メルカリの日本事業を統括する田面木氏は「高額転売への意見はさまざま」と述べた(写真は2月5日にオンラインで行ったインタビューのキャプチャー)

国内最大のフリマアプリ・メルカリ。個人間の売買を劇的に手軽にしたプラットフォームは、人気商品の高額転売で利益を得る「転売ヤー」にとっても使い勝手のいい場になっている。売りたい人、買いたい人をつなぐ存在としての「健全性」をどう考えるか。メルカリで日本事業のCEOを務める田面木宏尚氏に聞いた。

――2020年に有識者会議を立ち上げて「マーケットプレイスの基本原則」を定めた背景は。

メルカリは設立8年の会社。フリマアプリ自体も歴史が浅く、個人間の売買が身近になったのはまだ最近のことだ。そんな中で去年、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の状況になり、マスクや消毒液の買い占め・転売問題が起きた。

考えてみれば東日本大震災のときにも物資の買い占めは起こったが、売る手段としてフリマアプリはまだなく、転売が大問題に発展することもなかった。今回噴出した新しい現象・課題をどうとらえていくべきか。それを問われたことが有識者会議立ち上げの背景にある。

メルカリは「循環型社会を創ること」を創業の理念としている。要らなくなったものを必要とする誰かに届け、それを世界レベルで実現すればより経済が回っていく。この思いは一貫しているが、その過程で対処すべき課題を外部の識者と今一度議論してみたいと思った。

高額転売には「多様な視点」がある

――「高額転売」についてはどんな意見が出ましたか?

フリマには売る側と買う側、どちらにも多様な視点があるだろうというのは総意だった。いわゆる「高額転売」についてもさまざまなケースがある。手元にモノが余っているから売るという人もいれば、(ある商品を)買い占めて利ザヤを取ろうとする人もいる。それを買っている側にも意見もあるだろう。それだけのお金を投じても、欲しい、買う価値があると。

市場原理の観点から、価格の高騰することそれ自体が問題であるという意見は、有識者からも出なかった。ただメルカリとしては、ここに何らかアクションをしたい。そう意見したことで出た方策が「アラート機能」だった。

なぜ高額でも買ってしまうのか。その要因の1つとして、情報が不足していることが挙げられた。「今買わないと」と焦る。そこに対処してはどうだろうという話になった。1次流通の皆さんと連携して、事前の注意喚起や販売スケジュールなどの情報を(メルカリのサービス画面上で)出していければ、今慌てて買わなくてもいいと思えるかもしれない。

――出品そのものへの規制は?

重要なのは1次流通であるメーカーの意見だと思う。

僕自身、たくさんの1次流通の方と直接話をしてきたけど、高額転売への意見はさまざま。2次流通の価格高騰を問題視するケースもあれば、小売店で買い占めが起きることを問題視するケースや、(転売にはさほど関心がなく)偽物の流通などに頭を悩ませるケースもある。販売元の思いの多様性を尊重する意味でも、一律の規制が本当に有効なのかは考えなければならない。

まずわれわれとしては、販売元の皆さんからたくさん意見を聞きたい。そのうえで対応について今後も検討していく。ひとまず今回出した「アラート機能」は、いろいろなケースに横断的に活用できる。

販売元の意向によってメッセージの内容を変えることもできるだろう。(新たに機能として加える)アラートが購入を思いとどまらせてメルカリの流通額を下押しする可能性はあるが、それでも踏み込んでやる。

――特定の商品を欲している消費者としては、アラートを見ても「高いのは重々承知」と思うだけのような気もします。それでもアラートを出す意味はあるでしょうか。

そのあたりは実際に出してみないとわからない。メルカリの中で買い手の行動がどう変わるのかを見たい。

あとは、あらゆる販売元と連携してケースをどんどん作っていきたい。商品ジャンルごとに違った傾向が出るかもしれないので、まずは知見をためる。