セダンからハッチバックへ大胆なイメチェンを果たしたモデルも!

「いつかはクラウン」、トヨタ乗用車のフラッグシップであり、日本のセダン市場のシンボルともいえるクラウンが、次期モデルではSUVスタイルになるというウワサが流れています。その真偽のほどは別として、はたしてクラウンをSUVに変身させるという商品企画に勝算はあるのでしょうか。

 たしかに、過去にクラウンは2ドアハードトップやステーションワゴンといったボディバリエーションを持っていたこともありますが、4ドアセダンが基本でした。そんなクラウンがSUVスタイルに変身しても成功するはずがないという声も聞こえてきます。

 それでは、過去に大胆なまでにコンセプトやボディスタイルのイメージチェンジをして、成功したモデルというのはあるのでしょうか? いくつかの視点から4つの例を考察してみましょう。

1)トヨタRAV4

 最初に取り上げるのはトヨタRAV4。デビューから一貫してクロスオーバーSUVであることは変わらないように思えますが、キムタクのCMでスマッシュヒットを果たした初代モデルは3ドアだけの設定だったのです。いまでは全幅1800mmを超える大きなボディに成長していますが、当初はコンパクトなシティクロカンといったコンセプトでした。その初代モデルの途中でロングボディの5ドアを設定、北米でヒットするとしだいに巨体に成長していきました。

 また、現行モデルではグレードによっては走破性を重視した駆動系を与えられるなどSUVらしい走破能力も高めています。初代がライトクロカンというジャンルを生み出し、都市型SUVの元祖的キャラクターだったことを忘れてしまうほど、現在のRAV4はマッチョに変身しているのです。そうして世界的に成功したことはご存知の通り。ドラスティックな変化というよりはSUVとしての進化ともいえますが、シティ派からオフロード指向に方向性を変えたことはイメージチェンジの成功例といえそうです。

2)スバル・インプレッサ

 とはいえ、RAV4はボディ形状としては変わっておらず、これではドラスティックなイメージチェンジとはいえないのも事実。そこで、次なる例として紹介したいのがスバル・インプレッサです。初代から2代目までのインプレッサは4ドアセダンを中心に、全長が短めのステーションワゴンというラインアップでした。

 しかし3代目ではWRCで勝てるクルマにするために、また世界的なトレンドにのっとって、ハッチバックを軸に据えたラインアップに変身したのです。現在でもハッチバックのスポーツ、セダンのG4という2つのボディを用意していますが、ハッチバックが中心にあることは変わりありません。3代目のフルモデルチェンジ時に、セダンからハッチバックへと大きく変身したときには、それまでのユーザーから反発もありましたが、結果的に市場はそうした変化を受け入れました。

 むしろ、このセグメントにおいてセダンを軸に展開していたら、けっしていい結果にならなかったであろうことは、セダン中心に生まれ変わったホンダ・シビックの、日本での現状(セダンボディがディスコン)を見れば一目瞭然。ハッチバックを軸にしたことは正解だったといえます。

 さらにハッチバックボディをベースにSUVスタイルの「SUBARU XV」を展開、それが大いに販売を伸ばしたことを考えれば、大きな流れとしては、セダンからSUVへコンセプトを変えて、成功した例といえるでしょう。その意味でいえば、同じくスバルのフラッグシップとしてセダンボディとして誕生したレガシィが、現在はレガシィ・アウトバックというSUVだけに集約されたのも、似たような例といえるのかもしれません。

流行りのSUVや軽からイメチェンして成功したモデルも存在!

3)スズキ・スイフト

 ただし、必ずしもSUVにすれば売れるというわけではありません。2020年、国内市場においてシェア第二位まで成長したスズキの主力モデルである「スイフト」は、初代モデルが日本デビューをしたときには、どちらかといえばSUVよりのハッチバックでした。軽自動車「Kei」のワイド版といったコンセプトで、ちょっと車高を上げたスタイル、フェンダーアーチを樹脂で処理したところなどは、完全にクロスオーバーSUVといえるものだったのです。

 しかし、フルモデルチェンジによりオーソドックスなハッチバックへ変身したことで、スイフトというクルマのイメージは大きく変わります。初代スイフトは軽くて安い登録車という印象が強かったのですが、2代目以降のスイフトは、本質的な走りを重視したハッチバックモデルとしてキャラクターを変えていきました。イメージチェンジは成功したのです。

4)スズキ・ソリオ

 スズキといえば、2020年には年間で4万342台も販売され、同社のヒットモデルとなっている「ソリオ」のイメージチェンジも忘れることはできません。こちらもスイフト同様にルーツをたどるとワゴンR+と呼ばれる軽自動車のワイド版からはじまった名前でした。すなわち最初は後席ヒンジドアで、ルーフレースが備わるなど全高が高めのシルエットこそ共通していますが、今とはまるで異なる商品企画のモデルだったのです。

 はっきりいって当時は、ワゴンRのおまけ程度の認識で売上自体も今ほどではありませんでした。それが2代目へのフルモデルチェンジを機に後席スライドドアとして、いわゆる元祖プチミニバンとして認識されるようになってからは一変しました。スズキの主力モデルとなったのです。まさに商品コンセプトの変更がうまくいった好例です。

 あえて名前はあげませんが、過去には商品コンセプトを大きく変えて失敗したモデルも数多くあります。そう考えると、大胆なイメージチェンジというのは賭けに近い部分もありますが、2020年のクラウンの販売台数は2万2173台で、前年比61.4%となっています。現行クラウンのデビューは2018年6月、2020年11月にインパネを一新するほどのマイナーチェンジを実施するなど鮮度が高いことを考えると、この数字は商品コンセプト的な厳しさを感じるのも事実。ウワサされているクーペSUVスタイルへの大変身で成功するという保証はありませんが、このままの商品コンセプトではジリ貧といえそうなのも、また事実といえるのではないでしょうか。