国内仮想通貨業界の競争が激化している。

国内のIT大手が続々と参入しているほか、海外大手取引所も虎視眈々と国内市場を狙っており、さながら戦国時代の様相だ。

LINEが国内仮想通貨事業に参入

金融庁は2019年9月6日、LINEのグループ会社のLVC(本社:東京都)を改正資金決済法に基づく仮想通貨交換業者に認可登録した。

LINEは2018年7月、シンガポールを拠点に仮想通貨取引所「BITBOX」の運営を開始していたが、当時はライセンスがないことから日本と米国はサービス対象外となっていた。今回の認可登録で、日本国内のユーザーに対し、サービスを提供できるようになる。

同庁の資料によれば、取り扱う通貨は、BTC(ビットコイン)、ETH(イーサリアム)、BCH(ビットコインキャッシュ)、LTC(ライトコイン)、XRP(リップル)の5通貨だ。

差し当たりメジャーな通貨で、ユーザーの需要を喚起するようだ。

LINEが仮想通貨事業を展開するのは、18年8月に発表した「LINE Token Economy」構想に基づくものとみられる。同構想は、独自開発したブロックチェーンである「LINE Chain」を基盤にしたエコシステムを構築したうえで、そのシステム内で利用できる「LINE Point(日本国内向け)」と「LINK(海外向け)」の2つのトークン(※編注:ブロックチェーン技術を利用し、特定の主体者が発行する仮想通貨)を発行し、新たな経済圏を構築する狙いだ。

すでに後者のLINKはBITBOXにて上場しており、海外向けではあるが、金融庁の認可次第で今後、日本市場に上場する可能性も出てくる。LINEはキャッシュレスアプリ「LINE Pay」への販促費増大などで、2019年1〜6月期の連結決算の最終損益が266億円の赤字となるなど、財務的に余裕がある訳ではないが、LVCの事業をどう展開するか、注目が集まりそうだ。

LINEだけではない、市場でのシェア獲得を狙う企業

LINE以外の大手IT企業も市場参入を果たしている。

楽天グループの楽天ウォレットは19年8月19日、仮想通貨の現物取引サービスを開始した。顧客資産はインターネットと隔離したオフラインの環境下で管理する「コールドウォレット」で保管するなど、セキュリティ強化策を強みに事業を展開している。

ヤフー出資の仮想通貨取引所TAOTAOは同5月30日、サービスを開始。同取引所の荒川佳一朗CEOは7月3日、サービス開始から1カ月で預かり円資産が5億円を超え、1万人の顧客が預かり入れていることをブログサービス「note」上で述べるなど、順調に事業を進めている。

市場競争の激化を強いる要因は、国内企業だけではない。海外企業の参入も競争を加速させそうだ。

米大手仮想通貨取引所コインベースはすでに日本支社を開設し、19年内の仮想通貨交換業の認可取得を目指している。

コインベースのユーザー数は3000万人を超え、世界最大規模。8月には、ウォレットスタートアップ・ザポの仮想通貨カストディ(保管)事業を買収し、仮想通貨カストディアンとしても世界最大クラスとなっている。業界での影響力が大きく、日本市場においても一定のシェアを占めることが予想される。

2020年春を予定する仮想通貨関連法の改正を控え、各所で火花が散っている国内仮想通貨業界。同法では、ネット上で管理する顧客資産について、弁済費用の確保が義務付けられるなど、運用上の規制は厳しくなる。そうした中で、各取引所は増資や異業種との提携、取り扱い銘柄の追加などといった強化戦略を打てるかが重要となりそうだ。

(ライター 小村海)