■第2波はこんなに早くくるものなのか

新型コロナウイルスが収束傾向にあるとして、緊急事態宣言が解除された日本。東京では解除後、失った数カ月を取り戻すかのように外へと出かける人を大変多く見かけるようになった。しかし東京や福岡では感染者数の増加が再び見られ、東京ではアラートが発動された。

写真=時事通信フォト
「東京アラート」が初めて発動され、赤くライトアップされた東京都庁=2020年6月2日午後、東京都新宿区 - 写真=時事通信フォト

東京都によれば、6月2日の新規感染者数は34人だった。1日の感染者数が1桁から多くても10人台を推移した1〜2週間前と比べるとその数の増え方に驚きを隠せない。これはもうすでに第2波が到来していると考えるべきなのだろうか。アメリカの国立アレルギー・感染症研究所は、第2波が訪れる時期として「秋〜冬」と発表していたが、こんなにも早く日本にくるものなのか。コロナを巡る困惑、混乱はまだまだ続きそうだ。

一方で、連日テレビをにぎわせた新型コロナウイルスの話題もめっきり少なくなった。緊急事態宣言が解除されたことによる経済の再開にフォーカスされることが多く、肝心の感染者数に関する言及も少ない。といようりも、国民もコロナに関心がないのかもしれない。何か、もうコロナが終わったと勘違いしている人がこの国にはたくさんいるのではないだろうか。

■いま、ホストクラブでの感染が増えている

そんな、自粛解禁のお祭りムードが広まりつつある東京で、特に大きな悩みとなっているのが「夜の繁華街」だ。

都などによると、ホストクラブやガールズバーなどに関わる人が感染するケースの増加が見られている。5月19〜25日かけて感染が確認された48人のうち、約1割の5人が夜の繁華街での接待を伴う飲食業の従業員やその客だったが、5月26〜6月1日には、感染者90人のうち、およそ3割にあたる26人にものぼった。とくに若い世代での感染が目立つという。

新宿・歌舞伎町でホストクラブを経営している男性は、プレジデント編集部にこう実情を明かす。

■ホストは開くが、キャバは躊躇する理由

キャバクラでは開けていない店はまだポツポツありますが、ホストクラブはほぼ再開していますね。というのもキャバクラは店を開けても、まだそんなに客がこないのですよ。女の子がラインで男を誘っても、“まだやめておくよ”と冷たい返事が多いようですね。妻帯者もいれば、会社員もいますし、自粛ムードは続いています。一方でホストクラブでの様子は全然違います。そもそもうちの店なんかも売り上げの9割は”ホス狂”の女の子です。そういうホス狂の女の子たちにコロナなんて関係ないですよ。うちも売り上げはかなり戻ってきています。」

ホストクラブでの接待は、国がさんざん注意を促してきた3密そのものだろう。そんな話を聞くと、どんな感染症対策をとっているのか気になる。

■アフターではどんな濃厚接触をしているのか…

「外で客引きをしているホストにはマスクをつけさせていますし、店内でも原則マスク着用とは言っています。しかし盛り上がってきたらマスクを取っちゃうホストはいますね。それに、そもそもマスクなんて意味ないくらいに3密になっているわけですし……。もっといえば、アフターでは客とどんな濃厚接触をしているのか、知る由もありません」

ちなみにこの男性の店ではまだ、新型コロナウイルスに感染した従業員や客はいないそうだ。もちろんすべてのホストクラブがこの男性が経営する店のようにずさんな対応をしているわけではないだろう。しかし、東京都のある幹部は頭を抱える。

「ホストクラブなどで新型コロナウイルスの感染者が出てしまうことは、ある程度は仕方ないことですし、想定内です。これまで止めていた経済を再開させたのですから、反動もあるでしょうし……。しかし、困っていることは別にあります」(都幹部)

都幹部によると、新型コロナウイルスの感染者がホストクラブ回りで発生したとしても、その場にほかに誰がいたのかなど、店側が一切喋らないのだという。

■ホス狂が地方に感染拡げないか不安

「新型コロナウイルスとの闘いで、クラスターを把握することはとても重要なことです。しかし、店側は協力的でない場合が多いです。そうなると感染者を食い止めることは難しくなりますね」(都幹部)

なぜ、ホストクラブの中には協力的でない店があるのか。前述のホストクラブの経営者はこう説明する。

「女のコの個人情報を流すわけにはいきません。もし、保健所に流したとしたら、店・ホスト側の信頼関係は崩れ、ほかの店に流れてしまいます」(ホストクラブ経営者)

また「お店にくる女の子は地方の風俗で働いていている子も多い」とも語る。

「ホストクラブと提携している風俗もあるくらいですから、ホストクラブと風俗店はとても近い関係にあります。歌舞伎町で遊んでいる女の子は北関東あたりで働いている子も多いですね」(ホストクラブ経営者)

歌舞伎町で発生したクラスターは地方に広がり、さらに地方の風俗からその地域に新型コロナばらまいている可能性が見えてきた。

■そんな中でパチンコ業界は怒りを爆発

夜の繁華街での接待を伴う飲食業に関わる人が増えていることについて、小池百合子東京都知事も「ステイホーム週間が終わった後の増加ということだと思う。どのような形で対策をとっていくのか検討しているところだ。院内感染と夜の街の対策は目下、都にとって明確な課題なのでしっかり対応したい」と述べている。

夜の繁華街に四苦八苦する都。そんな中で、パチンコ業界は「おれらへのバッシングはなんだったのか」と憤る。

「パチンコはここ数カ月間、日本全国から大バッシングを受けました。緊急事態宣言の中、営業していたことへの批判ですが、そんなのはパチンコ業界に限らず、飲食店や小売店でも営業していた店はありました。それなのに、われわれは営業している店を都が公開するなど、“処刑”をくらいました。これはパチンコ業界に対するヘイトなのではないでしょうか」(都内パチンコ店に勤務の男性)

■一番怖いのはコロナじゃなくて人間

パチンコ店は3密状態にあり、感染リスクが高いとして、都などは休業要請を出していた。しかし、ふたを開けてみるとパチンコ店でクラスターが発生した事例はなかった。それにもかかわらず東京都医師会がクラスターの発生した場所としてパチンコ店を挙げ、その後東京都医師会は訂正し謝罪した。さらにいえば、ここぞとばかりに“パチンコ憎し”な人たちがパチンコ店をたたき続けた。

「パチンコの規制は強化され、パチンコ離れも年々進んでいます。そんな中で、今回の自粛要請です。店を閉めた同業者もいました。店を開けていた人だって、従業員の生活を守るための苦渋の決断だったのでしょう。それを自治体や国を挙げて、マスコミも面白おかしく報道して……。私たちは人間以下の存在なのでしょうか。パチンコ店の客は基本的に喋りませんよ。たまに叫ぶ人はいますが……。それに横並びで座ります。アルコール消毒だってこまめにやっている。それなのに、なぜわれわればかりがこんな仕打ちをうけなくてはいけないのでしょうか。理不尽すぎます」(同男性)

コロナ禍で、夜の繁華街への休業補償については、関係者以外からも多くの賛同が集まった。一方で、パチンコ店に対しては同情の声はほとんど聞こえてこなかった。クラスターが発生した事実がなかったという結果を見ても、マスコミのパチンコたたきは本当に正義だったのだろうか。混乱に陥った国民を扇動し、視聴率を稼ぎたかっただけではないのだろうか。

一連の騒動の中で、最も怖かったのはコロナではなく、人間だったのではないだろうか。

(プレジデント編集部)