『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』の快進撃が止まらない。

11月8日に公開されると週末興収で邦画第1位を記録。ファミリー映画ながらも号泣する大人が続出し、「すみっコぐらし」の関連ワードがTwitterでトレンド入りするなどSNSで話題が沸騰した。「男性限定上映」や「応援上映」も実施され、12月4日時点で興収8.83億円/動員73万人を突破した、今もっともホットなアニメ映画だ。

一方でSNS上では「パステルカラーのジョーカー」、「実質『Fate』」、「逆詐欺映画」といった刺激的なワードも飛び交い、意外な方向に盛り上がりを見せたことも話題に。

これらは本作が与えた衝撃の大きさを示す一例ではあるものの、表現として的確とは言えないだろう。たしかに“すみっコ”たちはやや陰を帯びたキャラクターではあるが、観賞後には誰もが温かな気持ちになれる王道のファミリー映画であった。

今回は監督のまんきゅうと、脚本の角田貴志を直撃。新進気鋭の監督&脚本家コンビとは思えないほど優しい雰囲気で、こちらのストレートな質問にも丁寧に答えてくれ、まさにこの映画の制作者にふさわしい温かなふたりだった。

記事の前編はこちら。後編では、物語終盤の核心部分に触れるお話もたっぷり掲載! すでに映画をご覧になった人は、ぜひストーリーを思い返しながら楽しんでください。
取材・文/岡本大介

“ひよこ?”が一緒に絵本から出られる案もあった

ここからは映画の核心部分に触れる質問をさせていただきます。まず物語の終盤にナレーションがオフになりますが、この演出がすごく素敵です。
まんきゅう 本当ですか? そう言っていただけると、とても嬉しいです。じつは最後のシーンまでしっかりとナレーションを使うつもりだったんですが、最後の最後にオフにすることにしたんです。
それはどうしてですか?
まんきゅう どうしてですかね?(笑)入れたままでも全然問題なかったですし、明確な理由があるわけではないんですけど、でも最後だけはナレーションに頼らず、すみっコたちを信じて任せてみたくなったんですよね。
物語の結末に関して、最初からすみっコたちが“ひよこ?”とお別れすることは決まっていたんですか?
まんきゅう じつは初期のシナリオ会議では、“ひよこ?”がすみっコたちと一緒に絵本から出てくるというエンディングも検討していたんです。でも、すぐに現在の形に落ち着きましたね。
角田 よこみぞさんが「そういうことではない気がします」とおっしゃったんですよね。僕らも、たしかにそうだな、とすぐに納得しました。
都合のいい奇跡は起きないと。
まんきゅう というよりも、「絵本の住人は絵本から出ることができない」というのは、この世界の絶対的なルールであり、その一線は超えるべきではないということなんですね。
角田 そうですね。
まんきゅう スポーツでもそうですけど、ルールの上で戦うからこそ熱中できるわけで、たとえばサッカーで「よくわからないけど奇跡が起こったから、手でボールを運んでもOK」ってなったら急に冷めちゃいますよね(笑)。

やっぱりルールがあるからこそ熱いドラマが生まれるので、このエンディングで正解だったと思います。

エンドロールは“ひよこ?”にまつわるおまけストーリー

最後はすみっコたちが絵本に“ひよこ?”の仲間を描き込んで、エンドロールでは“ひよこ?”の幸せそうな日常が描かれています。あの描写が感動に拍車をかけるように思いました。
まんきゅう あれは僕も、最初は考えていなかったんです。その後のことはお客さんの想像にお任せでいいんじゃないかと思っていたんですけど、サンエックスさんから「“ひよこ?”にまつわるおまけストーリーをやってもらえませんか?」と言われたんです。

……ふと思ったんですけど、この映画の優しい要素って、じつはすべてサンエックスさんの影響かもしれません(笑)。
角田 言えてますね。
サンエックスさんらしい優しさというのは、たとえば他にどんな部分に表れていますか?
まんきゅう よこみぞさんからNGが出たシーンがあるんですけど、それが『みにくいあひるのこ』の世界へ移動する際、大きな崖があって、すみっコたちが縦に積み重なってハシゴを作って渡るアクションなんです。
角田 普通のファミリー映画なら、それって全然OKだと思うんですよ。ハラハラドキドキ感もあるし、キャラクター全員で協力してひとつのことを成し遂げるので、達成感も生まれますしね。
まんきゅう そうなんですよね。でもよこみぞさんからは、「あまり体を張らせすぎないでください」と(笑)。サンエックスさんにはそういう優しい気遣いが随所にあって、僕らもとても勉強になりましたね。

いちばん手を焼いたキャラクターは“ねこ”

