突然だが、皆さんはどちらのクリームソーダを飲みたいと思うだろうか。


向かって左が盛り付け変更前、右が変更後(画像はうのまち珈琲店提供)

実はこれ、両方とも岡山と奈良に店を構えるカフェ「うのまち珈琲店」のクリームソーダだ。

左が過去に販売していたもの、右が現在販売しているものだ。以前のデザインも爽快感があっておいしそうだが、盛り付け方を変えた後は、鮮やかな青と透明なソーダのコントラストが美しい、より魅力的なデザインとなっている。

うのまち珈琲店のオーナー・小田墾(つとむ)さん(33)は、2019年9月4日、

「クリームソーダの盛り付けを変えただけで前年比500%って話」

と自身のツイッターで投稿。10日15時時点で2万4000件超のリツイートを獲得するなど、大きな反響を呼んだ。

クリームソーダはどのようにしてこのような変貌を遂げたのか。Jタウンネットは9月9日、小田さんに話を聞いた。

SNSで「映え」を研究

小田さんによれば、投稿にあった「前年比500%」というのは岡山店におけるクリームソーダの注文数のこと。店の看板商品というわけではなく、あまり目立っていなかったメニューだけに驚きは大きかったようだ。

見た目が変わった大きな要因の一つにグラスの変更がある。

「うのまち珈琲店」のロゴとカモメの絵が入ったパフェ用のグラスに変えたが、以前はグラスに限りがあることから提供が難しかった。18年12月に奈良店をオープンするときにグラスを多めに作ったことがデザイン変更のきっかけだ。飲み物自体も青と透明のグラデーションがなるべく残るようにし、印象を大きく変えた。

提供時は素敵な盛り付けだと思っていても、SNSに投稿された写真をみると「ちょっと違うな」と感じることがあると小田さんは話す参考にしたのは、エゴサーチをしながら気づいた、作り手による「クセ」だ。

サクランボの位置や氷の入れ方、炭酸の注ぎ方など、大枠の作り方は同じでも多少の誤差が出ることをプラスに生かせないかと考えたという。

「他社でよくあるのがまずい物がないかというチェックなんですが、うちの場合は、なぜかそれが素敵に見えたり、なぜかこれは間抜けに見えたりするなどの傾向を蓄積していくために、エゴサーチをしています」

つまり、お客がSNSに投稿した写真を見ながら、盛り付けのブラッシュアップを続けているということだ。

こうして、アイスやサクランボの位置のほか、飲み物自体も青と透明のグラデーションがなるべく残るようにし、印象を大きく変えた。今ではクリームソーダを目当てにお店に来る人もいるといい、「旧デザインの頃はほとんどいなかったので驚いています」と、見た目が与える影響を肌で感じているようだ。

盛り付けで気を付けていることは?

盛り付けの変更はクリームソーダ以外のメニューでも随時行っており、看板商品のクレームブリュレの季節パフェもその一つ。材料はほとんど変わらないのに、いちごの置き方やクリームの入れ方でかなり印象が変わる。


左が盛り付け変更前、右が変更後(画像はうのまち珈琲店提供)

盛り付けに正解はないというが、いくつか言語化できるセオリーもできてきている。例えばパフェグラスは「うのまち」の文字が見えると綺麗、といったものがあるようだ。

SNSを意識した見栄えにこだわる小田さんだが、盛り付けを変えるにあたって気を付けている点はあるのだろうか。

「どんなに素敵なデザインでもめちゃくちゃ時間がかかるとかはだめで、ほかのメニューとの組み合わせとかも考えたうえで、スタッフがスムーズに提供できるもの。誰がやっても近しいものができる難易度ということが大前提にあります」

見た目は大事だが、もちろんそれだけではなく接客や店の雰囲気も重視している小田さん。こちらもまた、SNS等の口コミを見ながら常に改善を図っているそうだ。