2020年12月3日に先陣を切って発表されたドコモの新料金プラン「ahamo(アハモ)」。写真中央は井伊基之社長(筆者撮影)

KDDIが1月13日に新プランを発表し、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社の20GBプランが出揃った。ドコモはahamo、KDDIはpovo(ポヴォ)で、それぞれメインブランドの料金プラン、ソフトバンクはSoftBank on LINE(正式名称は未定)で、ソフトバンクやワイモバイルと並ぶもう1つのブランドという位置づけだが、いずれもデータ容量が20GBで、オンライン専用プランという点は同じだ。料金はドコモのahamoとソフトバンクのSoftBank on LINEが2980円、auのpovoが2480円だ。

国際的に見ても、先進国では最安水準の料金プランで、使用するデータ量が多い人にはうってつけと言える。ブランド間の移行手数料も撤廃されるため、通常の料金プランのような感覚で気軽に移ることができるのもメリットと言えるだろう。普段使っているデータ容量にもよるが、料金が安くなるユーザーも多いはずだ。

ただ、ahamoやpovoやSoftBank on LINEは、単なる料金プランだと思ったら大間違い。オンラインに特化しているうえに、割引などもないため、ユーザー側も、考え方を変えなければならない。いずれも3月にスタートするため、そもそもiPhoneで利用できるかなど、まだ詳細はわかっていない部分もあるが、現時点で判明している新料金プランの注意点をまとめた。

サポートも「オンラインのみ」なので要注意

ahamoやSoftBank on LINEは月額2980円、auのpovoは2480円と、3社のオンライン専用料金は、今までの携帯電話料金と比べるとその安さが際立っている。オンラインでの契約に限定することで、代理店手数料などの間接コストを省き、ギリギリまで値下げした結果と見ていいだろう。大手通信事業者の料金プランとしては格安だが、格安スマホと呼ばれる仮想移動体通信事業者(MVNO)と比べても、料金はリーズナブルだ。


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いずれもデータ容量は20GB。ahamoとSoftBank on LINEには5分間の通話定額がつく。povoは通話定額を「トッピング」という名のオプションで選択できるようにしており、そのぶん、料金を500円安く設定している。

オンライン専用とうたうとおり、申し込みなどで店舗を利用することはできない。自身のPCやスマホを使って、アプリやサイトから申し込む形になる。特に番号ポータビリティで他社から移るときや、新規で回線を申し込む場合には、SIMカードが郵送になる点には注意が必要だ。

auのpovoやソフトバンクのSoftBank on LINEでは、オンラインでダウンロード可能なeSIMが用意されている一方で、ドコモのahamoは現時点でeSIMへの対応を明言していない。iPhone XS以降のiPhoneはeSIMに対応しているが、ahamoを選ぶときや、古いiPhoneを使っている人は、SIMカードの到着を待つ必要がある。

また、サポートは原則してアプリやサイトを通して行われる。設定などがわからなかったときにショップに駆け込むことができない。チャットや電話などで解決できるトラブルはいいが、端末が故障したり、SIMカードを紛失してしまったときなど、物理的なモノが関わるときには少々面倒になりそうだ。代替となる端末や回線を、すぐに自分で調達できるようなスキルが求められる。確かに料金は安いが、トラブルが起こった際の想定はしておいたほうがいいだろう。

「家族」の料金が高くなる可能性がある

ドコモはahamoを、auはpovoを“料金プラン”と銘打っているが、実態を見ると別の通信事業者に近い。ソフトバンクはSoftBank on LINEをソフトバンクやワイモバイルと並ぶブランドと位置づけているが、これが正しい見方と言えるだろう。提供されるサービスには違いがあり、たとえば、「docomo.ne.jp」や「au.com」などのいわゆるキャリアメールは利用できなくなる。

見落としがちなのが、家族割引だ。ドコモ、KDDI、ソフトバンクとも、既存の料金プランでは、家族で契約することで500円から2000円程度の割引を受けることが可能だ。ただし、これはあくまで通常の料金プランで契約した場合。povo、SoftBank on LINEはこれとは別建てになってしまうため、家族割引の対象から外れてしまうことになる。自分の料金プランが安くなる一方で、妻や子どもの料金が上がってしまうというわけだ。

