12月19日の「サワコの朝」のゲストは、僧侶の塩沼亮潤さん。1日48km、高低差1300m以上の険しい山道を往復16時間かけて歩くこと年間120日。9年の歳月をかけて計1000日間歩み続ける日本一過酷な修行『大峯千日回峰行』を31歳の時に満行しました。これは1300年の歴史の中で未だ2人しか成し遂げた者がいない荒行ですが、塩沼さんはさらに、生きて終える確率50%と言われる『四無行』をも達成。極限ともいえる修行の様子をサワコに語りました。
「人間のするものじゃないなと思いました」想像を絶する過酷な修行
塩沼さんが成し遂げた『千日回峰行』は、どんなことがあっても途中で辞めることができない修行だといいます。途中で"もう、駄目だ"という状況に陥った場合は、自分で命を絶って示さなければならないそうで「大体30cmほどの短刀を持って、それを腰に携えて山に入っていきます。怪我にあったり、病気になったりした場合でも絶対に辞めることができないという厳しい掟があります」と、修行について解説しました。そんな塩沼さんがこの修行に挑んだのは23歳の時。「とんでもないことをなさったっていう気がするんですが...」とサワコが問うと「50歳を超えてから初めてそう思いましたね」と言うから驚き!「山に登った時に昔ならば崖でもひょいひょい登って行けたのに、息切れをしたりですね。これは、人間のするものじゃないなって思いました。やっと気付きました」と、笑って話しサワコを驚かせました。
その修行中には"死"を覚悟したこともあったと言い「行に入って3か月目位になると通称"血尿"という真っ茶色、焦げ茶色の尿が出てしまう位、体力は落ちていきます」と壮絶さを物語るエピソードを披露した塩沼さん。続けて、当時記した日誌を読み上げると、自身の涙で文字が滲んだ箇所を指し「この涙は苦しくて、辛くて泣いて溢れた涙ではない」と言うと「自分で自分の体に謝っていたんですよね。"お前に本当に負担をかけてごめんね"と。辛いこと、苦しいことは常に背中合わせなんですけれども。生きるか死ぬかその生と死の隣り合わせでも感謝の気持ちしかなかった」と"涙の意味"を語りました。人間の想像を遥かに超える荒行に挑み、成し遂げた人にしかわかり得ないこの世界観に圧倒されたサワコは、「凡人には中々理解できません!」と目を丸くして言いました。
『千日回峰行』の満行の翌年に挑んだ死臭さえも漂う荒行
実家がお寺というわけではない塩沼さんが『千日回峰行』を知ったのは、小学5年生のとき。「母と祖母が"千日回峰行"という修行番組を見ていたんですね。その番組を見た時に、これやりたいって思ったんです」と、小学生にしてその存在を知り"行"への憧れを抱いたと話しました。その後、中学2年生の時に両親が離婚。家計が苦しくなり、周囲に助けてもらう機会が増えた塩沼さんは「ご恩返しをしないといけない」という思いが芽生えたそう。やがて、その思いは"世の中の役に立ちたい"という気持ちへと変化。19歳の時に思いを実らせ"出家の日"を迎えました。この日は、珍しく母親が食器を洗ってくれていたそうですが、洗い終わると何故か全ての食器をゴミ箱に捨ててしまったそう...。「もう帰ってくる所はないと。しっかりと自分の道を歩んでいきなさいという親の覚悟でしょうね」とその意図を解説すると「だから、自分も前に進むか進まないかという選択肢はなかった。いわゆる帰る家もないとなると、やはり頑張れるんですよね」と、忘れることのない"始まりの日"を振り返りました。
23歳の時に『千日回峰行』に入り、足掛け9年、とんでもない偉業を果たした塩沼さん。さらにその翌年には『四無行』という新たな荒行を満行し"大阿闍梨"と呼ばれる高い位の称号を得ました。"飲まず、食わず、寝ず、横にならず"に9日間耐えるというこの行は、死の確率50%と言われることから「浄斎の儀」という名の通称"生き葬式"を行ってから始まるそうで、「周りで助けてくれるお手伝いの修行僧がいるんですけど、3日目位から部屋全体に死臭が漂っていたと言いますね」と、その過酷さを生々しく語りました。現在は、全国各地、そして、海を越えた世界中で教えを説きながら35歳で仙台に建立した慈眼寺で住職を務める塩沼さん。日本一の荒行を成し遂げて気づいたこと、そして"生きていく上で心がけるべきこと"をサワコに語ってくれました。
「サワコの朝」はインタビューの達人・阿川佐和子が土曜の朝に素敵なゲストを迎えて送るトーク番組。
次回1月9日のゲストは舘ひろしさん。幼少期から建築家を夢見た大学時代のエピソードをはじめ、石原プロに入るきっかけとなった「西部警察」の思い出や、その背中を追ってきた渡哲也さんへの思いを語ってくれました。
MBS/TBS系で毎週土曜あさ7時30分から放送中。ゲストの心に残る音楽と秘蔵トークをお楽しみに!
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