TCLは、日本でも高コストパフォーマンスのスマートフォン「TCL Plex」を販売しているが、新たに5万円という低価格な5Gスマートフォンをヨーロッパ向けに発表した。

日本でも3月末からドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が5Gを開始しており、TCLの格安5Gスマートフォンの動向にも注目が集まりそうだ。

TCLは、もともとアルカテル(Alcatel)ブランドでグローバル市場においてスマートフォンを販売しており、日本でも過去に数機種が販売されたこともある。
しかし競合する中国メーカーの台頭で競争力を失い、ここ数年は数えるほどしか製品をリリースしていなかった。
2019年に発売したPlexはカメラを強化しながら価格を抑えた高コストパフォーマンスモデルで、ブランドもTCLとすることでスマートフォン市場の再挑戦を図ったモデルだ。


3万円を切る価格で発売中のTCL Plex


4月に発表された「TCL 10 5G」は、シンプルなモデル名からわかるように5Gに対応したスマートフォンだ。価格は399ユーロ、約4万7000円と、5Gに対応しながら価格が魅力的なモデルだ。

日本で現在販売されている5Gスマートフォンがほぼ10万円以上であることを考えると、5万円を切る価格は驚きともいえる。この価格なら家電量販店でも人気の格安SIMフリースマートフォンの上位モデルと変わらない。

もちろんTCL 10 5Gのスペックは、10万円を超える5Gスマートフォンよりは劣っている。しかし、6400万画素を含む4つのカメラを搭載しており、画面サイズも6.53インチと大きい。チップセットはSnapdragon 765Gで一般的な用途に使うなら十分な性能だ。バッテリーも4500mAhと大容量で1日フルに利用してもバッテリー切れの心配もない。SNSで写真や動画をシェアしたり、高速な5G回線でYouTubeを見たりする用途なら十分問題のないスペックなのだ。


TCL 10 5Gは価格をアピールした製品として話題になっている


ヨーロッパでは各国で5Gが始まっているが、加入者はあまり増えていない。それは5Gの利用可能エリアが狭いこともあるが、5Gスマートフォンの価格がまだまだ高いモデルばかりなのも大きな理由だ。
プリペイド契約で5Gが使える国もあるが、そもそもプリペイドを選ぶ顧客は料金を気にするためスマートフォンも安価なモデル選択する。10万円もする5GスマートフォンでプリペイドSIMを使う人はほとんどいないのだ。

TCLは、TCL 10 5Gを5Gスマートフォンの入門機として提供することで、ライバルのいない格安5Gスマートフォン市場のシェアを獲得したいと考えているのだ。

とはいえ大手メーカーも静観しているわけではない。
サムスンもミッドレンジモデルの「Galaxy A51 5G」を発表しており、価格は499ユーロ(約5万8000円)とかなり安い。
ただサムスンは5Gスマートフォンをハイエンドモデル中心の展開をしているため、低価格な5Gスマートフォンを積極的に売り出したくないとうのが正直なところだろう。

さて、日本の消費者はハイエンドスマートフォン嗜好が強い。
しかし近年は、格安スマートフォン利用者が増えており、価格やコストパフォーマンスを重視する消費者も確実に増えている。
アップルが発表した「新型iPhone SE」も、チップセットこそ最上位のものを搭載しているが、カメラや画面サイズは旧世代前の仕様にすることで4万円台からという低価格を実現。大きな注目を集めている。


シャオミは早くも低価格5Gスマホを投入する


日本でもKDDIは、低価格な5Gスマートフォンを積極的に投入予定だ。
発売予定のシャオミ「Mi 10 Lite」は海外では349ユーロ(約4万1000円)と、TCL 10 5Gよりさらに安いモデルになる。
最新の通信規格5G対応でも、ハイエンドモデルだけを出す、という時代ではなくなってきていることを感じさせる動向だ。

TCLは日本ではブランドが浸透していないが、すでにPlexを販売している実績がある。ということはTCL 10 5Gも日本向けとして販売される可能性は十分にある。

5Gの通信エリアは、順次広がることは間違いないので、それにあわせて格安5Gスマートフォンの需要も高まっていくだろう。
「そろそろ4Gから5Gに乗り換えようか」そう考える消費者も、まもなく増えてくるだろう。
そのタイミングにTCLが格安5Gスマートフォンを提供できていれば、意外と人気を集めるモデルになる可能性もありそうだ。


執筆 山根康宏