「寒っ」と感じたら食べたくなるのはもちろん、「鍋」。同じ鍋を囲んでワイワイ語り、飲み、食べれば、心もお腹もポカポカ!

この冬みんなで食べたい、魚介の旨味がぎゅっと詰まった絶品鍋をご紹介。



「元祖あさり鍋」(1人前3,000円)※注文は2人前〜
創業以来の看板メニュー“元祖あさり鍋”が絶品『吉住』

恵比寿駅から駒沢通り沿いを進み、右手に見えてくるのが1978年創業の和食店『吉住』。

ひっそりとした佇まいは、長年恵比寿という地で愛される名店の風格を感じさせてくれる。



あさりをお玉ですくってみると、その大きさがよくわかる

この時期『吉住』を訪れる人のお目当てとなるのが、看板メニュー「元祖あさり鍋」だ。

身がぷっくりと膨らみ、旨みが最高潮に達した旬の“あさり”の美味しさを余すところなく堪能できる鍋である。

12月いっぱいは、先付け、刺身、焼き物、小鉢がついたコースが8千円というお得なコースがある。



まずはあさりの美味しさを堪能したい
立派なあさりの美味しさを最大限引き出す

アツアツの「元祖あさり鍋」が運ばれてきて、まず驚かされるのはあさりの大きさ。プリッと大きな身を蓄えた あさりは、普段目にするものの倍ほどの大きさがあり、ハマグリかと思ってしまうほど!

パクリと頬張れば、プリッとした身から旨みがジュワリと溢れ出す。頬張る度にしみじみと深い美味しさが感じられるだろう。



出汁とともに味わえば、その美味しさに心が和む
ほっと心を和ませてくれる優しい味わいに感動

あさりは、毎朝ご主人自ら市場で仕入れたものを、丁寧に砂抜きして使用。厳選したあさりの美味しさが、最大限に引き立つようシンプルな出汁や具材を使うのも『吉住』のこだわりだ。

利尻昆布と鰹からとる出汁を合わせ、そこにその日仕入れた活きたままのあさりを投入。その日のあさりの味に合わせ、薄口醤油とみりん、酒で味付けを施していく。

ご主人が長年培ってきた舌の感覚で調整する味わいは、食する人の心をほっと和ませてくれる。



たっぷりの出汁とともに味わってほしい。途中で胡椒を加えるのもおすすめ
〆の雑炊まで余すところなく堪能したい

あさり本来の味わいをより楽しめるように、具材も白菜と水菜、豆腐のみ。足し算ではなく、引き算により完成したシンプルな鍋なのだ。

鍋の〆には、雑炊が用意される。あさりの旨みたっぷりの出汁で作るアツアツの雑炊は、この時期の昼夜の寒暖差で疲れたカラダにじんわりとしみ込んでいく。




ぶりしゃぶ(コースはひとり¥8,400)。薬味はスペイン産の2種の塩と、酒のつまみにもなる鬼おろしが付く。カウンターで店主と会話も楽しむもよし、個室でしっぽり過ごすのもよし
鰤の旨みを塩で引き立てる味のわかるオトナ好みの鍋『和味 大輔』

魚料理と日本酒のセレクトが評判の『大輔』。冬の名物「ぶりしゃぶ」は、2種の塩でいただくのが大輔流。

鰤は築地から佐渡産や富山産など、おすすめを仕入れ、脂乗りのいい腹身のみを使用。



出汁にくぐらせ旨みが凝縮したブリを、2種類の塩で楽しむ

「出汁にくぐらせると余分な脂が落ちて旨みが凝縮する」と店主。

とろける食感をさっぱりハイビスカス塩で、はたまた、香り豊かな燻製塩でと愉しめる。



〆は鰹と鰤で取ったベースに、ぶりしゃぶの旨みが加わった絶品出汁で雑炊に。奥久慈卵でまろやかに仕上げる



内観




かに大根鍋。鍋の具は北海道産の毛蟹と大根のみ。シンプルながら、やみつきになる旨さ。バターの香りに食欲をそそられ、食べ進むうちにスープの味わいも濃厚に。蟹のエキスがしみ込んだ大根も美味
※時期などによって、メニューの変動あり
極上のふぐ料理と蟹鍋を目指して、いざ行かん!『牧野』

かつては、上野から浅草へ向かう人々が行き交うメインストリートだったというかっぱ橋本通り。延長線上に東京スカイツリーを望むこの商店街で、今も昔も変わらず食道楽の胃袋をわし掴みにしているのが『牧野』である。

