日本の航空会社でもよく目にするボーイング737シリーズは、尾翼や前脚も特徴的ですが、離陸後の機体を見ると主脚のドアがなく「むき出し」なのもポイント。同機の誕生背景を考えると、このほうが望ましく、効率的だったりします。

離陸したボーイング737を見上げると…

 JAL(日本航空)やANA(全日空)をはじめ、国内各社で使われているボーイング737シリーズは、1967(昭和42)年に初飛行。50年以上の歴史があり、2018年には製造機数が1万を突破するなど、ボーイング社としてだけでなく、旅客機としてもトップの製造機数です。時代に応じて機体仕様は変更されているものの、基本設計は変わりません。


成田空港を離陸するJALのボーイング737-800型機(2019年5月、伊藤真悟撮影)。

 このボーイング737シリーズ、空港の展望デッキからは分かりづらいですが、実は胴体中央にある主脚(メインギア)の格納部にドアがないことが大きな特徴です。離陸して車輪が格納されたボーイング737型機を下から見ると、タイヤが「むき出し」の状態になっています。

ドアで覆うのが一般的な現代の飛行機


主脚を格納し、ドアを閉める途中のタイ国際航空エアバスA330型機(2019年5月、伊藤真悟撮影)。

 現代の飛行機はメインギア部分にドアを持ち、格納時にそれを閉じるのが一般的ですが、なぜボーイング737シリーズはこのような方式なのでしょうか。

 これには当初、短距離を運航する現代の「リージョナルジェット」に似た目的で開発された同シリーズの経緯が関わっています。

短距離離着陸性能に貢献 「天然のクーラー」効果も

 ドアがない理由のひとつは、重量の削減。ドアや関連する装置を取り払えれば、そのぶん機体が軽くなります。そして軽いほど離陸滑走距離が短くて済み、滑走路が短い地方空港にも就航できます。ボーイング737-800型機は、1660mで離陸可能だそうです。

 もうひとつは、外気を使って装置全体を冷やすため。水平飛行中の外気は、マイナス50度になることもあります。数十トン(ボーイング737-800型機の最大離陸重量は約70トン)の機体が200〜300km/h程度で離着陸すると、メインギアには大きな摩擦熱が発生。それを冷やすため、飛行中の外気を「天然のクーラー」として使うのです。

 当初、短距離用に開発された737シリーズは、水平飛行の時間も、ほかの飛行機より短めを想定。長距離飛行ではドア越しにゆっくり冷却可能ですが、短距離の場合は、外気に直接さらしたほうが効率的です。


ANAのボーイング737-500型機の主脚部分(2019年9月、乗りものニュース編集部撮影)。

 なお「むき出し」の主脚は、ドアがある場合とくらべて、飛行中の空気抵抗が増えることがデメリットです。ドアがないため車輪格納部分に凹凸(おうとつ)ができ、空気の流れが乱れます。

 737シリーズは短距離飛行用として開発された経緯からこの構造を採用していますが、多くの旅客機は、飛行中の空気抵抗を下げることを優先するため、ドアをつけるのが一般的です。

 ちなみに、この「むき出し」の主脚は、短距離運航を想定した現代のリージョナルジェットでも見られる仕様。たとえばJALグループのJ-AIRでも就航しているエンブラエル(ブラジル)のE170型機、E190型機、三菱航空機が制作中の「スペースジェット」などで採用されています。