◆ 1998年には春夏連覇

 多くの強豪校が聖地・甲子園を席巻してきた高校野球。しかし、甲子園で勝てるチームが、プロでも活躍できる選手を輩出できるかというと必ずしもそうではない。

 目の前の一戦一戦で勝利を収めつつ、そのうえプロ選手を多く輩出できるチームとなると、全国でもほんの一握りと言えるだろう。そんな“勝利”と“育成”を両立してきた名門校にスポットを当てるのが、『名門校ベストナイン』。第3回目となる今回取り上げるのは、“東の名門”として特にファンも多い横浜(神奈川)だ。

 なお、今回も選出基準については「プロ入り後の成績」が評価対象。様々な要素を加味して比較しながら、独自に選抜したメンバーとなっている。

◆ 「横浜」ベストナイン

<投手>

若林忠志(タイガース〜阪神〜毎日) 

[通算] 528試(3557.1回) 237勝144敗 防1.99

<捕手>

近藤健介(日本ハム)

[通算] 674試 率.304(2167-659) 本28 点276 盗25

☆現役

<一塁手>

愛甲 猛(ロッテ〜中日) 

[通算] 1532試 率.269(4244-1142) 本108 点513 盗52

<二塁手>

石川雄洋(横浜〜DeNA) 

[通算] 1169試 率.256(3922-1003) 本23 点224 盗118 

☆現役

<三塁手>

福田永将(中日) 

[通算] 608試 率.263(1603-421) 本69 点243 盗0

☆現役

<遊撃手>

倉本寿彦(DeNA)

[通算] 495試 率.257(1547-398) 本6 点124 盗6

☆現役

<外野手>

筒香嘉智(横浜〜DeNA〜レイズ)

[通算] 968試 率.285(3426-977) 本205 点613 盗5

☆現役

多村仁志(横浜〜ソフトバンク〜DeNA〜中日)

[通算] 1342試 率.281(4140-1162) 本195 点643 盗43

鈴木尚典(大洋〜横浜)

[通算] 1517試 率.303(4798 -1456) 本149 点700 盗62

◆ その他の候補

<投手>

高橋 健(広島〜ブルージェイズ〜メッツ〜広島) 

[日米通算] 487試(1487回) 70勝93敗5セーブ・23ホールド 防4.31

横山道哉(横浜〜日本ハム〜横浜) 

[通算] 370試(449回) 21勝26敗45セーブ・20ホールド 防3.89

松坂大輔(西武〜レッドソックス〜メッツ〜ソフトバンク〜中日〜西武) 

[日米通算] 376試(2254.2回) 170勝108敗2セーブ・3ホールド 防3.53

☆現役

成瀬善久(ロッテ〜ヤクルト〜オリックス〜BC栃木)

[通算] 255試(1567.2回) 96勝78敗0セーブ・0ホールド 防3.43

☆現役

涌井秀章(西武〜ロッテ〜楽天) 

[通算] 417試(2315.2回) 133勝128敗37セーブ・16ホールド 防3.51

☆現役

<内野手>

苅田久徳(セネタース〜翼〜大洋〜大和〜東急〜急映〜近鉄) 

[通算] 806試 率.219(2832-619) 本37 点202 盗148

阿部真宏(近鉄〜オリックス〜西武)

[通算] 877試 率.219(2412-599) 本26 点250 盗23

後藤武敏(西武〜DeNA)

[通算] 618試 率.254(1226-312) 本52 点184 盗1

<外野手>

小池正晃(横浜〜中日〜DeNA)

[通算] 810試 率.243(1708 -415) 本55 点189 盗6

荒波 翔(横浜〜DeNA)

[通算] 522試 率.261(1571-410) 本10 点96 盗62

◆ 甲子園で伝説を作った“平成の怪物”ではなく…

 まずは投手から。ここは「横浜高校」という校名になる前の「旧制本牧中学」出身選手ということで迷ったが、実績で若林が上と判断した。

 投手が圧倒的に有利な時代とはいえ、最多勝1回と最優秀防御率2回に輝き、通算防御率が1点台というのは見事という他ない。

 また、通算200勝はスタルヒン(元巨人など)に次ぐ2人目であり、今でも最年長最多勝記録(36歳)や最年長20勝(39歳)というプロ野球記録も保持している。

 もちろん、“現代の選手”ではやはり松坂がNo.1。それだけに、メジャー移籍後の度重なる故障によって、通算200勝の大台に到達せずに現役を終える可能性が高いというのはいささか残念である。

