2020年1〜11月の飲食店の倒産件数は計736件に上り、年間で最多だった2019年の732件を既に越え、年間ベースで最多記録を更新したことが帝国データバンクの調べで明らかになった。新型コロナウイルスの感染問題が大きな原因だ。

年末に向け、倒産件数はさらに増えている可能性があり、「初めて800件台に乗るかもしれない」(同社)との見方も強まっている。

居酒屋目立つが...和洋問わずピンチ

倒産の内訳を見ると、11業態のうち、「すし店」など6業態で既に前年の年間倒産件数を上回っている。件数では「居酒屋」が最も多く、179件(前年は161件)だった。「日本料理店」の倒産件数も75件(同51件)と20件超も増加。「居酒屋」「日本料理店」ともに倒産件数は過去最多だ。また、フレンチレストランなどの「西洋料理店」も94件で、過去2番目の多さとなり、業態にかかわらず幅広く厳しい状況となっている。

都市部にある飲食店の多くは、コロナ禍に伴う在宅勤務の広がりなどで客が激減しているうえ、感染予防から「密」になるのを避けるため来店客数を制限しており、売り上げを伸ばせない状況が続いている。特に居酒屋は、かき入れ時である夜間から深夜にかけての営業時間を短縮するよう求められたり、大人数が集まる宴会需要が見込めなかったりして、痛手が大きいといえる。

そもそも飲食店はここ数年、人手不足やそれに伴う人件費の急騰などから苦境が続いていた。コロナ禍はこうした状況に追い打ちをかけており、体力のない中小・零細店などを直撃している形だ。

秋以降は多少「息をつけていた」が

ある飲食業関係者は「コロナ禍で持続化給付金を支給されても、家賃や人件費であっという間に消えてしまい、手元に何も残っていないケースがほとんどではないか」と指摘する。政府の需要喚起策「Go To イート」によって、「秋以降は多少、息をつけていた」という店もあるが、最近の感染拡大「第3波」を受け、食事券の発行を一時停止する都道府県も出ている。年末年始は飲食店の繁忙期でもあるが、都道府県によっては営業時間の短縮をさらに強く求める動きも出ており、先行きが見えない状況だ。

「希望がない中では、資金力のない事業主はもちろん、元々後継者がいないような小さな店の多くが、事業継続をあきらめ、年末を区切りとして店をたたもうとしている」(同)といい、倒産のいっそうの増加が懸念されている。