統一教会の件を自民党含む日本政府がちゃんと回答改善せん現状でなんで黙とうを日本国民全員が強要されなあかんの?》

《そもそも国葬自体、統一教会問題を徹底的に調べて潔白を証明してからじゃないと賛成できない》

《手探りで国葬やるくらいならしっかり練った上で来年でええと思う 黙祷の強制とかギャンブル停止とかおかしいやろ》

 政府は8月15日、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と閣僚ら政務三役の関係について「個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はない」とする答弁書を閣議決定した。いまのままで、黙とうをお願いされても、心から黙とうする気になれる人は少ないかもしれない。