「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月30日〜9月12日/ハードコート)では、1881年に大会が始まって以来、男女シングルスのベスト8にアメリカ人選手が一人も残らないという、141年間の歴史で初の事態が起きた。米ニュースサイト Washington Postなど複数のメディアが報じている。

男子シングルスでは4回戦に第22シードのライリー・オペルカ、世界ランキング50位のフランシス・ティアフォー、そしてワイルドカード(主催者推薦枠)で出場した世界99位のジェンソン・ブルックスビーが残っていたものの、いずれも準々決勝へ進出することはできなかった。


一方の女子シングルスでは、元世界女王のセレナ・ウイリアムズや世界6位のソフィア・ケニンが不在の中、世界43位のシェルビー・ロジャーズが3回戦で第1シードのアシュリー・バーティ(オーストラリア)相手に大金星を挙げて唯一勝ち上がるも、4回戦で世界150位の新星エマ・ラドゥカヌ(イギリス)にストレート負けを喫している。


「全米オープン」を主催するアメリカテニス協会(USTA)のゼネラルマネジャーであるマーティン・ブラックマン氏は、この事態に対して「非常に残念だ」とコメント。「アメリカのテニスの基準は決して落ちていないが、課題は山積みだ。テニスの世界はこれまで以上にグローバルなものになっている」と述べた。4回戦で世界46位のロイド・ハリス(南アフリカ)に敗れたオペルカも、「ピート・サンプラスとアンドレ・アガシがいた時のような、アメリカがトップを独占する時代は二度と来ないと思う。どの国にだってそれは難しい」と話す。


アメリカの男子選手で最後にグランドスラムタイトルを獲得したのは、2003年の「全米オープン」で優勝したアンディ・ロディックだが、ブラックマン氏は「特に男子では、ここ15年から20年で最高の状態にある」と前向きな見解も示す。現在ATPランキングのトップ100に入っているアメリカ人は14人と、1996年以来の多さであり、今大会の男子シングルス2回戦に進出した13人は、1994年大会の15人に次いで最も多いなど、彼の発言を裏打ちするようなデータも存在する。


また、結果こそ及ばなかったものの、今大会に出場したアメリカ人選手たちは手応えを感じているようだ。


20歳のブルックスビーは4回戦で第1シードの世界王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れたが、第1セットを6-1で奪っている。「ポジティブなものをたくさん得ることができた。自分のゲームを知ることができたし、自信がついたよ」と大会を振り返る。ブルックスビーは「ATP500 ワシントンDC」でベスト4、「ATP250 ニューポート」では準優勝を果たし、今年初めは310位だったランキングを7ヶ月でキャリアハイの99位にまで上げる成長ぶりを見せている。


先月の「ATP1000 トロント」で初めてマスターズ大会の決勝を経験した24歳のオペルカは、ハリスとの4回戦で「サーブが最悪だった」と反省するも、自分のパフォーマンスが悪い時の対処法を見つけたという。次回のランキング更新では初のトップ20入りを果たし、世界22位のジョン・イズナーを抜いてアメリカ人選手のトップに立つ見込みだ。オペルカはブルックスビーや世界45位の21歳、セバスチャン・コルダの名を挙げ、アメリカ勢の今後の躍進に期待していると語る。


予選から準々決勝まで勝ち上がった世界117位のボティック・ファン デ ザンツフープ(オランダ)のようにブレイクスルーを果たした選手がいる一方で、23歳のティアフォーにとって今大会は復活の場となった。2019年の「全豪オープン」でベスト8に進出した後で29位を記録したランキングは現在50位まで下がっているものの、3回戦で第5シードのアンドレイ・ルブレフ(ロシア)を退けた。「(今大会は)僕に再起のチャンスを与えてくれた。続けて優秀な選手を倒すことができたよ。この調子で、浮き沈みの少ない、安定したテニスをしていきたい」とコメントを残している。


今年の「全米オープン」で得たものを糧に成長した彼らが、来年はニューヨークでさらに活躍してくれることを期待したい。


(テニスデイリー編集部)


※写真は「全米オープン」でアメリカ勢最後の生き残りだったがジョコビッチに敗れたブルックスビー
(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)