たとえば、家族3人全員がauで、夫婦のどちらかが大容量プランを、もう一方と子どもが小容量から中容量の段階制プランで3GB程度使っていたとする。この場合、3月からの新料金プラン「使い放題MAX」で大容量プラン側は6580円になるが、家族割引で料金は5580円まで下がる。同時に、段階制プランの「ピタットプラン」を契約している残り2名も、各4480円の料金から、1000円割引(3人の場合、2人の場合は500円割引)になるため、料金は3480円、2回線で6960円になる。3回線合計した料金は1万2540円だ。

この中で大容量プランのユーザーがpovoに切り替えると、料金は5580円から2480円へと3100円下がる一方で、残り2人の料金が500円ずつ高くなってしまうため、トータルでは2100円しか安くならない。安くなるぶんにはいいが、それぞれの財布から支払いをしているときにはもめごとにもなる。家族割引のグループから抜けることは、家族であらかじめ相談しておいたほうがいいだろう。

ちなみに、このようなケースでは、家族全員がpovoにすると、料金は7440円で済むうえに、ピタットプランだった2人の使える容量が4GBから20GBへと増えることになる。ソフトバンクのSoftBank on LINEも、これはおおむね同じ。例外はahamoで、発表当初は家族の回線としてカウントしないと語られていたが、条件が見直された。ドコモの井伊基之社長によると、既存の料金プランからahamoのユーザーにかけた電話も、無料になるという。家族割引が適用されないpovoやSoftBank on LINEで、従来のプランのままの家族から通話しようとすると、定額オプションに加入しているならその分数まで無料、そうでなければ30秒20円の通話料がかかる。ドコモユーザーは安心だが、その他2社の場合は家族のことも考えながらプラン変更やブランド変更をする必要がありそうだ。

Apple Watchセルラー機能に非対応?

ドコモのahamoは端末を販売すると明言されている一方で、auのpovoやソフトバンクのSoftBank on LINEは、当初、SIMカードのみで展開される。ahamoのラインナップが判明していないため、明言はできないが、ミドルレンジモデルが多くなるとのことで、最新のiPhoneは取り扱わない可能性がある。povoやSoftBank on LINEはSIMカードのみになるため、端末は別途購入しなければならない。アップルの販売するSIMフリー版を購入すれば済む話だが、通信事業者の用意する補償サービスなどには加入できない可能性がある。

コロナ禍で海外渡航の機会はほぼなくなってしまったが、国際ローミングの内容にも違いがある。ドコモのahamoは、国際ローミングが無料になる一方で、利用できる国や地域が通常の料金プランより少なくなる。KDDIには、1日490円から利用できるauの「世界データ定額」があるが、これがpovoで適用されるかどうかの情報が明かされていない。ソフトバンクのSoftBank on LINEも、現時点で国際ローミングに関しての公式なアナウンスがない状態だ。


Apple Watchのセルラーサービスがどうなるのか不透明。オンライン専用プランでは提供されない可能性もある(筆者撮影)

さらに、現時点ではApple Watchの回線や「ビジュアルボイスメール」など、iPhoneに関するサービスがどうなるのかも不透明だ。同じKDDIでも、auではApple Watchが単体で通信できるようになる「ナンバーシェア」や、留守番電話の音声がファイルとして送られてくる「ビジュアルボイスメール」をすべて契約できる一方で、UQ mobileではナンバーシェアが利用できない。ソフトバンクも同様に、ワイモバイルではApple Watch用の「Apple Watch モバイル通信サービス」が非対応だ。

Apple Watchのセルラー機能やビジュアルボイスメールは、生活に密着したサービスなだけに、簡単に手放すことができない。オンライン専用の新料金プランがスタートする3月が近づくにつれ、こうした詳細が徐々に明らかになっていく可能性がある。見逃しがちだが、データ容量や金額だけでなく、どのようなサービスが対応しているのかもしっかりチェックしておくようにしたい。