単独走行でのトリを飾るのはバイクレースの最高峰MotoGPで、LCRホンダ・イデミツに所属し活躍中の中上貴晶だ。2020年は自身初のポールポジション獲得をはじめ10戦連続トップ10フィニッシュなど好成績を挙げ、日本人ライダーのトップに君臨する。その走りを日本で、しかも都心で観られるというのはなんとも幸運なことだ。

4輪のレースカーよりもさらに一般公道での操縦性がデリケートな2輪マシン。今回中上が操るのはMotoGPで走行しているRC213Vを一般公道で走行可能にするための仕様変更が施された、まさに「公道を走れるMotoGPマシン」であるRC213V-S。わずかな仕様変更に留まり”ほぼMotoGPマシン”といえるRC213V-Sを手足のように操り、異次元のライディングを見せる中上の走りに集まった4000の観衆は大きな拍手で応える。

続いては噴水前広場エリアで「Red Bull MUGEN TEAM Goh」のピットクルーがスーパーフォーミュラマシンのタイヤ交換をレースさながらに披露。

SUPER GTマシンとMotoGPマシン、そしてスーパーフォーミュラマシンとMotoGPマシンが同時に走るという夢の競演も実現した。

インターバルには、今年のF1を戦ったレッドブルドライバーたちがサプライズゲストとして画面越しに登場。スクーデリア・アルファタウリ・ホンダからはピエール・ガスリー選手、角田裕毅選手が、レッドブル・レーシング・ホンダからは冒頭の通り2021年F1世界選手権ドライバーズチャンピオンに輝いたマックス・フェルスタペン選手とセルジオ・ペレス選手、チーム代表のクリスチャン・ホーナー氏から日本のファンに暖かいコメントが寄せられた。

そして轟音空間はグランドフィナーレへ。なんと先ほど2台で同時走行したSUPER GTマシンとMotoGPマシンにスーパーフォーミュラマシンが加わっての3台同時走行という大迫力のデモランが繰り広げられ、イベントの盛り上がりは最高潮に。普段のレースでは決して見られない数々のシーンを目の当たりにした観客はレースマシンが去ったあと、ついさっき見た光景は夢か現かという表情で路面に残ったブラックマークに目を落とし余韻に浸っていた。

前回に続いて二度目の公道デモランイベントだったが笹原をはじめ選手が異口同音に語っていたのは、こういったイベントで少しでもモータースポーツの速さ・迫力・面白さを知ってもらい、サーキットへ足を運んでもらいたいということ。ファンが増えればモータースポーツも文化として日本にしっかり定着し、より明るい未来が拓けるのではないか。そんな機会を実現した今回のレッドブルは、まさに日本のモータースポーツに「翼を授ける」存在のひとつではないだろうか。

文・写真:矢野晋作 Words and Photography: Shinsaku YANO