24時間体制で25台を撮影したという。私は「えっ?」と感じる。昔、ネズミ捕りの警察官がつくる記録を私はいくつも見た。「きちんと記録をつくっている。否認したのは本件被告人だけだ」と主張するため検察官が法廷へ出したものを、被告人や弁護人を通じて見せてもらったのだ。その取り締まり件数は、1回2~3時間でだいたい20件前後だった。

当時と違って近年は速度違反が減っている。昔ほどは取り締まれないだろう。だが、それにしても、24時間で25台、1時間あたり約1台って、いっくらなんでも少なすぎる。しかも行ったのは「撮影」でしかない。何件に呼び出し状を送付し、うち何件が違反切符の作成にまで至るのか。

4、まとめ

これまでの警察庁の動きや各地の入札状況、さまざまなデータ等々を見ると、TKKの可搬式は、なんというか速度取り締まりには向かないようだ。ゆえに今回も、24時間で25台という恥ずかしいことになったのだろう。

でも、そんな恥ずかしい数字を秩父署はなぜ発表したのか。埼玉県警本部はなぜ発表させたのか。隠せばいいのに。私が思うに、現場警察官たちはTKKの可搬式のダメぶりにほとほと嫌気がさしており、しかし警察庁が天下り利権の関係でTKKをゴリ押しするもんだから逆らえず、恥ずかしい数字を出すことでSOSを発した、そういうことじゃないのかなあ。全国の警察官たちが「だよねえ、うんうん」とうなづいている、なーんて深読みはどうでしょね。

だけども、速度違反常習者たちの多くは私のような深読みはせず、「移動式は国道でも取り締まるぞ。マジで神出鬼没だ。ヤバイ!」とだけ受け止めるのだろう。どう受け止めてもいいが、速度を出し過ぎると危険の発見が遅れ、回避が遅れ、事故ったときの被害が甚大となる。失われずにすんだはずの命が失われる。命は助かっても、重い後遺障害が残ったりする。本当にヤバイのはそこですぞ。ご注意を!

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。