ブランド復活の先駆けとなる高級EV

デロリアン・モーター・カンパニーから、新型アルファ5のプロトタイプが発表された。映画への出演で有名な1981年のデロリアンDMC12とは大きく異なる、現代的なEVクーペである。

【画像】1980年代にタイムトラベル?新型デロリアン・アルファ5【DMC12と写真で比較】 全28枚

デロリアンは1982年に倒産したが、1995年にブランドと社名の権利を取得したスティーブン・ウィンが同名の会社を設立し、修理用部品などを販売してきた。現在はテスラなどのEVメーカーで経験を積んだヨースト・デ・フリースが権利を取得し、CEOに就任している。


デロリアン・アルファ5のプロトタイプ    デロリアン・モーター・カンパニー

オリジナルのDMC12は、ウェッジシェイプなシルエットとコンパクトなボディが特徴だったが、新型アルファ5は、これと一線を画すスポーツカー風のプロポーションを持ったEVクーペとなっている。今年8月に一般公開され、2024年に生産が開始される予定だ。

デフリースCEOはAUTOCARに対し、「メルセデスAMG GTやポルシェ・タイカンに匹敵する性能を持つが、EVよりも内燃機関を使う人たちに向けたもの」と語っている。

0-97km/h加速は約3.4秒、最高速度は240km/hに達し、航続距離は米国のEPAサイクルで480km以上になると見込みだという。デフリースCEOは、プラットフォームやパワートレインの詳細については口を閉ざし、次のように述べるにとどめた。

クルマの製造は外部に委託し、イタリアで行います。パワートレインに関しては、英国にパートナー企業がいます」

スタイリングはイタリアのデザイン会社が担当

当初は88台の限定生産モデルが販売される予定だ。この数字は、DMC12が出演した1985年のSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、タイムトラベルに必要なスピードである時速88マイル(約140km/h)に由来する。

公道走行はできず、サーキットでの使用にのみ適する。その後、少数ではあるが、公道走行可能なモデルが販売される予定となっている。


デロリアン・アルファ5のプロトタイプ    デロリアン・モーター・カンパニー

アルファ5の技術的な詳細はまだ明らかにされていないが、デザイン面ではオリジナルのDMC12から影響を受けている。

前後のスリムなラップアラウンド型ライトバーは、デロリアンブランドの伝統を象徴するものだ。リアウィンドウ上のルーバー、タービン風のホイールデザイン、ガルウィングドアは、オリジナルから受け継いだ特徴的な部分である。

アルファ5のスタイリングは、DMC12を手がけたジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタリアのデザイン会社、イタルデザインが担当している。

V8スポーツから大型SUVまで ラインナップ拡大

現在、デロリアンは、クーペだけでなくさまざまなモデルに手を広げようとしている。次はV8エンジンを搭載したスポーツクーペ、その次はEVセダン、そして最後に、水素パワートレインを搭載した高級スポーツSUVを計画している。

デフリースCEOは、「規模を拡大するにはSUVが必要」と述べている。SUVを販売する前に、ブランドの象徴となるモデルを複数展開する考えだ。


デロリアン・アルファ5のプロトタイプ    デロリアン・モーター・カンパニー

このSUVについては、8月のアルファ5の一般公開後に情報が共有されるという。主に米国市場をターゲットとし、BMW X7やキャデラック・エスカレードなどのフルサイズ高級SUVと競合するサイズになるという。デロリアンは、「バッテリーが最終的なゴールだとは確信していない」ため、SUVの動力源に水素を選んだとしている。

これが水素による燃料電池なのか、それとも水素燃焼エンジンなのかはまだわからないが、デフリースCEOは化石燃料からの脱却に関して「ローマへの道は1つではない」と述べ、多様なパワートレインを展開する姿勢を示した。

デロリアンは8月に行われるIPO(株式公開)とともに、事業拡大に向けた新たな資金調達を開始する見込みだ。

「当社は株式公開企業になります。そうでなければなりません。自動車製造は安いものではありませんし、それを実現するためには多額の資金が必要なのです」