ブレーキ関係のメンテナンスは命に関わる

 いまクルマのメンテナンスフリー化が進んでいて、定期的に交換したり、調整する部分は減っているが、残された数少ないポイントが油脂類の交換だろう。油脂といってもさまざまあるが、なかでも気が回らないことは多いのがブレーキフルードの交換。

 基本的には車検時に交換されるので問題ないのだが、修理工場のスタッフによると「予算がないから交換しなくてもいい。問題があったときに頼むから。そもそもここまで問題なく走って来れたんだから大丈夫」という人もいるとのこと。

 ブレーキは命に関わるだけに、もちろんそれではダメ。不具合が感じられなかったり、またある程度劣化していても一応ブレーキは利くことが多いので、意識はあまり向かないのかもしれない。しかし放置すると大変なことになってしまう。

費用がかかるだけでなく止まらなくなってしまう危険も!

 ブレーキは基本的に油圧で作動していて、ペダルを踏むと、各車輪のピストンが動いてブレーキを作動させる。ふたつの注射器をホースで結んで内部に液体を入れ、注射器の一方のピストンを押すともう一方はピストンが出てくるのと同じ仕組みと考えていい。

 その力を伝達させるために内部に満たされた液体がブレーキフルードであり、特徴は吸湿性が高いということ。つまり乗らずに放置していても劣化していくわけで、タッチがソフトになってフィーリングが悪化。また、湿気が含まれると沸騰しやすくなり、ハードブレーキを繰り返すと内部に泡が発生しやすくなる。これは教習所でも習うペーパーロックと呼ばれる症状だ。

 泡が内部にできると力が伝達されなくなり、最悪の場合、ブレーキが利かなくなってしまう。峠道で見かける、緊急の停止路はペーパーロックが発生したときのために設置されているものだ。さすがに最近のクルマはそこまではならないだろうと思うかもしれないが、ブレーキばかりに頼って走ると意外と簡単に起こるので、注意が必要だ。

 ペーパーロック以外では、ブレーキシステムの劣化促進がある。吸湿性が高いということは内部に水分が含まれているということでもあり、腐食が進んでしまうのだ。具体的にはピストンの固着が多く、もちろんそうなると利かなくなってしまう。すべてが一度に起こることはあまりなく、どこかの車輪ひとつが利かなくなって、片利き状態になるので、これはこれで危険だ。

 簡単なものであればオーバーホールで元に戻るが、ピストンに虫食い状のサビ穴ができている場合などは交換しかなく、費用もかかってしまう。結局はマメにメンテナンスしていれば安上がりたったということもなるだけに、車検毎でいいので交換するようにしたい。