ペットボトルや缶、パックのお茶のパッケージに書かれた「俳句」。皆さんも一度はご覧になったことがあると思います。伊藤園の「お〜いお茶」には、同社が毎年開催している「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」の入賞作品が掲載されています。お茶を飲みながら俳句を楽しむ。心がほっこりする瞬間です。

今年の新俳句大賞が決定!

2020年10月1日、今年の入賞者を決める「オンライン入賞作品発表会」が行われました。例年は入賞者を招いての表彰式を開催していますが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、初めてオンラインでの開催となりました。


発表会には、作家・クリエイターのいとうせいこうさん、作家・宮部みゆきさん、俳人・夏井いつきさんらも出席した


今回の応募数は、世界63か国から、なんと「195万4,888句」。その中から、文部科学大臣賞には神奈川県藤沢市・河本朋広さんの「天花粉 いのちひとつを くすぐれり」が、金子兜太賞には千葉県・松戸市立馬橋小学校・小林花菜さんの「目に象が 乗っているのか ねむすぎる」が選出されました。

文部科学大臣賞に輝いた河本さんは、受賞の喜びを「望外の喜びで、大変びっくりしています。お〜いお茶 新俳句大賞は世界に誇る文芸イベントだと思っていますので、その活動の一助になれて大変うれしく思っています」とコメント。普段から俳句を創作しているそうで、詠む際に大切にしていることについて次のように答えています。

文部科学大臣賞に輝いた河本さん

 
「(俳句は)体験から作られることが多い。普段から心を動かし、異なる視点で考えて気付きを得るようにしています。そういった素地が有機的につながって俳句が生み出されると思っています」

金子兜太賞の小林さんは、今回の句を「一人で考えている時にパッと思いついた」そうで、入賞作品が「お〜いお茶」のパッケージに載ることについては「緊張とワクワクがごっちゃごちゃになっています」と笑顔で答えてくれました。

「最初は実感がなかったんですが、後々、話を聞いて『すごい賞なんだ』と思って、そこからは心臓がバクバクして、鳥肌が立ってしまいました」とお母様も大喜びです。

金子兜太賞を受賞した小林さん(右)


他に小学生の部、中学生の部、高校生の部、40歳未満による一般の部A、40歳以上による一般の部B、英語俳句の部に加え、今回、新設された新俳句フォトの部の7部門大賞を受賞した作品が発表されました。これらの入賞作品が「お〜いお茶」のパッケージに掲載されるのです。

「お〜いお茶」は独自性のある“メディア”

オンライン発表会の最後には、俳人の夏井いつきさん、作家の宮部みゆきさん、作家・クリエイターのいとうせいこうさんによる審査員Q&Aが行われました。



いとうさんは「17文字の後ろにある50文字、100文字、1000文字のストーリーが一瞬パッと見える面白さがあります」と新俳句の魅力を語り、宮部さんは「俳句に親しむようになってから本業(小説)の文体も少し変わってきたような気がします。今まで10語を使って説明していたことを『これは3語で説明できるはずだ』と考えるようになりました」と、作風に変化があったことを打ち明けました。



今回、初めて最終審査員を務めた夏井さんはご自身の経験から「賞は水物。狙っている間は取れず、応募したことを忘れて結果も気にならなくなった頃に入賞するものなんですよ」と、入賞の秘訣を語ってくれました。



また、3人は入賞作品が掲載される「お〜いお茶」を “メディア媒体” としても高く評価しているようです。「文章は本の中で出会うものですが、そうではないもので出会うのはなかなか新鮮だと思います」(いとうさん)、「会社で残業をしている人がふっと見て、新しい世界が開けるかもしれない。ペットボトルという媒体は素晴らしいですよね」(宮部さん)、「入賞者が句会に持ってきて配るんですけど、その様子がとても微笑ましい」(夏井さん)と、パッケージに作品が掲載されることの独自性と効果を、それぞれの視点で語ってくれました。

発表会の様子はYouTubeからも見ることができます
https://youtu.be/jC8faEluiJc


11月3日より、第三十二回「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」の募集が開始します。
詳しくは以下のリンクをチェック!

