20代が結婚相談所の利用に関心を高めている理由とは?(写真:ふじよ/PIXTA)

電車広告やテレビCMでも、以前と比べて「婚活サービス」の文字を目にする機会は増え、サービス提供会社の増加傾向も見られます。元来、結婚に第三者が介在する「婚活サービス」、いわゆる結婚相談所には「結婚相手を見つけるための最終手段」といった、どちらかというとネガティブなイメージがつきものでした。

ですが、現在その状況は変化しつつあり、より身近なサービスとして受け入れられるようになっています。その背景を、結婚を希望する人たちの意識や行動、取り巻く環境をデータを踏まえながら解説したいと思います。

ミレニアル世代注目の結婚手段はお見合い?

2016(平成28)年の内閣府による調べでは、年間婚姻件数は62万531組、婚姻率(人口1000人当たりの婚姻件数)は5.0%と過去最低を記録しています。2013(平成25)年版厚生労働白書によると、「人は結婚するのが当たり前だ」という結婚観は1984年61.9%だったのに対し、2008年には35%にまで減少しています。今、結婚は「する」「しない」を選択する時代になったといえます。

しかし、結婚を否定する人が増えたわけではありません。内閣府が2014(平成26)年に行った「結婚・家族形成に関する意識調査」では、20〜30代未婚者の77.7%が結婚を望むという結果が出ています。では彼らはどのように結婚への道をたどるのでしょう。

そこで注目したいのは、その手法です。時代をさかのぼると、50年前は「結婚」は家族と家族の結びつきの象徴とされ、家族やその周囲からの紹介「お見合い」で成立していました。その後は、女性の社会進出やバブル景気も追い風となって「恋愛結婚」が進んでいきました。まさにその流れを受けて「恋愛結婚」が主流の現代で、今は結婚への手法に変化が起きています。

リクルートブライダル総研が発表した「婚活実態調査2019」を見ると、2018年に結婚した方たちの中で、婚活サービス(結婚相談所、ネット系婚活サービス、婚活パーティ・イベント)を利用して結婚した人は約8人に1人でした。これは2000年以降、過去最高の数字となり、まさに手法として婚活サービスの利用が主流になって受け入れられていることがよくわかるのではないでしょうか。


ネット系婚活サービスの利用者が多い

また、婚活サービスごとの利用経験割合を見ると、最も割合が高いのは、ネット系婚活サービス、次いで婚活パーティー・イベント、最後は、結婚相談所でした。利用者のボリュームゾーンである20代・30代が、思春期からスマホとともに過ごし、SNSでのコミュニケーションが主流であることからアプリ・ネット系人気はうなずけます。

ですが、今回ご紹介したいトピックは、結婚相談所に入会する20代の割合がここ数年でじわりと高まっていることです。ゼクシィ縁結びエージェントの20代の会員割合は、2015年の20.7%から2018年には25.9%へ増加しています。彼らの祖父母・親世代で主流だった「お見合い」のように第三者が介入する婚活手段を、改めて選択しているのです。


結婚相談所に20代の関心が高まる背景について解説する前に、改めてサービスごとに普遍的な部分もありながら、顧客ニーズによって変わりゆく婚活の手段を紹介します。大きく分けると3つです。

1つ目は、元祖ともいえる結婚相談所。結婚を前提とした出会いから交際成立まで寄り添うサービスで、基本的には相談所へ出向き情報を提供してもらい、担当相談員のフォローのもと相手探しを進めます。

最近では、自らオンラインのシステム上でお相手検索をすることができるところもあり、紹介してもらうというよりは自ら積極的に探しにいく、という顧客がより便利に利用できるようなスタイルの変化もあります。ただ、一般的な認識では確実な出会いの一方で金銭的、心理的にも入会へのハードルを高く感じる人が多い手法かもしれません。

婚活イベントやネット系婚活サービスの実態

2つ目が、婚活イベントやパーティー。結婚相談所への入会手続きなどと比べて気軽に参加することができ、“会う”ことから始まる出会いの機会を得られるなどの理由から、今もニーズは衰えません。

