昨年11月24日、28歳で自ら命を絶った元韓国女性アイドルグループKARAのク・ハラ。その親友で、同じく女性アイドルグループf(x)出身のソルリが前月14日に自殺した矢先だったこともあり、日韓はじめ各国のメディアが大きな衝撃と報じた。理由はうつ病、ネットでのバッシング、そして親友の死などと伝えられている。

【画像】ク・ハラの兄が公開した兄妹のプライベート写真


昨年11月に28歳で亡くなったク・ハラ。実兄と実母の間で遺産をめぐって争いが続いている ©getty

 日韓のファンをはじめ多くの人々がその冥福を祈ったが、残念ながら没後も平穏と言い難い状況が続いている。発端は葬儀の当日、約20年前に家族を捨てた母親のS氏が斎場に姿を現したことだ。

 S氏は自分が喪主を務めると言い出し、ク・ハラの兄ク・ホイン氏とひと悶着起こしたという。そして出棺から2日後にS氏の弁護士2人がク・ホイン氏を訪ね、ク・ハラが所有していた不動産の半分を相続すると主張。ク・ホイン氏はこれに反発し、両者の対立は裁判に発展した。

「唯一の肉親」と認め合っていた兄妹

 ク・ハラは1991年1月3日生まれ。幼い頃からテレビを真似て踊るのが好きな子供だったが、家庭環境は複雑だったことが知られている。

 兄妹は早くから祖母に育てられていた。やがてク・ホイン氏が11歳、ク・ハラが9歳の時、母S氏が家出。その後、父親は全国の建設現場を渡り歩くようになった。父親から愛人と一緒に暮らすよう誘われたこともあったが、兄妹は断ったという。兄妹の生活は楽ではなく、ク・ハラは全州芸術高校に進学したものの学費が払えず転校を余儀なくされたそうだ。

 S氏はク・ハラがKARAメンバーとしてデビューする2年前の2006年、親権、養育権を放棄した。兄妹はその後、2017年にS氏と再会している。ク・ハラがうつ病治療の一環として、医師から母親に会うことを勧められたからだ。だが再会した後も、兄妹と母親の関係は変わることがなかった。祖母は2011年に他界しており、兄妹は互いを唯一の肉親と思って過ごしてきたという。

遺産の半分は母親のもの?

 韓国の民法でも子供と配偶者のない者が死亡した場合、遺産は実の父母が相続する決まりだ。詐欺または脅迫で遺言を妨害、また遺言状を偽造するなどした場合は欠格事由に該当するが、親権、養育権の放棄はこれに含まれない。

 遺産の50%を受け取る権利のあった父親は、「親らしいことをしてやれなかったのが申し訳ない」と相続権をク・ホイン氏に譲渡した。残り50%分の相続権は、S氏が持っていることになる。だがこれを受け入れがたいク・ホイン氏は3月3日、光州家庭裁判所に相続財産の分割審判を請求する訴訟を起こした。

 遺産の額は明らかにされていないが、ク・ハラは過去に不動産の財テクで数十億ウォン(数億円)の収入を得たと報じられたことがある。また一部では「資産100億ウォン(約9億円)」とも噂されているが、ク・ホイン氏は「実際は異なる。妹は仕事が休みがちだったことも多かった」と否定した。ク・ホイン氏はS氏が主張する分を相続できれば、ク・ハラの名を冠した財団を作りたいとの考えを示している。

兄妹の写真を添えて訴えた「ク・ハラ法」制定

 さらにク・ホイン氏は同月18日、改正民法、通称「ク・ハラ法」の制定を求める立法請願を国会に提出している。従来の相続の欠格事由に「直系尊属または直系卑属の保護ないし扶養義務を著しく怠った者」を加えることがその骨子だ。請願から30日間のうちに10万人の国民の賛同があると、国会に正式受理されて審査の対象となる。

 もちろん「ク・ハラ法」が成立しても、ク・ホイン氏の訴訟には適用されない。だがク・ホイン氏は翌19日、インスタグラムに兄妹の幼い頃の写真を添えて次のようなメッセージを投稿した。

「私は妹の死が無駄にならないよう、私たち家族のようにこうしたことに苦しむ家族がこれ以上増えないことを願う気持ちで、『ク・ハラ法』制定のための立法請願を提出しました」

ソルリの遺族も遺産トラブル

 辛い葛藤の末に自ら命を絶つ韓国芸能人。だが、その後も残された家族や関係者の間で、カネを巡る争いが繰り広げられる例は後を絶たない。上述のソルリも今年1月、やはり兄が父親との遺産を巡るトラブルがあることをSNSで告白。兄はそのなかで「妹の墓にも行っていない」と、父親への怒りをにじませていた。

 2008年に自殺した往年のトップ女優チェ・ジンシルのケースも、離婚した夫が子供の親権と財産管理を巡って遺族と争った。また2010年にパク・ヨンハが自殺した際は、元マネージャーが書類を偽造して個人の口座からカネを引き出そうと試みた上、遺品などを盗んで海外へ逃亡し有罪判決を受けた。

 悲劇に追い打ちを掛ける遺産を巡る争いが、これ以上繰り返されないことを祈りたい。

(高月 靖/週刊文春デジタル)