――伊藤園お〜いお茶新俳句大賞/公式サイト

200万句すべてに目を通す、まさに「厳正な審査」

さて、今回の大賞には200万句近くの応募があったそうですが、その中から入賞数が2000句ということは、入賞率はわずか0.1パーセント。1000句に1句という非常に狭き門です。いったい200万近い作品をどうやって、どのぐらいの時間をかけて選考しているのでしょうか。筆者の個人的な意見ですが、失礼ながら「本当にちゃんと審査しているのか…?」という疑問もわきます。

そんな疑問をぶつけるべく、「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」を担当される、伊藤園の横山佳史さんに詳しいお話をうかがってきました。

株式会社伊藤園 マーケティング本部 広告宣伝部 緑茶ブランド広告チーム 横山佳史さん


――審査にはどのぐらいの時間をかけて行っているのでしょうか。

応募期間は11月3日の文化の日から翌年2月28日までの約4か月間です。例年は7月7日の七夕の日に結果を発表しますので、3月から審査を始め、約4か月間かけてすべての賞を決めています。

――どのような段階を踏んで審査をするのでしょうか。

まずは1次審査ですが、後援団体様である現代俳句協会の俳人約200名の皆様に、200万句すべてを審査していただきます。オンラインでの応募もあれば、ファックス、葉書もあり、学校からの場合は専門の応募用紙があって多岐にわたります。

まずはそのままの形で見ていただき、延べ1200時間ぐらいかけて2万句ぐらいまで絞ります。そこから同じく現代俳句協会の、別の200名の俳人の皆様による2次審査に入り、1句あたり3名以上に見ていただいて1万句程度まで絞り込みます。

1次審査では、時間をかけて200万句すべてに目を通しているそう


――ここでようやく200分の1ですね。

次は3次審査になります。ここまでは俳人の方が審査していますが、いろいろな目線からも見ていただきたいので、元ジャーナリストや編集者、言語学者などに審査をしていただきます。その際、これまでに落選した句も見ていただく「敗者復活審査」も行います。これによって8000句ほどが残ります。

――選考から漏れてもチャンスがあるんですね。

俳人の方の目に留まらなかったものでも、ジャーナリストの方には響く場合もありますからね。そうして3次審査を通過すると、今度は最終審査員11名の方々による審査になります。

まずは最終審査会の前に、それぞれのご自宅で審査をし、ご自身の中で上位の賞を選んでいただきます。これが在宅審査になります。それを持ち寄って1つの審査表にして、ようやく最終審査会が行われます。つまり、全部で5回の審査があるイメージですね。

――最終審査会も時間をかけて行われるのでしょうか。

朝の10時ぐらいから夕方5、6時ぐらいまで、丸1日かけて行います。11名が顔を合わせて議論する中で、誰かが「この句はすごくいいよね」という意見を出すと、それぞれの考え方が変わっていく、ということも頻繁にあります。

俳句は生きているんだな、と思う瞬間ですね。いろいろな意見が出てくる中で、最終的な賞を決めていきます。

最終審査の様子。審査員の熱のこもった議論によって入賞作品が決定される


――かなり入念に審査されているんですね。疑ってすみませんでした…。

「厳正なる審査によって」という言葉をよく目にしますが、「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」が一番、その言葉にふさわしいんじゃないかな、と思うぐらい、本当に厳正に審査しています。

また、世の中には数多くの俳句コンクールがありますので、そこでの入賞作品と重複しないよう、各コンクールの入賞作品をデータベース化して照合するという作業も、審査の間に4回ぐらい行います。それぐらい厳正に審査と検証を重ねて、最終的に2000句が入賞作品として「お〜いお茶」のパッケージに載るという流れになります。

「俳句」ではなく「新俳句」の意味とは?

ところで、「お〜いお茶」に掲載されるのは「俳句」ではなく「新俳句」と呼ばれています。横山さんはこのネーミングについて「季語を入れ、五七五の定型にするというルールにこだわって俳句を作るのではなく、いつでもどなたでも俳句を楽しんでいただきたい、自分の思ったことをリズムに乗せて自由に表現しましょう、心の風景を書きとめましょう、というのが新俳句の定義です」と説明してくれました。

元々、急須で淹れて飲むものだったお茶をペットボトルや缶、紙パックなどで気軽に楽しめるようにしたのが「お〜いお茶」でした。「新俳句」もそれと同じコンセプトを持つものであり、「今では両者は切り離せないもの、いわば“ニコイチ”です」と横山さんは語ります。

実は9割近くは児童や生徒からの応募!

