[画像] オラクル幹部が語る「Oracle OpenWorld 2019」の注目の新発表とは?

●データ・マネジメントやクラウド基盤の進化を発表

米オラクルは2019年9月16日から19日の3日間、年次イベント「Oracle OpenWorld 2019」を米国サンフランシスコで開催した。「Oracle OpenWorld」は、毎年オラクルの戦略をお客様、パートナー様、デベロッパーの皆さんにお伝えする場となっている。今年のイベントに参加し、まず感じたことは会場装飾や造形の「変化」だ。毎年開催中は、会場近辺が赤で埋めつくされていたところ、今年は違っていたのだ。

オラクルはユーザー・エクスペリエンス(UX)の刷新に取り組んでおり、「Oracle OpenWorld 2019」ではその取り組みについても発表された。具体的には、お客様志向のコンセプトをもとに、ブランディング、クラウド・サービスにおけるユーザー・インタフェース(UI)など、オラクルに関わるすべてのUXを、アースカラーを基調としたアートワークとユーザー・フレンドリーなUIで実現していく。今年のイベントの装飾もこの新たなUXで展開されており、新たなお客様志向の思いを目で感じることができた。

この変化と連動し、会期中の数多くの発表や経営陣や開発陣による基調講演では、オラクルのクラウド戦略においても明確にお客様志向への注力を示していた。

オラクルがミッションとして掲げているのは「人々が、新たな方法でデータを捉え、知見を導き出し、そして、無限の可能性を得ること」、つまりすべてのお客様、デベロッパー、エンドユーザーの方々が、データを利活用し、その可能性を無限に広げていけるようなテクノロジーやサービスを提供していくということだ。

私が担当する「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」やデータベース、プラットフォームの分野では、エンタープライズのお客様が求めるセキュリティ、パフォーマンスに優れたインフラやデータベース・テクノロジーの進化に加え、お客様が求める多くの選択肢を実現するエコシステムに関する発表を行った。また、SaaSの分野でも「OCI」、「Autonomous Database」を含む「Gen 2 Cloud」での連携によるデータ・ドリブンなアプローチを紹介した。

○データ利活用、その先のイノベーションを支援するサービスへ

今回、注目すべきポイントの1つは、データ・マネジメントやクラウド基盤の進化である。「Oracle Database 20c」、自律型データベースである「Oracle Autonomous Database」の機能拡張、その実行基盤でもある「Oracle Exadata」の最新モデル、「Oracle Data Safe」でのデータベースセキュリティなどが発表された。

また「OCI」では、「Elastic Instance」などのコアサービスのさらなる強化、「API Gateway」、「Functions Service」などのクラウド・ネイティブ・サービスの拡充および機能強化、RDMA対応のGPUへの拡張など、エンタープライズからデベロッパーまで幅広いワークロードを意識した強化が発表された。

「OCI」は、コンセプトの段階からセキュリティを強く意識したアーキテクチャとなっているが、今回、「Oracle Autonomous Linux」「Oracle Guard」「Oracle Maximum Security Zone」といったセキュリティの一元管理や自動化機能などのセキュリティ強化も発表された。

お客様のあらゆるデータを管理するオラクルのデータ・マネジメントのビジョン実現に向けてまた一歩前進し、エンタープライズ・グレードのクラウド・インフラストラクチャをさらに進化させたと言えよう。

「Oracle Cloud」においては、提供するリージョン拡大に向けて積極的に取り組む。現在は東京を含めた世界16のリージョンで展開しているが、今後15カ月で20リージョンを新規に開設する予定である。また、11の国または地域で、2つ以上のリージョンを提供する予定であり、日本では東京に加え大阪でサービスを提供する。これにより、日本のお客様が求める業務継続性(BCP)要件にも応えられる。

また、「Oracle Cloud」をお客様のデータセンターに配置できる「Oracle Cloud at Customer」において、「Gen 2 Exadata Cloud at Customer」も発表した。このサービスでは、最新モデルである「Oracle Exadata X8」が採用されていることに加え、基盤もパブリック・クラウドの「OCI」と同様に第2世代(Gen 2)に進化している。これにより、パブリック・クラウドとオンプレミスの連携を「Gen 2 Cloud」でもシームレスに実現できるようになったほか、オンプレミスからクラウドへの移行を考える上でも有効なツールとなっている。ぜひ積極的に活用していただきたい。

○SaaSも「Gen 2 Cloud」から提供

オラクルは、IaaS、PaaS、SaaS、Data as a Serviceとフルスタックのクラウド・サービスを展開する唯一のベンダーだと自負している。今年8月に東京で開催した「Modern Cloud Day Tokyo」では、SaaSも東京、大阪リージョンから提供開始となることをお伝えした。それは、「Gen 2 Cloud」はSaaSも含むことを意味しており、「OCI」や「Autonomous Database」とのさらなる連携によるメリットを提供する。

例えば、「Oracle Analytics for Applications」は、「Autonomous Database」をシステム基盤としたSaaS向けのデータ分析基盤であり、SaaS内のデータだけでなく他の自社データや第三者データを取り込み分析、活用することが可能となる。データの活用は、これまで推進してきたAIや機械学習の組み込みの強化とも連動する。ユーザーであるCxOの意思決定のために必要なデータ分析や情報整理を、AIや機械学習で支援していく。

