教習が「二段階制」になったことで教習時間が伸びた

 3月4月は、高校を卒業した若者たちが、自動車教習所に通い出す時期でもある。さてどこの教習所に通おうかと調べてみると、教習所の入校から卒業までの費用を見てちょっとビックリ! 今の普通自動車の教習費用の相場は、ざっと30万円になっているではないか。

 これから通おうと思っている若者だって「高いな〜」と思っているだろうが、その親御さんたちにとっても、「自分たちのころは20万円前後だったのでは……」と、費用高騰に驚いているはず。

 ではなぜ、いまの教習料金はこんなに高くなってしまったのか?

 一番大きな理由は、技能教習時限数が増えたからだ。

 今の18歳前後の子供のお父さんお母さんが教習所に通っていたころ、具体的には1990年代前半までの最短技能教習時限数は、27時間だった。

 内訳は、

 第一段階 … 4時限

 第二段階 … 4時限

 第三段階 … 9時限

 第四段階 … 10時限 (路上走行)

 このころは、第一段階から第三段階まで、計17時間が、教習所の専用コースでの教習だったので、「箱庭教習」などといわれていた。

 ところが、1998年 に法改正があり、

 第一段階は所内教習 (基本操作及び基本走行)

 第二段階は路上教習 (応用走行)

 の「二段階制」に制度が変わり、マニュアル課程で34時限 (オートマ課程は31時限)が必須となった。

 と同時に、普通自動車の教習は34時限中、半分以上の19時限は路上教習になっている。

 しかも、昔はなかった自主経路走行、駐停車教習(実際の道路での駐停車練習)、高速教習(実際に高速道路を走る)、観察学習(実際の道路での指導員の運転を見学)、危険予測とディスカッション教習(教習生同士で互いの運転について討論)などのプログラムも加わっているのだ。

 また、学科教習も26時限もあって、AED(自動体外式除細動器)の使い方などを学ぶ、応急救護処置教習を実習込みで3時間も実施。シミュレータやパワーポイントなどの新しい機材も導入されていて、そうしたコストも教習費用にプラスされることに……。

 もちろん、1990年代とは物価も違うし、教習所の教官や職員の給料だって上がっているはず。そう考えると、教習料金が高くなっているのも納得(?)できるはず。

 ただ、それでも自動車学校の経営は楽ではなく、少子化などの影響もあり、平成4年には全国で1,535箇所(卒業生数 2,550,485人)もあった指定教習所の数は、平成30年になると1,321箇所(卒業者数 1,529,334人)にまで減っている。

 しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響で、学生たちはオンライン授業、社会人もリモートワークが進み、日中の空き時間を使って、新たに運転免許を取りに教習所へ通う人が一気に増加。例年混雑する春先だけではなく、通年で予約が取りづらい状況が続いているとのこと。

 費用が高くて、予約が取りづらいなんて踏んだり蹴ったりという気もするが、その代わり少子化やSNSの影響もあり、横柄な教官(正式には「教習指導員」)は激減し、感じのいい教官や女性の教官も増えているようだ。

 費用は上昇、サービスは向上。コスパはイーブンかやや良好といったところだろうか。