5年間で約2300件の車両火災、その理由は?
国土交通省「自動車の不具合による事故・火災情報」によると、2016年から2020年の5年間で自動車(乗用車、軽乗用車)の不具合による車両火災は約2300件(自動車メーカーなどが原因を調査した火災の件数)発生しています。
車両火災の原因として圧倒的に多いのが社外品のヘッドライトやフォグランプの「バルブ」(電球)の配線や取り付け不良だといいます。
では、どのような状況で車両火災が発生することが多いのでしょうか。
国土交通省のデータでは、車両火災の状況やその後の調査結果が公表されています。
車両火災の原因としては、外部要素やエンジン関連の不具合なども挙げられていますが、どの車種でも割合が高いのが社外品パーツに交換したことを要因とするものです。
具体的に社外品パーツが要因とされる例を挙げてみましょう。(自動車メーカーなどの調査に時間がかかるため、最新の情報が2020年12月となっています)
●トヨタ「プリウス」型式:DAA-ZVW41W 2ZR-5JM(2012年8月)※初度登録 以下同
・状況:駐車してから約5分後、エンジンルームから出火した。
・調査結果:焼損が著しい社外品HIDヘッドライトキットが確認されたことから、社外品HIDヘッドライトの不具合によるものと推定する。
●ホンダ「N-BOX」型式:JF1 S07A(2014年1月)
状況:一般道路を走行中、助手席側のボンネットとカウルトップの間から白煙が発生したため、路肩に停車したところ、白煙が出ていた場所から出火した。
調査結果:左ヘッドライトの社外品HIDバルブが何らかの要因により異常加熱したか、もしくは取付け部から脱落して周辺の樹脂部が発熱及び発火したものと推定する。
●日産「ノート」型式:E12 HR12DDR(2013年1月)
状況:走行中、前方を照らす光が暗くなり焦げ臭さを感じた後、左側前方から発煙し停車後に出火した。
調査結果:社外品のHIDバルブが何らかの原因で走行中に外れ、周りの可燃物(ブーツ類)に接触して出火・延焼したと推定する。
※ ※ ※
このように社外品パーツの取り付けや配線に問題があったことが原因として推定されている火災が多く見受けられます。
このような状況は、いつ頃から確認されていたのでしょうか。
調べてみると2011年6月に国交省自動車局から出された「自動車の不具合による事故・火災情報における車両火災に関する調査実施報告書」において「後付け電装品の不適切な取付けによる火災」としての実験結果が掲載されていました。
すでに10年以上前から社外品パーツの取り付け不良による火災が問題視されていたことが分かります。
この実験によると取り付けが不適切な場合、HIDバルブの表面が約540度から640度と高温になり発煙や火災を起こす危険性があることも指摘されています。
また、後付け電装品のハーネス配索が不適切であることも原因のひとつとしてあるようです。
ショートした火災の再現実験では、HIDフォグランプをヒューズなしでバッテリーターミナルに直接結線すると配線が車体のエッジや他の電装品のケースなどに接触・ショートした際、10秒も経たないうちにハーネスが過熱して火災発生に至ることが再現実験で確認出来ています。
トヨタでは2010年5月から取り扱い説明書で注意喚起
このように、車両火災を引き起こす原因として社外品パーツの取り付け不良が指摘されていることが分かりましたが、自動車メーカーでも取扱説明書を通じて注意喚起をおこなってきました。
プリウスの取説の記述を確認してみたところ、初めて「発火」への注意喚起がだされていたのは2010年5月からです。
説明書では、「電球を交換するとき:電球や電球を固定するための部品はしっかり取り付けてください。取り付けが不十分な場合発熱や発火、もしくはヘッドライト内部への浸水による故障や、レンズ内に曇りが発生することがあります」と記載さています。
また注意事項として、「お車の故障や火災を防ぐために、電球が正しい位置にしっかりと取り付けられていることを確認してください」とも記されていました。
交換について、トヨタ広報は次のように説明しています。
「お客さまがかならず手にする取り扱い説明書の電球交換のページに、『電球はご自身で交換できます。電球交換の難易度は電球によって異なります。部品が破損するおそれがあるので、トヨタ販売店で交換することをおすすめします』と書いてあります。
お客さまが交換できる電球は、フロント方向指示灯、非常点滅灯、リア方向指示灯、非常点滅灯、後退灯だけです。
直接の注意喚起ではございませんが、トヨタ販売店での交換をお願いしております」
自動車メーカーだけではなく、自治体が警告を発しているケースもあります。千葉県船橋市役所消防局予防課は「車両バルブ取扱不注意による火災を防ぎましょう!」というタイトルで注意喚起をおこなっています。(2021年5月11日更新)
車両火災について、船橋市役所消防局予防課は次のように話しています。
「原因を調査したところ車両本体やバルブそのものに不備があったわけではなく、社外品バルブの取り付け方が悪く、使用中に脱落したことが火災につながったと考えられています。
バルブの製造会社には製品の説明書などに注意喚起の一文を入れてくださるようお願いしました」
また、取り付け不備のほかに、そもそも後付けパーツによってはソケットのサイズや各部のサイズが純正品と異なる場合があります。
サイズなどが合わないにも関わらず無理に取り付けると、ソケットが割れたりバルブが外れたりして、リフレクタやヘッドランプの周囲のハーネスや樹脂部品などに接触して発煙・発火する危険性があります。
火災のほかにも、近年は社外品LEDが安価で入手できることから、ヘッドライトバルブをLEDに交換したり、電飾カスタムとして装着したりするクルマも増えています。
眩しすぎるライトは他車にとっては危険な場合も多々あります。取り付け不備でトラブルを引き起こさないことはもちろん、ほかの交通への迷惑を考えたカスタムをおこなうことが大切だといえます。
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