ドイツ御三家に引けを取らないブランド力

 2020年2月3日、レクサスは2019年の世界新車販売実績を発表。総販売台数は過去最高となる76万5330台を記録し、前年から10%増と近年好調なブランドのひとつです。同社セダン「GS」の生産終了や「IS」のビッグマイナーチェンジなど注目を集めるレクサスブランドが好調な要因とはなんなのでしょうか。

ビッグマイナーチェンジで走行&安全性能が格段に向上したレクサスの新型「IS」

 2020年4月23日にレクサス「GS」の生産終了がアナウンスされました。GSは、1989年のブランド立ち上げ当初からフラッグシップモデルの「LS」とともにラインナップされている同ブランドで歴史あるモデルです。

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 GSの生産終了は衝撃的である一方で、レクサスがスポーティなモデルとして位置付けている「IS」が2020年6月16日にビッグマイナーチェンジを発表し注目を集めています。

 そんなレクサスですが、競合相手と考えられるほかの高級ブランドと比較しても、現在好調であるといいます。

 レクサスの競合はなんといっても、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディの「ドイツ御三家」です。

 レクサスの2019年の国内新車販売台数が6万2394台だった一方、競合ブランドでは、メルセデス・ベンツが6万6523台、BMWが4万6814台、アウディ2万4222台となっています。

 レクサスは高級輸入車に対しても販売台数で劣ること無く、メルセデス・ベンツと並ぶ販売台数を記録しています。その要因はどこにあるのでしょうか。

 プレミアムブランドの各モデルにはそれぞれに特徴や強みがありますが、国内におけるレクサスの大きな強みは、ほかの高級ブランドに比べ「納車が早い」点だといいます。

 輸入車の場合、製造国から日本への輸送に時間を要するため、その分国産車に比べて納車までの期間が掛かりますが、レクサスは国内でも生産されているため、受注から生産、納車までが輸入車に比べてスピーディにおこなわれるのです。

 もちろん、輸入車ブランドでも売れ筋グレードなどはある程度見込み発注をし、国内に在庫を抱えることで納車期間を短縮していますが、特別色を選択したりして受注生産となると納期が大幅に長くなってしまいます。

 地の利を活かしている点が、レクサスの大きな強みのひとつといえるでしょう。

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 レクサスは国産車としての品質と輸入車のような高級感を兼ね備えたブランドです。それらクルマとしてのクオリティもさることながら、販売店の雰囲気にもこだわりを感じられます。

 例えば、来店客用のテーブルひとつひとつが曇りガラスで隔てられており、落ち着いた雰囲気で説明を受けることができるうえ、営業スタッフや受付スタッフの対応も、礼儀を重んじる日本人に好感を与えるよう徹底されています。

 こうした日本の高級ブランドならではの配慮やおもてなしも、支持を集める要因となっているかもしれません。

「GS」は「ES」のために消えた?

 現在好調な販売が続くレクサスですが、今後も売れ行きを維持できるのでしょうか。

 ブランドにとって直近の大きなトピックであり、この先の業績に大きく影響するであろう「IS」と、生産終了が決定した「GS」について、首都圏のレクサス販売店スタッフは以下のように話します。

「ISのビッグマイナーチェンジについて、実は私達にも詳細な情報はまだ届いていません。8月にはレクサスによるリーフレットの発行、9月には記者発表があるとのことなので、詳細はそこで明らかになるでしょう。価格帯などを考えると、当面はISがもっとも売れるモデルになると思います。

 また、GSが生産終了するというのは、現場としては残念ではあります。ボディサイズが近い『ES』の存在や、新しいISの全幅が、GSと同じ1840mmほどになるといわれていますので、それが今回の決定に大きく影響したと考えられます」

GSの生産終了に伴い発売された特別仕様車「“Eternal Touring”」

 GSは、2018年以前から生産終了がささやかれていました。そのひとつの要因は、販売店スタッフがいうようにESの存在にあります。

 生産終了するGSは、全長4880mm×全幅1840mm×全高1455mm、対してESは、全長4975mm×全幅1865mm×全高1445mmです。

 ボディサイズだけでなくパワートレインも似通っており、GS300HもES300Hも2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジン+ハイブリッドシステムを搭載。最大出力178馬力と最大トルク22.5kgf・mはまったく同じです。

 パッケージの似たモデルであり、ブランド創設当初からアメリカで人気を博しているESの日本投入が、GSの生産終了に大きく影響していることは間違いありません。

 GSとは対照的に、ポジティブな変化を受けるのがISです。ISは、2020年秋頃の登場後、しばらくはレクサスの販売をけん引することになるであろうモデルですが、具体的にどのような競合車があるのでしょうか。

 まず考えられるのがBMW「3シリーズ」です。スポーティセダンのベンチマークともいえる3シリーズは、ISと比較される存在です。

 ボディサイズは全長4715mm×全幅1825mm×全高1430mmと、サイズ自体はISとあまり差はありませんが、両モデルのパワートレインには違いがあります。

 現在、販売されているISと3シリーズで、それぞれエントリーグレードのIS300と320i SEで比較すると、互いに排気量は2リッターガソリンエンジンとなっていますが、最高出力、最大トルクは、IS300(245馬力/35.7kgf・m)、320i SE(184馬力/30.6kgf・m)となり、排気量に差はないものの、動力性能ではIS300に軍配が上ります。

 しかし、3シリーズにはスペックでは計れない「駆けぬける歓び」といわれるエモーショナルな部分があります。ISがそうしたエモーショナルなドライビングフィールを持つことができるかどうか、ビッグマイナーチェンジ後のモデルに期待です。

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 国内では好調とされるレクサスですが、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディら競合ブランドと比較すると、欧州での販売はやはり遅れをとっています。しかし、レクサスの主戦場である日本国内、そして北米ではライバルとして「ドイツ御三家」を迎え撃っています。

 主力モデルのISのビッグマイナーチェンジを控えていることもあり、少なくとも日本国内と北米では、レクサスの好調は堅調に販売台数を伸ばしていくことでしょう。