2020年6月17日に中国とインドの国境付近で両軍が衝突し、インド兵が少なくとも20人死亡した事件をきっかけに両国の間で緊張が高まっており、その影響がインドのiPhone製造工場にまで及んでいると報じられています。

Apple supplier Foxconn, others hit as India holds up imports from China: sources - Reuters

https://www.reuters.com/article/us-india-china-ports/apple-supplier-foxconn-others-hit-as-india-holds-up-imports-from-china-sources-idUSKBN243118

State Department warns top U.S. firms over supply chain risks linked to China's Xinjiang - Reuters

https://www.reuters.com/article/us-usa-trade-china-xinjiang-companies/state-department-warns-top-u-s-firms-over-supply-chain-risks-linked-to-chinas-xinjiang-idUSKBN2432QA

iPhoneの主要な生産請負企業の1つであるFoxconnは2019年に、「インドでのiPhone製造を開始する」と発表しました。また、2020年5月にはAppleが、FoxconnやWistronなどの委託製造業者を通じてインドに400億ドル(約4兆3000億円)規模の投資を行う計画を打ち出しています。これにより、iPhone生産能力の20%が中国からインドに移ることとなりました。

AppleがiPhone生産拠点の20%を中国からインドへ移すとの報道 - GIGAZINE



インドでiPhoneの生産を開始したFoxconnについて、ロイター通信は2020年7月2日に「インドの税関当局は、中国からの輸入品を差し止めて、追加の輸入審査を行っています。これにより、Foxconnの操業に支障が出ています」と報じました。

報道によると、スマートフォンなどの電子部品を含むFoxconnの貨物150点以上がインドのチェンナイ港で立ち往生しているとのこと。貨物の一部は緩慢なペースで手続きが進んでいるとされていますが、どれだけの部品が無事に搬出されたかは不明です。

インドのタミル・ナードゥ州とアーンドラ・プラデーシュ州にあるFoxconnの工場には数千人の従業員が雇用されており、AppleやXiaomiのスマートフォンを製造していますが、ロイター通信に情報を提供した関係者は「従業員の多くは仕事がなかったので、社員寮で過ごしています」と話しているとのことです。



税関を所管するインド財務省の内部関係者はロイター通信の取材に対し、「このまま全数検査を続けることはできません。特に、中国以外の企業の品は優先して処理されています」と話して、影響は一時的なものだと説明しました。

Apple関連メディアの9to5Macは、「今回の事態は、iPhone 12の生産スケジュールが1〜2カ月後ろ倒しになっているといわれているAppleにとっては悪いニュースです。インドで生産されているiPhoneは古いモデルですが、Appleは従来モデルからの収益を最大化して新しいフラグシップモデルの供給力を確保しようとしているため、その計画に問題が生じるはずです」と指摘しました。

また、ロイター通信の報道によると、インドだけでなくアメリカでも、中国との経済活動を見直す動きが高まっています。アメリカの国務省の経済成長・エネルギー・環境政策担当次官であるキース・クラック氏は、7月1日に業界団体に送った書簡の中で「中国政府の新疆(しんきょう)ウイグル自治区に対する大規模な人権侵害について、我が国の企業や個人が関心を抱くことは重要です。当該地域で経済活動を行っている企業は、そのリスクを再評価するべきです」と述べました。



また、クラック氏は記者団との電話会談の中で、「各企業の取締役会は、自社のサプライチェーンを詳細に分析し、自社が何者と取引しているのかを明らかにすることが求められています」と話したとのことです。

こうした一連の動きについてロイター通信は「アメリカが、新疆ウイグル自治区や、香港国家安全維持法にまつわる紛争を機に、中国への圧力を一段と強くしようとしていることの現れです」と指摘し、中国と取引する企業は今後も厳しいリスクにさらされる可能性があることを示唆しました。