「Xperia 1 II」の発表時に、開発が表明されてから11か月。プロ用をうたう「Xperia PRO」が、ついに日本と米国で発売されます。日本ではSIMフリーモデルとして展開される予定です。販売は、ソニーのインターネット直販サイト「ソニーストア」に加え、銀座、札幌、名古屋、大阪、福岡天神にある実店舗、さらには一部家電量販店でも行われます。発売日は2月10日です。

ミリ波に対応し、映像制作のプロをターゲットにしたXperia PRO。日本では2月10日に発売する

あらかじめ申し上げておくと、このモデルは映像制作などを行うプロ向けもの。業務用と言うと、備品のように感じられてしまうかもしれませんが、一般のユーザーが気軽に使うたぐいのスマホではありません。

そのため、市場推定価格も税抜きで22万8000円(税込み25万800円)と非常に高価。折りたためてしまえそうな価格ですが、形状的には「Xperia 1 II」に近いストレート型のスマホです。

▲ターゲットは、通信社/フリーランスのカメラマンや映像制作のプロフェッショナル。YouTuberやVloggerなども含まれる

プロを名乗るゆえんの1つは、ミリ波に対応した初のXperiaであること。「Xperia 1 II」などの5Gに対応したXperiaは、いずれも6GHz以下の周波数帯を使うSub-6は利用できたものの、28GHz帯前後のミリ波には非対応でした。

日本のエリアを見ると、現時点ではミリ波のカバー率はかなり限定的で、Sub-6ですらなかなかつかみません。そのため、コンシューマー向けモデルではSub-6のみが正解でしたが、映像のプロは、スタジアムなど、ミリ波におあつらえ向きの場所で利用することが考えられます。こうした点を考慮し、「Xperia PRO」ではミリ波をサポートしたというわけです。

単にミリ波に対応しただけでなく、その電波感度も最大限向上させるよう、工夫を施しています。それが、独自に設計したアンテナ。筐体の上下左右に、360度全方位をカバーできるアンテナを装備して、減衰しやすいミリ波をしっかりキャッチします。

確かに、ミリ波は人の手で覆うだけでも、簡単に受信感度が落ちてしまうほどシビアな電波。端末の持ち方によっても感度が変わってしまうため、全方位で受信できる設定は合理的です。「失敗が許されないプロの現場においても、通信の信頼性を担保する」というのがソニーモバイルの考え。こうした点は、コンシューマーモデルとの大きな違いと言えるかもしれません。

▲ミリ波に対応し、360度どこからでも電波を受信できるよう、アンテナも独自に設計した

そんなミリ波の電波を可視化する、「Network Visualizer」というアプリも内蔵されています。これは、その名の通りミリ波をビジュアル化して画面に表示するためのアプリ。どの方向のアンテナを使っているかが一目で分かるのと同時に、スループットも表示されます。きちんとミリ波をつかんでいることが分かった上で使えるため、安心感があります。

▲5Gの電波受信状況を可視化するNetwork Visualizerを内蔵。Xperia 1/5 II向けのSub-6版もほしい……

ディスプレイは6.5インチの有機ELで、「Xperia 1 II」と同じ。BT2020に対応した21:9の4Kシネマワイドディスプレイである点も共通項です。

一方で「Xperia PRO」は、個体ごとに色温度を個別調整してから出荷されています。端末ごとのバラつきが抑えられているため、プロ用のモニターとして安心して利用できるというわけです。

こうしたチューニングは、1台1台に施すため、手間やコストがかかりますが、プロ用をうたう上で必須の工程。それがゆえに、冒頭で挙げたような価格になっているとも言えます。

▲ディスプレイは1台1台、個別にチューニングして色温度を合わせているという

スマホとして映像を表示できるのはもちろんのこと、HDMI端子による入力に対応しているのも「Xperia PRO」の大きな特徴。HDMIケーブルでデジタルカメラやカムコーダーと接続することで、「Xperia PRO」を外部モニターとして利用できるようになります。

ちなみに、ソニーモバイルによると、HDMI入力対応のスマホは世界初。入力された映像は、単に表示するだけでなく、即時ライブストリーミングも行えます。この点は、通信機能を持つスマホならではで、単機能の外部ディスプレイとの違いです。

▲HDMIケーブルでデジカメと接続し、外部モニターとして利用することが可能

外部ディスプレイとして接続した「Xperia PRO」は、画面に撮った写真を表示するだけでなく、操作することも可能。スマホのように、ピンチイン・ピンチアウトでズームイン・アウトしたり、グリッドラインを表示したりといったことができます。

さらに、ソニー製の「α7S III」など、一部のデジカメは「Xperia PRO」のUSBテザリングに対応しているため、モニターとして使うだけでなく、デジカメに通信機能を持たせるルーターのような役割も果たします。こうした機器と組み合わせて使うことが前提になっているのが、ノーマルなXperiaとの決定的な差になります。

▲ピンチイン・アウトなどの操作もできる

▲USBテザリングで、デジカメ側から直接FTPサーバーにファイルをアップロードするような用途も想定

もちろん、単体でも十分活用できるスペックで、ベースは「Xperia 1 II」と同じ。背面には35mm判換算で16mm、24mm、70mmのトリプルカメラを搭載しており、AFに活用するiToFセンサーも継承されています。

プロとは言え、常にデジカメを持ち歩いているとは限りません。プライベートで出かけているときに、決定的瞬間に出くわしたら、単体でサッと撮影できるのは魅力的。画質に関しては、「Xperia 1 II」や「Xperia 5 II」で折り紙付きのため、安心して使うことができます。「Photography PRO」なら、UIもαとの親和性が高く、プロには扱いやすそうです。

▲背面に搭載されたカメラのスペックは、Xperia 1 IIと同等

ただし、「Xperia 1 II」とは異なり、おサイフケータイには非対応。NFCには対応しているものの、モバイルSuicaやiD、QUICPayといったサービスは利用できません。また、ワイヤレスチャージも省かれています。逆に、ストレージはキャリア版から増量された「Xperia 1 II」よりさらに多い512GB。こんなところにも、プロ向けの香りがただよっています。

▲SIMフリー版Xperia 1 IIとの比較。ミリ波以外では、ストレージが増強されている一方で、FeliCaやワイヤレスチャージには非対応になる

約25万円ということで、一般ユーザーがなかなか手を出しづらいのも事実ですが、そんなところも含めて、プロ用に振り切った端末に仕上がっているようです。