個人的に好きなキャラクターはいますか?
まんきゅう 好きなキャラクターに関してはやっぱり全員ということになりますね。まあ、いちおう監督ですので(笑)。
角田 僕は監督ではないから言います(笑)。先ほども少し触れたとおり、“たぴおか”や“ざっそう”は、なかなか動いてくれないすみっコたちを物語に引き込んでくれたという意味で、好きというか、シナリオ上でかなり助けられました。
では、もっとも印象的なキャラクターは?
角田 いちばん手を焼いたのは“ねこ”ですね。どうやっても動いてくれなくて苦労しました。手のかかる子ほどかわいいと言いますけど、とても印象深いです。
まんきゅう 言えてます。全員を主役にしたかったんですけど、“ねこ”だけは本筋ではなかなか立たせることができなくて、結果的にあとで付け足したシーンも多かったです。
どんなシーンを付け足しましたか?
まんきゅう 赤鬼にきびだんごをあげるシーンは付け足しました。

あとは終盤、絵本の世界そのものをガリガリと爪で突き破っていきますが、みんなからそれを「うぇーい」っていう感じで褒められて、ポッと照れていたりするところもあとから付け足しました。結果的にあそこがいちばんの見せ場になったかなと思います。

冒険を通して“ぺんぎん?”と“ひよこ?”の仲が深まっていく

とくに印象に残っているシーンはありますか?
角田 脚本で書いていない演出や動きが加わったシーンはとくに印象深いです。

“たぴおか”が遊び回っているところや『アラビアンナイト』のアクションシーンは、ひとりの観客として純粋に楽しめました。僕が「空飛ぶじゅうたんで、噴き出す噴水をすり抜けながら飛び回る」とか、かなり適当に書いたのが、あんなに迫力のあるシーンになっていて、驚きました。
まんきゅう でもアクションシーンってあそこくらいしかないので、かなり力を注ぎました。
角田 僕にしてみれば、たった1行の説明をああいう形で見せられたら、やっぱり感動しちゃいますね。
それは脚本家あるあるかもしれませんね。まんきゅう監督の印象深いシーンは?
まんきゅう 僕は『みにくいあひるのこ』の世界で、“おばけ”が空にできた穴にひゅっと吸い込まれたのを見た“ぺんぎん?”と“ひよこ?”が、みんなに説明するとき、「あっちだよ」と同時に指をさすシーンです。
角田 またずいぶんと細かいですね。
まんきゅう 映画の序盤ではそんなことなかったのに、一緒にいるうちにだんだんと友情が芽生えていって、あのシーンで完璧にシンクロするんです。

冒険を通してふたりの距離がここまで近づいたんだ、ということを感じさせてくれて、グッと胸が熱くなります。
三日月だと思っていたものがじつは破れたページだったり、絵本の世界観に合ったメルヘンな仕掛けがたくさん盛り込まれていて、しかもそれらが有機的につながることでエンディングへとなだれ込んでいく構成も素敵でした。
まんきゅう あれも大変でした。絵本の中でいろいろな世界を行き来するという描写も、じゃあ衣装はどうするのかなど、考えるほどにどんどん矛盾が出てくるんです。でも、みんなで知恵を出し合って、ひとつひとつ潰していきました。映画ってつくづくルールありきなんだなと、改めて感じましたね。
角田 その点、僕は楽なんです。脚本で「“ねこ”がページを次々と突き破りながら進んでいく」って書くだけですから(笑)。それがこうやって成立したのは、本当に監督をはじめとしたアニメーションチームのおかげだと思います。
まんきゅう どこかに前例があれば楽なんですけど、誰も見たことのない映像なので、そこに説得力を持たせるのはすごく難しかったです。
でも、観ているときには違和感はありませんでした。
まんきゅう そうですか、ありがとうございます。実際には細かいほころびはたくさんあるんでしょうけど、そう言っていただけると、ひとまずのハードルはクリアできたのかなという気がします。
角田 アニメ表現って、本当に奥深いですね。
まんきゅう
1980年5月27日生まれ。神奈川県出身。O型。アニメーションの演出家、および監督。デジタル制作でのショートアニメ、ギャグアニメを数多く手掛けてきた。主な監督作品は『伝染るんです。』、『ガンダムさん』、『ぷちます!』、『北斗の拳 イチゴ味』、『磯部磯兵衛物語』、『アイドルマスター シンデレラガールズ劇場』など。
角田貴志(すみた・たかし)
1978年3月2日生まれ。大阪府出身。B型。’04年、第16回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、本公演に出演しつつ、テレビやラジオ番組の構成作家や脚本家の活動も行っている。また、イラストやアートワークを得意とし、書籍の表紙絵や、DVDのジャケットイラストなども手掛ける。「銀河銭湯パンタくん」「趣味の園芸 京も一日陽だまり屋」「タクシードライバー祗園太郎」では、脚本やキャラクターデザインも担当している。

作品情報

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』
大ひっと上映中!
公式サイト:sumikkogurashi-movie.com
公式Twitter:@sumikko_movie
©2019日本すみっコぐらし協会映画部

サイン入りポスタープレゼント

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応募方法
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受付期間
2019年12月9日(月)18:00〜12月15日(日)18:00
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