コンビニ店の倒産が急増 多くは大手コンビニブランドのフランチャイズ(FC)加盟店

 コンビニ店経営と労働環境問題に対する社会的な関心が高まっている。今年2月に人手不足で営業時間の短縮を求めたことに端を発した、FC店のオーナーとコンビニ本部の対立。最近では時短営業や省人化などの対策が図られているものの、「利便性」を支え続けてきたコンビニが抱える諸問題がここに来て噴出している。

 こうしたなか、コンビニ店の倒産が近年急増傾向にある。2019年(1〜11月)におけるコンビニ店の倒産は40件。前年(24件)を既に大きく上回り、2000年以降で最多だった2017年(45件)のペースに次ぐ多さとなっている。倒産したコンビニ店の多くは、大手コンビニブランドのフランチャイズ(FC)加盟店。そうしたコンビニFC店で倒産が増加する背景には、近隣で相次ぎ開店する同業コンビニ店同士による、熾烈な顧客獲得競争への疲弊があった。

同業コンビニ店と「客の奪い合い」が倒産理由で最多に 相次ぐ出店で狭まる商圏も一因

 日本フランチャイズチェーン協会によれば、2019年10月時点のコンビニの店舗数は約5万5500店を超え、10年前に比べ約1万3000店も増加した。店舗数が拡大し続ける背景にあるのは、一定の地域内に集中出店するコンビニ各社の「ドミナント戦略」による効果が大きい。

 一方で、各FC店の頭を悩ませているのは、同業店同士の競争による1店舗当たりの集客力低下だ。日本の総人口からコンビニ店数を割った、1店舗当たり商圏の単純人口平均は19年10月時点で約2260人。10年前(3070人)から約800人、2割強も減った。1店舗当たりの年間平均客数も、2019年は過去10年間で概ね最少となる見通しだ。

 近隣に同業店の開業が相次げば、当然店舗同士の競争が激化、客足減少に直結しやすい。小売業たるコンビニ店にとって、当初想定した客足を下回ることは経営の根幹そのものを揺るがす事態となる。

 実際に、同業他店の開業が近隣で相次いだことで利用客が減少、倒産に至ったコンビニ店は多い。大手コンビニのFC店事業を展開していた森田卓次郎商店(静岡)は、相次ぐ同業店の開店で競合が激化したことで利用客の減少に歯止めが掛からず、経営が破綻した。首都圏で複数店舗を展開していたコンビニ店でも、同業店の開業が近隣で相次ぎ利用客の獲得競争が激化。不採算店舗が続出したことで収益改善のメドが立たず、事業継続を断念した。
 同業店との客足の奪い合いで疲弊したコンビニ店の倒産は、全体に占める割合を見ても明らかだ。

 2019年のコンビニ店の倒産のうち、「同業店との競争激化」を倒産の理由に挙げたケースは判明しただけで16件、全件(40件)の半数近くを占めている。この割合は直近5年間で最も高い水準となっているほか、倒産件数として過去最多となった17年より10ポイント以上も高い。店舗の極地集中による顧客の獲得競争激化により、コンビニ店の経営に疲弊の色が見え始めている。

止まらぬ人件費の上昇、経営破綻したコンビニ店も FC店の経営安定化に向け、大手は制度改革急ぐ

 深刻な人手不足もコンビニ店の脅威だ。経済産業省の調査では、FC加盟店オーナーの約6割が「従業員が不足している」と回答。コンビニ店主の休日が週1日以下となる割合が回答者の9割にも迫るなど、厳しい労働環境が改めて明らかになった。人手確保を含めた労働環境改善が、コンビニ店では急務となっている。

 一方、リクルートジョブスの調査によれば、コンビニスタッフのアルバイト時給が5年間で約1割上昇するなど、賃金水準の上昇が続いている。増加する一方のアルバイト店員の人件費負担に耐え切れず、倒産したコンビニ店も少なくない。そのため、負担覚悟でも人手確保に動くべきか、判断に悩むFCオーナーは多いとみられている。

 こうしたなか、コンビニ大手各社はFC店の経営支援に向け本格的に乗り出した。最大手のセブン‐イレブン・ジャパンは営業時間の柔軟化や店舗作業の効率化や省人化に注力。ファミリーマートは2020年2月から加盟店支援の一環として、新規加盟時に支払う基本費用を半減させると発表した。同年3月からは全国1万5千店を対象に、原則24時間とする営業時間の短縮案を容認する構えだ。ローソンはレジ無し実験店を開設、IT投資により省人化を推し進める方針を取る。加盟店の経営安定化がコンビニ産業の持続的成長に繋がるだけに、コンビニ大手もFC店での問題解決に向けた取り組みを急ピッチで行っている。

 コンビニは今や社会インフラとして、生活基盤に欠かせない存在だ。それだけに、フランチャイザーとなるコンビニ本部とFC店、そして利用客というステークホルダー全員に、コンビニ店が置かれた厳しい現状への理解と、その改善に向けた継続的な努力が求められていると言える。