店外に下げられた提灯からもわかるように、ここはふぐ料理の専門店だ。

下関から仕入れる活とらふぐの身を網上で焼いて食す“焼きふぐ”や、特製の橙酢がふぐの風味を引き立てる“ちり鍋”も最高に美味だが、ここ数年、ふぐに迫る人気を見せているのが“かに大根鍋”。



生きた蟹を仕入れ、その日にさばくのがこだわり。身は甘く、甲羅には味噌がたっぷりと詰まっている

もともとは豚肉を入れ、まかないとして食べていたという。

「最近は多いときで10パイくらいは出るかしら。ふぐの店なのに蟹屋と化してるわ(笑)」と女将。

味噌バタースープに鷹の爪を加え、生の毛蟹と大根を入れたシンプルな鍋ながら、この世のものとは思えないほどの美味しさ。

「皆さん、秘伝の味噌っておっしゃるけど、これは蟹の出汁のおかげなの」。 〆の雑炊まで堪能し帰路につけば、“幸腹感”で満たされること必至だ。



〆は雑炊の上にいくらをのせて。眩暈がするほど甘美な味わい。ラーメンと雑炊の両方を頼むお客も多い



内観


魚介の鍋はお出汁がしみる〜!



「石狩鍋クラッシコ」(2〜3人前)。厨房であらかじめ煮たものを食すスタイル
白味噌の優しい甘みがシャンパンを進ませる罪な鍋『鮭殻荘』

2014年オープンした鮭が主役の魚介ビストロ『鮭殻荘』。当然、鮭を使った北海道の鍋料理として有名な「石狩鍋」もオンメニュー。

鮭の身のぶつ切り、中骨などのあらのほか、甘みをもたらすキャベツ、じゃがいも、人参など石狩直送の野菜やつきこんにゃく、豆腐も入って具だくさん。

昆布だしベースで、味付けは白味噌。煮立て過ぎないことでコクはあるけどあっさりとした味わいで、繊細な泡と好相性。

サーモン色のロゼワインも揃っているから、2本目はそちらにシフト、もまた楽し。



「ボランジェ スペシャル キュヴェ」。オーク樽を使った発酵、カーヴでの長期熟成といった伝統的な醸造法をかたくなに守り、高い品質を保っているシャンパンメゾン。その信頼度から英国王室御用達で知られ、愛好家も多いシャンパンメゾン



「生鮭の食べ比べ」。メニューは一例




アットホームな雰囲気のカウンター
季節を感じさせる魚をおまかせで『喰切料理 一楽』

「今日はとびきり旨い魚が食べたい」。そんな気分の夜に迷わず目指すべきはこの店だ。

駅前から新橋柳通りを抜けて、新虎通りの手前の区画は、1本中に入ると驚くほど静か。そんなブロックにある『喰切料理 一楽』は、戦後に焼き鳥店として誕生。

先代が、昭和63年から魚料理の店へと発展させ、現在に至る。



「鱧しゃぶ」濃厚な出汁もたまらない ※冬の時期はアンコウ、クエ、ふぐにメニューは変わる

店の風情は、歴史の長さを物語るように“いぶし銀”という形容が似合うが、一歩中に入れば、飾らないアットホームな雰囲気。

板場の臨場感がたまらないカウンターのほか、テーブル席や座敷もあり、使い勝手も良い。 新橋の中心部からはやや離れているこの場所で暖簾を守り続けているということは、確かな実力があってこそだろう。

現在の店主・山岸俊徳氏が料理長を務めて17年。毎朝築地に通い、旬の魚介類を厳選している。 この日も、イキのいいヤリイカや、刃物のように艶やかに光るイサキなどが店先にひしめく。



鱧しゃぶは「雅」コース(8,640円)の一品。冬の時期はアンコウ、クエが楽しめる

季節によってメニューは変化するが、「鱧しゃぶ」を味わえるコースが人気。冬の時期はアンコウ、クエ、皮まで美味しいふぐちりがお勧めだ。

コースには、ムラサキウニとバフンウニの食べ比べなど趣向を凝らした品も登場する。

しかも、ひと口大の白飯が添えられ「殻の中でウニと混ぜてお召し上がり下さい」と山岸氏。これは憎い演出。ふたりそろって、思わず顔がほころぶ。



鱧しゃぶの〆は、揚げたてのおこげに葛でとろみをつけた鱧だしの餡をかけて。シズル感ある音と匂いにそそられること確実

そして〆は、鍋だしを餡にして揚げたてのおこげにかける、独創的な一品。目の前で仕上げるプレゼンテーションも相まって、満足度は最高潮。

静かに、季節の美味を味わい尽くす。大人の贅沢だ。