新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、症状としては呼吸器系のものが代表的ですが、後遺症としては心臓へのダメージや脳の損傷などまで報告されています。そんな中、COVID-19を発症した人の爪に残るさまざまな痕をイースト・アングリア大学で循環器系の講師を務めるバシリオス・バシリウ氏がまとめています。

The red half‐moon nail sign: a novel manifestation of coronavirus infection

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7323324/

COVID‐19 and nail manifestation: be on the lookout for the red half‐moon nail sign - Méndez‐Flores - 2020 - International Journal of Dermatology - Wiley Online Library

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ijd.15167

COVID nails: these changes to your fingernails may show you've had coronavirus

https://theconversation.com/covid-nails-these-changes-to-your-fingernails-may-show-youve-had-coronavirus-160562

複数人のCOVID-19患者で、COVID-19の発症から約2週間後に「爪の根元の白色の部分に、赤い半月状の線が浮かび上がる症状」が確認されました。バシリウ氏は「この症状は、COVID-19による血管の損傷や免疫反応が原因の可能性があります」と指摘しています。



この症状は1〜4週間で消えるため、特に治療の必要はないとのこと。バシリウ氏は「このような赤い半月状の線が爪に浮かび上がることは稀(まれ)です。そのため、この症状は新型コロナウイルスの感染と関わっていると考えられます」と主張しています。

COVID-19患者の中には、全ての指の爪にくぼみが現れる「ボー線条」と呼ばれる症状を発症した人もいます。バシリウ氏は、「ボー線条は、感染症・栄養失調・薬の副作用といった体へのストレスによって、爪の成長が一時的に中断した場合に発生します。これらのストレスはCOVID-19によって引き起こされていると考えられます」と述べ、COVID-19とボー線条の関係性を指摘しています。





他にも、COVID-19患者からは、以下のような爪の症状が確認されています。この患者は、COVID-19の発症後に手足の爪の付け根部分が緩みだし、発症から約3カ月に爪が完全に抜け落ちてしまいました。バシリウ氏によるとこの症状はオニコプトーシスと呼ばれるもので、ボー線条と同様に、体がストレスを受けた時に発症するとのこと。



さらに新型コロナウイルス陽性が確認されてから112日後に、爪の先端が黄色く変色したという報告や……



新型コロナウイルス陽性が確認されてから45日後に爪に白い筋が現れる「ミーズ線」と呼ばれる症状が出たという報告も上がっています。



バシリウ氏によると、これらの3件の症状は患者数が少ないためCOVID-19との関連性は不明とのこと。また、「赤い半月状の線」やボー線条とCOVID-19との関連性も明確ではないとのことで、さらなる症例の収集が必要だと述べています。

また、バシリウ氏は「これらの症状がCOVID-19と関係しているとしても、これらの症状がCOVID-19を発症した全ての患者に現れるわけではないことを覚えておくことが重要です。また、これらの症状が現れたからといって、新型コロナウイルスに感染しているとは限りません」と述べ、爪の症状とCOVID-19を短絡的に結び付けるべきではないと主張しています。