当時の安倍首相とM氏(ニューオータニでの誕生日会)

「5000円はホテル側が設定し、価格設定どおりのサービスが提供されています。費用の明細書は、ホテル側から発行はありませんでした」

 11月20日、安倍晋三首相(65)は、参院本会議でこう強弁した。「桜を見る会」の “前夜祭” として毎年開かれていた夕食会の費用をめぐって、疑惑の目が注がれている。

「ホテルニューオータニで開かれた夕食会には、支持者を中心に850名が参加し、参加費はひとり5000円。同ホテルの宴会場でその人数なら、定価は1万1000円からのはずなのに、『大多数がニューオータニに宿泊したから』という理由で5000円になったというのです。

 ですが、あまりに安いとして、ホテルには独占禁止法違反(不当廉売)の疑いすら出てきます」(社会部記者)

 神戸学院大学の上脇博之教授は、こう指摘する。

「費用の差額分をホテルが補填したなら、『安倍首相の政治団体に対する企業献金』に該当する可能性があります。金額が150万円以上なら違法です。

 安倍事務所が差額分を補填していて、参加者が選挙区民なら、公職選挙法が禁じる『買収』にあたります」

「ホテル側が……」を連発する安倍首相だが、ニューオータニ側は “沈黙” を守る。

 奇しくも同じ11月20日に、憲政史上最長の在職日数となった安倍首相。じつは冒頭の写真は、安倍首相とニューオータニが、“特別な関係” にあることを示している。撮られた当時を知る自民党関係者は、安倍家とニューオータニ創業家・大谷家の関係を、こう明かす。

「安倍家を取り仕切る “ゴッドマザー” こと洋子さん(91)と、ニューオータニの大谷和彦社長(73)は、E塾という経営コンサルティング会社を通じて、古いつき合いがある。

 そのE塾の代表だったM氏は、総理の父・安倍晋太郎元外相と同じ山口県油谷町(現・長門市)出身で、安倍家の支持者として、長年多額のパーティ券を購入してきた。

 M氏は、大量の塩をまいて “お清め” をしたり、手をかざして “エネルギーづけ” をしたりと、“霊感コンサルタント” として、第1次安倍政権が発足する前から、政界ではよく知られた存在だった」

 安倍家と大谷家との仲を取り持ったM氏。冒頭の写真は、2000年11月にホテルニューオータニ東京で開かれた、M氏の誕生パーティのステージだ。

 当時官房副長官だった安倍首相は、自身の持病についてふれ、「その節にはMさんにはたいへんお世話になりまして……」と語っていた。もちろん同パーティには、大谷社長も参加している。

「大谷社長をはじめ、大谷一族は、M氏に心酔しきっていた。ある年の誕生会で、大谷社長は、『M先生のエネルギーがすごすぎて、こちらの具合が悪くなるんです。このホテルは完璧に清めていただいています』とスピーチしています。

 M氏も、2000年以降、ニューオータニのオフィス専用階に拠点を置いていました」(自民党ベテラン秘書)

M氏の誕生会での大谷社長

 大谷社長の祖父は、ニューオータニを創業し、戦前は “鉄鋼王” と呼ばれた大谷重工業の総帥・大谷米太郎氏だ。

「安倍総理の祖父・岸信介元首相が、戦前に商工省の課長だったとき、米太郎氏と出会ったそうだ。事業を通じ、岸元首相と関係を深めた」(同前)

 安倍家と大谷家の蜜月は、M氏を通じて、脈々と続いた。

「2005年4月には、M氏の長男の結婚式がニューオータニで開かれた。媒酌人を務めたのが、小泉純一郎首相(当時)の後継者と見られていた安倍首相でした」(政治部デスク)

 2005年に、M氏は59歳で死去した。M氏の会社は社名を変え、長男が継いだ。その会社は、都内のニューオータニグループ企業が所有する建物に入居している。

「安倍首相の資金管理団体『晋和会』の、2010年度の収支報告書から、M氏の長男の会社が販売しているミネラルウオーターを買った、総額約3万円の領収書が出てきた。首相とM氏の家族のつき合いは続いていたんです」(同前)

 華麗なる一族同士の “おつき合い” 。本誌は安倍事務所、ニューオータニ、そしてM氏の長男の会社に取材を申し入れたが、締切りまでに回答はなかった。

 安倍首相の任期は残すところ2年。「総裁四選」もこれで黄信号……と思いきや、「 “岸田総理・安倍幹事長” という奇策がある」とうそぶくのは、自民党の若手議員だ。いったいどういうことなのか。

「メドベージェフ氏に大統領をまかせて一度首相に降り、再びロシア大統領に返り咲いた、プーチン氏と同じことをやろうとしているんです。

 安倍首相は、宿願の憲法改正について、『あと5、6年はかかる』とこぼしている。ハト派の岸田文雄政調会長に、首相を禅譲して、野党と改憲議論を成熟させる。自分は幹事長として “院政” を敷き、その後、首相に返り咲いて改憲を成し遂げるという段取り。『ロシア式』なんて、党内で言われだしています」(与党担当記者)

(週刊FLASH 2019年12月10日号)