交差点の手前で見られるものなど、道路の案内標識のうち「方面と方向」を示すものの多くは直線的な矢印で構成されますが、なかには、矢印が妙にくねったり、曲がったりしているものも存在。案内標識の盤面のデザインは、どう決まるのでしょうか。

案内標識の矢印 直線から「くねった矢印」に

 2020年2月、静岡県のとある案内標識に描かれた道路案内の図が「槍(やり)を持っている人に見える」というツイートが話題になりました(2日間で7万いいね)。

 これは、「方面および方向」を示す案内標識の矢印が、周辺道路の線形に合わせて曲線的に配置されており、たまたまそのように見えたもの。交差点の手前などで見かける「方面および方向」の案内標識の矢印の多くは十字型、道路の分岐を案内するものも直線的に矢印が配置されているケースが多いですが、この静岡県の事例のように、線形を再現して矢印がくねくねしているものも全国で見られます。

 また、直線的だった矢印のデザインを、そのように改めるケースもあります。

 その例に、東京都北区 国道122号(北本通り)の上り線、王子三丁目交差点の手前に掲げられた案内標識が挙げられます。従来は、上に伸びる直線の矢印(三ノ輪方面)の中ほどから、左斜め上に矢印(池袋方面)が伸びるというデザインで、標識の先にあるアンダーパス(三ノ輪方面)と側道(池袋方面)との分岐を示していました。


くねった矢印に変更された標識。東京都北区、国道122号で(2020年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

 これが2020年度に、池袋方面が上方向の直線矢印で表され、アンダーパスの三ノ輪方面の矢印は、池袋方面の直線の右下から始まり、大きく左に曲がって池袋方面の直線をくぐり左上に伸びる、というデザインのものに架け替えられました。このデザインは実際の線形に即したもの。東京都の第六建設事務所によると、「方角的には直進が池袋方面、左上が三ノ輪方面ですが、それが逆になっていて分かりづらいという声がありました」といい、分岐部だけを案内するのではなく、アンダーパスが左にカーブする線形を示し、全体の方角を標識に反映したということです。

 この標識の地点を池袋方面に進むと、常磐道方面へ向かう首都高C2中央環状線の王子北出入口、アンダーパスを進むと東名高速方面へ向かう同王子南出入口に通じています。以前はそれぞれの出入口名が標識にも表記されていましたが、現在は「首都高」の文字もなく「E6 常磐道」「E1 東名」の表記に改められました。常磐道、東名ともこの地点からは大きく離れていますが、限られたスペースのなかで、それぞれの入口から「行ける方面」を重視したそうです。

案内標識のデザイン どう決まるのか?

 では、このような案内標識のデザインはどう決まるのでしょうか。国土交通省道路局によると、標識の色や矢印、地名の表記基準なども法令で決まりはあるものの、矢印の配置などについては画一的ではなく、場所ごとの状況に合わせて決められるといいます。

 標識の内容は、国や都道府県、市区町村といった道路管理者と警察、場合によっては観光協会なども交えた、地域ごとの「道路標識適正化委員会」での検討を経て決まるといいます。特に東京都内では近年、東京五輪に向けて英語表記の改善など、外国人ドライバーに優しい案内を目指すべく、見直しが重点的に進められているとのこと。

 また、道路標識は5年あるいは10年といった定期的なスパンでの点検が義務付けられており、構造物の健全度に応じた優先度をつけ、架け替えを検討するといいますが、新しい道路ができるなどして状況が変化した場合などは、それを待たずに架け替えを行うこともあるといいます。


変更前の標識は矢印が直線的だった。東京都北区、国道122号で(2019年3月、乗りものニュース編集部撮影)。

 一方で、もとの標識にシールを貼って内容を修正するケースもあります。たとえば合併で市町村名が変わったり、英語表記が改められたり、線形の変化により矢印の内容に修正が必要な場合などが挙げられますが、「シールを張った部分とそれ以外の部分とで、反射の度合いが異なり、夜間の視認性が悪くなるという問題もあります」(国土交通省道路局)とのこと。シール対応ではなく架け替えを判断することもあるということです。