宗教は個人の倫理観などを規定するため、「宗教的環境が人間の行動に大きな影響を与える」と一般的に考えられています。宗教的環境が大きな影響を与える行動の例として挙げられる「ポルノ」に関する調査では、「保守的な宗教が主流な地域の若者はポルノを見る確率が大幅に高い」ということが明らかになりました。

Adolescent Porn Viewing and Religious Context: Is the Eye Still the Light of the Body?: Deviant Behavior: Vol 0, No 0

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/01639625.2020.1747154

A conservative religious environment strongly increases the chances of adolescent porn viewing, study finds

https://www.psypost.org/2020/05/a-conservative-religious-environment-strongly-increases-the-chances-of-adolescent-viewing-56919

性交の際、故意に精液を地に漏らしたことで神によって処刑されたオナンの説話から、カトリック教会は自慰行為を罪として見なしています。このように、性に関してさまざまなタブー・倫理観を規定する宗教はごく一般的です。

アメリカにおける宗教とポルノの関係を導き出すという研究を行ったのは、バルドスタ州立大学のFanhao Nie氏。Nie氏は2000年に行われたアメリカの国勢調査とアメリカの宗教団体に属する統計家協会が2010年に行った宗教比率調査の結果から、「思春期の若者がポルノを視聴する確率」と「その地域での宗教的背景」の関連性を調べました。

今回の研究で、Nie氏はアメリカにおける主要な宗教であるプロテスタントに着目。福音主義などの保守的なプロテスタントの人口比率が高い郡では、思春期の若者がポルノを視聴する確率が高いと発見しました。Nie氏によると、宗教的環境がポルノの視聴率に与える影響はかなり高く、宗教的保守度が1単位高くなると若者のポルノの視聴率は66.53%上昇したとのこと。また、個人・家族・友人・郡レベルの変数を考慮に入れた場合でも、宗教的環境がポルノの視聴率に与える影響は一貫していたそうです。



この結果に関して、Nie氏は「青少年の性的逸脱を防止することに関して、信仰心があつくなるように育てたり、厳しくペアレンタルコントロールしたりする以上のことが必要だと考えています」「個人的な推測ですが、保守的なプロテスタントではあからさまな性的表現が禁じられたり恥ずかしいものだと教えられたりするため、子どもは『性的な機会をコッソリと追い求める』という選択しかできないのだと考えられます。そして、コッソリと性的な機会を追い求める方法の1つが、ポルノの視聴というわけです」と説明。青少年の性教育について、「セックスの役割と目的について、青少年にオープンマインドで開かれた対話を持つことが客観的な視点を確立することに役立つ可能性があります」とコメントしました。

なお、Nie氏は今回の研究における注意点として、今回の研究はあくまで地域に関するものであるためどういった人々がポルノを多く見ているのかについては研究の対象外であるという点や、イスラム教のようなアメリカで非主流な宗教については別の結果が得られる可能性があるという点、そして使用したデータセットがスマートフォンが主流となる2008年より以前のものであるため、スマートフォンがポルノ視聴に与えた影響が除外されてしまっている点を挙げています。

なお、2019年に行われた研究では、ポルノへの興味・関心は宗教的に保守的な地域のほうが高いと判明しています。

ポルノへの興味・関心は宗教的に厳しくて保守的な地域の方が高い - GIGAZINE