また、冒頭でも触れたとおり、アプリケーションのUXを刷新し、より直感的なUI、SNS、デジタルアシスタントなどのコミュニケーション機能などスイート全般で組みこみ、エンドユーザーが仕事をするのが楽しくなるようなUXの提供を目指している。

●Microsoft、VMwareともクラウド分野で連携

○お客様の選択肢を広げるオープンなエコシステムへ

そして、「Oracle OpenWorld 2019」で新たなクラウド戦略が最も顕著に表されていたのが、さまざまなクラウド・サービス・ベンダーとの連携強化だ。

前述したように、オラクルはデータ・マネジメント基盤に強みを持っているが、他社のクラウド・サービスにもそれぞれの強みがあり、すでに各社のサービスを利用している企業も多い。このため、既存の投資を維持しながら、常に最適なクラウド・サービスを利用していきたいと考えるお客様は数多い。

こうしたマルチクラウドのニーズに対応したのが、今年6月に北米で開始しているMicrosoft Azureとの相互接続だ。「Oracle OpenWorld 2019」 では、このMicrosoft Azureと「Oracle Cloud」の連携をアジア・パシフィックでも展開することが明言された。

また、VMwareとの連携による、VMware環境を「OCI」上で利用できる「Oracle Cloud VMware Solution」では、ハイブリッド・クラウドのニーズに対応する。この連携の背景には、お客様の多くの基幹システムがオンプレミスのVMware上で稼働している現状がある。

これらをクラウドに移行する時、いきなりクラウド特有の機能やサービスを使うのではなく、既存のシステムをそのままクラウドに移行することができるほうがお客様にとってはクラウド移行の障壁が低い。「OCI」とVMwareの連携では、オンプレミス、「Oracle Cloud」の環境間でのVMwareワークロードの移行をシームレスに行い、VMware vCenterから一元管理も可能となる。VMwareとの連携により、お客様のVMware上のIT資産を生きかしつつ、クラウド移行の負担も軽減できる。

さらに、「Oracle Cloud Marketplace」では、さまざまなサービスが拡充され、利便性を向上している。「OCI」のユーザーは、「Oracle Cloud Marketplace」から自社のシステムに必要なサービスを利用する際、各社と既存ライセンス契約を持ち込む形で利用している。今後、「Oracle Cloud Marketplace」から「Oracle Cloud」のUniversal Cloud Creditsで直接購入、利用できるようになり、「Oracle Cloud」上で新規でサービスを利用するお客様にとっては、ワンステップでサービス利用が可能になる。

○最適な環境提案のカギは販売パートナーとの連携

今後、Microsoft Azureとの連携や「Oracle Cloud VMware Solution」の提供、「Gen 2 Exadata at Customer」などさまざまな方法でクラウド移行が可能となると、これまで日本でクラウド移行の進まなかった基幹システムのクラウド移行が本格化するだろう。

選択肢が増える一方で、最適なクラウド移行の方法をお客様が判断することはより難しくなるかもしれない。そのベストプラクティスを熟知しているのは、パートナーの皆さんだ。われわれも知見を持った多くのパートナーの方々と連携し、一緒になってベストプラクティスを作り出し、お客様に展開することがこれまで以上に重要になってくる。

また、オラクル自体もこれまで以上にお客様との接点を増やし、パートナー各社と連携し、お客様にベストなカスタマー・エクスペリエンスを提供していきたいと考えている。

以上、「Oracle OpenWorld 2019」のハイライトを紹介した。「Oracle OpenWorld 2019」で発表した新たなサービスや取り組みにより、「Oracle Cloud」はエンタープライズ用途に最適なクラウド・サービスとしてさらに進化を遂げている。私が現地で直感的に感じた「変化」は、これまで日本のお客様と接してきて必要だと思っていたことが多く実現された形で、お客様を中心としたオープンなクラウド戦略として明確になった。

オラクルはベンダーとしてマルチクラウド、ハイブリッド・クラウド、外部データとの連携、オープンソースへの対応など、お客様が自社に最適な方法でデータの活用、その先のイノベーションをすすめる上で多くの選択肢を提供するオープンな戦略へと舵を切っている。

日本のお客様における「Oracle Cloud」への期待は大きく、東京リージョンでは開設以来、急速な勢いで利用量が増加している。イベント会期中に開始した、デベロッパー、学生、企業といったすべてのお客様が「Oracle Cloud」を無期限に無償で利用できる「Oracle Cloud Free Tier」も、すでに多くの日本のユーザーに登録していただいている。

オラクルのオープンな戦略の対象は、企業のお客様やエコシステムだけではない。デベロッパー、学生の皆さんにも、「OCI」や「Autonomous Database」をまず試してみて、その良さを知っていただきたい。その体験によって、今後日本でのユーザー・コミュニティが広がっていくことにも期待したい。

発表された主な施策の日本での展開はまだこれからであるが、現地でお話した日本のお客様やパートナー様からの期待は大きい。われわれも、日本市場での展開を、日本のお客様のニーズに沿った形で展開していくため、尽力していく。これからの「Oracle Cloud」に、ぜひ注目していただきたい。

著者プロフィール

○竹爪 慎治

日本オラクル 執行役員 プラットフォーム事業統括

日本オラクル株式会社 執行役員 クラウド事業戦略統括。国内大手SIerを経て、2000年日本オラクル入社。コンサルティング、新規事業開発、営業などを経て、2016年7月から現職