◆ 二遊間はいまも“横浜”

 捕手では、今でこそ外野としてプレーすることが多いものの、プロでも100試合以上のマスクをかぶっていることから近藤を選んだ。

 高校時代も内野手と捕手を兼任しながらシュアなバッティングを見せており、プロでもその持ち味を最大限発揮している。2017年には椎間板ヘルニアで57試合の出場に終わったものの、打率.413という結果を残して話題となった。

 実働8年間で通算打率が3割を上回っており、ヒットを打つことに関しては現役選手の中でも屈指の存在と言えるだろう。

 続いて内野へ。一塁には、1980年夏の甲子園でエースとして全国制覇を達成した愛甲を選出。プロ入り4年目に野手に転向すると、1988年からは5年連続全試合に出場するなど、低迷期のロッテを支えた。年齢を重ねても勝負強いバッティングは健在で、トレードで移籍した中日でも代打の切り札として活躍。1999年のチームのリーグ優勝にも貢献している。

 二塁の石川は涌井と同学年で、甲子園でも活躍。ドラフト指名順位は6巡目と当時の評価こそ高くなかったが、シュアな打撃とスピードを武器に遊撃手としてレギュラーに定着。2010年にはシーズン153安打・36盗塁をマークした。その後は二塁へと回り、近年はベンチを温めることも増えているが、昨年は節目となる通算1000安打を達成している。

 三塁には、中日の中軸として活躍している福田を挙げる。高校時代は捕手だったが、打力を生かすためにプロ入り後に内野手に転向。一軍定着までに時間がかかったが、2016年からは4年連続で2ケタ本塁打をマークしている。今年で32歳となるが、全盛期はこれからと思わせるプレーぶりを見せており、まだまだ成績を伸ばす可能性が高いだろう。

 そして、遊撃手では倉本をチョイス。高校時代は比較的地味な選手だったものの、創価大、日本新薬で攻守に着実なレベルアップを果たしてドラフト指名を勝ち取った。プロ入り後も2年目からショートのレギュラーに定着し、3年目の2017年には全試合フルイニング出場。リーグトップの刺殺数もマークした。大和が加入した2018年以降は大きく成績を落としているとはいえ、今年で29歳とまだまだ老け込むには早い年齢。ここからの復活に期待したい。

◆ 海を渡った筒香への期待

 外野は全員が高校卒という顔ぶれで、奇しくも横浜高校から横浜(大洋・DeNA)に入団した選手となった。

 鈴木は1997年から2年連続で首位打者に輝き、1998年には3番打者として横浜の日本一に大きく貢献。その後は打撃フォームの改造が上手くいかず、成績を落としてしまったのは残念だったが、チームの歴史に残るバッターであることは間違いない。

 多村は若手の頃はとにかく故障が多く、なかなかレギュラーに定着することができなかったが、プロ入り10年目の2004年に40本塁打・100打点をマークして大ブレイク。2006年の第1回WBCでも、主力として攻守に活躍を見せた。その後は、移籍したソフトバンクでもベストナインに輝いている。成績の波は大きかったものの、高いレベルで3拍子揃ったスケールの大きいプレーは強い印象を残した。

 そして、「横浜高校OB」における“野手の顔”となる可能性が最も高いのが筒香だ。

 高校入学直後から4番を任されるなど素質を見せ、2年夏の甲子園では1試合8打点の大会記録をマーク。鳴り物入りでプロの世界へと進んでいくと、5年目の2014年からは中軸に定着。2016年には44本塁打・110打点を叩き出してセ・リーグ二冠王に輝いた。今季からはメジャーリーグでプレーすることになったが、どこまでその長打力を発揮できるかに注目だ。

 こうして見ていくと、ベストナインの9人中5人がまだ現役であり、近藤や福田、筒香などはまだまだこれからが全盛期という選手である。そして、まだ実績は乏しいものの、柳裕也(中日)や藤平尚真(楽天)、野手も増田珠(ソフトバンク)や万波中正(日本ハム)など、将来有望な若手がまだまだ控えているという点も楽しみだ。

 長くチームを指導してきた渡辺元智監督・小倉清一郎部長が退任。昨年は不祥事などもあって、今後を不安視する声も聞こえてくるが、新たな体制の下でもプロで活躍する選手を多く輩出することを期待したい。

☆記事提供:プロアマ野球研究所