鹿児島県の薩摩川内(さつませんだい)市に、「ちんこだんご」というものがある。


「ちんこだんご」の掲示(画像提供はすべて薩摩川内市観光物産協会)

昔から伝わる素朴な団子なのだが、「ちんこだんご」とはなんと強烈な名前...。いったい、どんな団子なのか。どういう経緯でこんな名が付けられたのだろう。

Jタウンネット編集部は現地のお店に聞いてみた。

「もしもし、ちんこだんごって何ですか?」

小さい団子だから「ちんこだんご」?


「粼山米店」のちんこだんご

Jタウンネット記者がまず電話したのは、薩摩川内市高城町にある「粼山米店」だ。店主の粼山幸一さんが次のように答えてくれた。

「ちんこだんごは、うるち米100%のしょうゆ団子です。当店では、粉から挽いて、1本1本手造りしています。少々不揃いなものも手造りならではです。この辺りの方言で、小さいことを『ちんこべー』と言いますが、小さいことから『ちんこだんご』と呼ぶようになったと聞いています」

なるほど、小さい団子だから「ちんこだんご」と言うようになったのか。な〜んだ......と、がっかりしてはいけない。

薩摩川内市観光物産協会にも問い合わせてみたところ、観光旅行事業部の担当者はこのように話している。

「JR薩摩川内駅の1階に、観光物産協会が運営する『駅市』という店舗があり、そこに『ちんこだんご』のコーナーがありまして、名前の由来を掲示しております」


ちんこだんごの由来の掲示

観光物産協会によれば「ちんこだんご」は「しんこだんご」とも呼ばれている。ネーミングの由来は諸説あり、次の三つが有力だ。

第一は、新しい粉「しんこ」という意味で、新米の米粉だけを使って作っていたことから、「しんこだんご」と名付けられた説。

第二は、1386年(元中3年)の飢饉の際、幽遠山深固院の和尚が、落穂を拾い、籾を粉にして餅をつき、醤油をかけて焼いた団子を皆に食べさせて飢饉を救った。お寺の名・深固(しんこ)が由来ということだ。「しんこだんご」がなまって「ちんこだんご」になった。

第三は、鹿児島弁で小さい団子のことを「ちんかだんご」と言うことから「ちんこだんご」になった説だ。粼山米店で聞いた説とほぼ同じだった。

どの説を信じるかは、あなた次第だ。

「お客さんは『ちんこだんご』と言う人が多いです」


「はなちゃんだんご」のしんこだんご

Jタウンネット記者はもう1軒電話してみた。薩摩川内市西向田町にある「はなちゃんだんご」だ。

観光物産協会によると、はなちゃんだんごは薩摩川内市でもっとも人気のあるしんこだんご専門店の一つ。午前9時に開店するが、午前中には売り切れてしまうそうだ。

電話で答えてくれたのは、「はなちゃんだんご」二代目の岩川由美子さんだ。5年前に88歳で亡くなった「はなちゃん」が50年以上守り続けた味を、しっかり受け継いでいる。

「仕込みに4〜5時間かかります。1日に200本つくって、売り切れたら店を閉めてしまいます。1本50円という値段は、亡くなった母の代から変わっていません。いつも朝早くから、地元の常連のお客さんがいらっしゃいます。鹿児島県内各地や熊本県からも来られる方もいますね」


「はなちゃんだんご」の二代目、岩川由美子さん

ちなみに、「はなちゃんだんご」の店頭には、「しんこだんご」と書かれた看板がある。ネーミング由来の第一説、新しい粉「しんこ」派のようだ。

「地元のお客さんはなまって『ちんこだんご』と言う人が多いですけどね」と、岩川さんは苦笑しながら話してくれた。