「あおりハンドル」なぜ起きる?

 街中では多くのクルマが走行していますが、なかにはヒヤッとするような運転をするドライバーを見かけることがあります。

 そんななか、ある教習所が公式SNSに「危険な運転」に関する動画を投稿し、多くの反響が寄せられています。一体どういった運転なのでしょうか。

あなたは「あおりハンドル」大丈夫? なぜ起きるの? 提供:烏山自動車学校

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 栃木県那須烏山市にある烏山自動車学校(@KarasuyamaDS)では2022年6月、「右折と思わせる左折に気をつけろ」というコメントともに1本の動画を投稿しました。

 そこには1台のクルマが教習所内の交差点を左折する様子が映っていますが、左折する前に一度右に膨らんでから曲がっていることが分かります。

 これについて、「怖いねぇ」「いますよねえ」「こういうわけのわからん左折が増えてる」といった反応がユーザーから寄せられています。

 今回投稿したきっかけについて、烏山自動車学校の担当者は以下のように話します。

「このような左折をするクルマが昔から存在し、普段運転している方が、自身の左折を振り返っていただく機会になればと投稿しました」

 この運転は、一部では「あおりハンドル」とも呼ばれている危険な運転方法のひとつです。

 こうした運転をしてしまう要因や危険性について、前出の担当者は以下のように話します。

「膨らむ運転は大きく分けて『運転者自身の癖や車両感覚の不良でおこなっている場合』と、『運転者が格好良いと思い意図して右に膨らんでいる場合』の2パターンがあります。

 どちらの場合も、対向車や後続車に誤解を与えるだけでなく、隣の車線を通行するクルマに接触する危険性や通行を妨げるおそれがあるなど、他車を巻き込む可能性が高い非常に危険な左折になります」

 ユーザーのなかには、「対向車にこれやられて正面衝突しそうになった」という声も。一度右にハンドルを切ることで周囲のクルマは右に進むと認識しますが、その後に左折することで周りが混乱し、最悪の場合、衝突してしまう可能性も考えられます。

 さらに、この膨らむ運転は、クルマの「内輪差」も事故の呼び水になることに挙げられます。

 クルマは、交差点やカーブなどを曲がる際、前輪と後輪が別々の円弧を描きます。後輪の方が内側を通るため、曲がる方向に幅を寄せすぎると縁石にぶつけたり、歩道に乗り上げてしまう可能性があり、最悪の場合、歩行者の巻き込み事故などに発展する可能性もあります。

 車幅の大きい車両などの場合は、特に内輪差が大きくなるため、普段から大型車を運転する人は「内輪差」を考えて曲がっています。

「あおりハンドル」は、このような内輪差を意識して、幅を寄せすぎないよう膨らんだ運転をしてしまうのも要因のひとつと考えられます。

 では、右左折の際に膨らまない運転をするにはどういったポイントに気をつけると良いのでしょうか。

 今回は投稿された動画をもとに左折する際のポイントについて聞いたところ、前出の担当者は以下のように話します。

「あらかじめできるだけ左に寄せ、徐行で左折することが大切です。これにより、一般的な交差点であれば、普通車は右に膨らむことなく左折できます。

 そのためには、左折前に早めに減速をして、自身のクルマの走行位置を確かめることができる余裕を持つことが大切になります。

 その結果、膨らまない左折だけでなく安全確認をおこなう余裕が生まれます」

 普通車の場合、前出の担当者が説明するように徐行して曲がることで膨らまずとも曲がれます。

 こうした運転はもしかすると、無意識に癖でしているという人もいるかもしれません。

 そのため、自身の運転を振り返り、交差点やカーブを走る際は意識して運転するのが良いといえます。

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 投稿後の反響について、前出の担当者は以下のように話します。

「いただいたリプライの中には、『この左折をよく見かける』『膨らむと危険と感じる』『実際に怖い思いをした』など、多くの方がこのような左折を気にされていることを実感しました。

 改めて、教習でも危険な左折の例を知っていただき、正しい左折を身につけていただくための指導を徹底する良いきっかけになりました」