3つ目がアプリ・ネット系婚活サービスです。スマホ普及率が75.1% [平成30(2018)年度情報通信白書(総務省)]となった今、いつでも情報にアクセスできる利便性は万人に受けています。

それに加えて、利用者の拡大につながったのはスマホとともに大人になった20代・30代の婚活市場への流入です。免許証など身分証明書を登録しないと使えないなど、より安心・安全に利用できるような対策も進み、一層身近で使いやすくなっています。

今、そんなアプリ・ネット系サービスと、これまではハードルが高く、婚活の最後の手段と思われてきた結婚相談所も、より気軽に利用できるなど境目がなくなりつつあります。そして、その動きとともに20代の利用者も結婚相談所に増加しているのです。

20代が結婚相談所にも目を向け始めた背景として、企業努力の側面はもちろんですが、今の20代が時代の流れを背景に形成した価値観が影響していると考えています。

「ゆとり世代」「さとり世代」と言われる20代ですが、彼らが生まれた時代はバブル崩壊前後、直後には阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件。物心ついた頃には、リーマンショックに東日本大震災と、非常に不安定な出来事が多い時代でした。そのような中で次第に、身の丈・調和を大事にするという共通の価値観が生まれていったと考えられます。


また、デジタルネイティブの世代がゆえに、SNSでの自己表現に違和感がなく、オンライン上で複数の自分を持ちながら喜怒哀楽を表現できるオープンコミュニケーションができるという共通点があるように思います。

そんな彼らが、アプリ・ネット系婚活サービスに親和性が高いのは当然ですが、結婚相談所は、彼らから「合理的な手段」として支持されています。結婚相談所の最大の特徴といえば、顧客一人ひとりにつく相談員の存在ですが、定着していたのは「とにかく結婚とお見合いを勧められる」といった、やや強引な指導者イメージ。ですが今その状況は変わりつつあります。

ジムトレーナー的な距離感

お相手探しは自らシステム上から気軽に行えるようになり、担当相談員はジムトレーナーのように隣で伴走してくれる存在になっています。また、結婚相談所の場合、独身証明書の提出が義務付けられていることが一般的で、お相手は独身であることが証明されています。

例えば、ゼクシィ縁結びエージェントの場合、相談を請け負うコーディネーターの年齢は20〜30代。各利用者に専任者が付き、利用者に近い目線で本人も気づくことのない望みや実際の希望条件を整理し、マッチングをフォローします。実際のやり取りは当人同士で行いますが、デートに至るまでのやりとりや場所の候補、服装へのアドバイスほか、デート後はもちろん交際成立後も相談に乗ってくれますし、お断りのやり取りも引き受けています。

気持ちを通わせるうえで生じる痛みや不安は出会いにつきものですが、身の丈・同調を大切にする20代が避けたいポイントを、うまくコーディネーターがフォローしてくれます。

つまり、現在の結婚相談所は、ネット婚活サービスのように自分でお相手を探すことができる気軽さと、従来の結婚相談所のように伴走してくれる担当者と、そして独身証明書という安心感が融合されたといっても過言ではないでしょう。結婚したいと思う20代の男女が、一手段として自然に選択するのも納得です。

婚姻組数の低下の一方、結婚したいと思う人は77%いる世の中で、婚活市場は、今後も拡大していくことが予測できます。その中で、利用者のボリュームゾーンとなる、ミレニアル世代の価値観を捉えながらサービスのあり方を変えていくことが、選ばれるサービスのカギなのではないでしょうか。

また、オンラインでの自己表現を当たり前としながらも、コミュニケーションに対し繊細な感覚を持ち合わせる彼らのニーズに応えていく先には、手法がさらに増え、利用者が合理的に自分にフィットする手段を選び取ることができる、まさに婚活ビュッフェのような市場が待っているのかもしれません。