200万句近い応募のうち、約92パーセントは小学生、中学生、高校生からの応募だそうです。皆さんも国語の授業で俳句を学んだことがあると思いますが、その一環として伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞を取り入れている先生も多くいらっしゃるそうです。


ちなみに、団体応募した学校のうち、5名以上の方が入賞した学校を「優秀学校賞」として表彰しています。優秀学校賞受賞校の先生からは、「入賞することで俳句が好きになり、自ら俳句をつくってくる児童も増えました」や「作品が入賞をすることで、普段控えめな生徒がクローズアップされるという嬉しい効果を生んでいます」など、新俳句大賞を通じて教育現場が活気づいていることも伺えます。

過去には、学生時代に入賞し、その成功体験の感動からのちに国語の先生となり、授業で「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」を取り入れて、教え子が大賞を受賞し、ご自身も後に文部科学大臣賞を受賞された方もいらっしゃるそうです。横山さんも「長い歴史の中で思い出深いエピソードです」と振り返ってくれました。

ボトルを見ると小中高生の入賞作品もよく目立つ


新俳句大賞の入賞者への特典はどんなものがある?

今回の「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」の入賞作品は、約1年間かけて「お〜いお茶」のパッケージに順次、掲載されていくそうです。横山さんは、入賞者の方々が手にする「副賞」や、掲載する際のこだわりについても教えてくれました。

――入賞者の方々には、自分の句が載ったボトルが贈呈されるのでしょうか。

パッケージに載る2000名の方々には特別仕様のパッケージを作っていて、入賞した句を載せた「お〜いお茶」を1人1ケース(24本入り)、副賞として差し上げています。

実は有料で追加注文もできるようにしていて、1ケースは無償で差し上げるんですが、親戚や学校に配りたい、保管したいという方も大勢いらっしゃるので、上限なしで追加注文を承っています。過去には80ケースぐらい頼んだ方もいらっしゃいました。

入賞者のみに贈呈される自分の句が入った特別なお〜いお茶のパッケージ


――自分の句がいつ頃、掲載されるのか知ることはできるのでしょうか。

入賞作品は文部科学大臣賞の作品から順に1年かけてすべて掲載していきます。ペットボトルだけでなく缶や紙パックもありますし、通常の緑茶に加えて濃い茶、ほうじ茶、玄米茶などいろいろあり、それらに掲載していきます。

入賞された方はやはり流通しているものを見たい、買いたいという方も多く、個別にお電話をいただくことも多いので、私のほうで管理し、掲載されたら順次、ご連絡を差し上げて「今この商品に載っていますのでご覧になってください」とお伝えします。

――掲載する際に留意していることはありますか?

実は細かいこだわりがありまして、春限定のボトルには春を詠んだ句、秋限定のボトルには秋の句など、季節と句のテーマを合わせるようにしています。また、ご当地パッケージのボトルには、その都道府県の方の作品を掲載し、より親しんでいただくようにしました。

国内線の機内サービスで提供している紙パックの「お〜いお茶」には、飛行機を詠んだ句を載せています。あまり気付かれないものですが、ぜひ確認していただきたいですね。


発売季節やパッケージと載せる句のテーマを合わせるという細かいこだわりも


次の募集は11月3日からスタート!

俳句を詠んで応募し、ドキドキ、ワクワクしながら入賞作品の発表を待ち、入賞したら特別仕様パッケージが贈られるだけでなく、市販もされる。何重にもわたって楽めることが「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」の魅力だということが分かりました。

「句のテーマによってどの商品に掲載するかを決めている」という横山さんのお話を聞いた時には、筆者もすぐにコンビニやスーパーに行ってパッケージを確認してみたくなりました。帰りの道すがらも、目に映る風景を眺めながら、ついつい心の中で五七五の句を詠んでいました。

さて、第三十一回のオンライン入賞作品発表会が終わったばかりですが、第三十二回「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」は、11月3日から募集がスタートします。

今回、金子兜太賞に輝いた小林花菜さんは、実は初めて作った俳句で今回の賞を受賞したそうです。「伊藤園お〜いお茶 新俳句大賞」は他の俳句コンテストとは異なり、俳人以外の方も審査に参加しているという特徴があります。季語や定型にこだわらず、表現が豊かで、詠んだ時の心情がストレートに伝わってくる句であれば、審査員から高い評価を得ることもあります。

「普段、俳句なんて詠んだことがないから…」という方でも、素直に、自由に表現すれば、審査員の目に留まって入賞するチャンスがあるのです。

誰でも気軽に詠むことができる新俳句。応募した後にも様々な楽しみが待っています。「お〜いお茶」を飲みながら、リラックスした気分でぜひ一句、詠んでみてはいかがでしょうか。

伊藤園お〜いお茶新俳句大賞
公式サイト

[PR企画: 伊藤園 × ライブドアニュース]