東大生は、「頑張って」「耐えて」集中していたりはしません。マネするだけでいっきに集中力を高められる3つのテクニックをご紹介します(写真:cba/PIXTA)

偏差値35から奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏。そんな彼にとって、東大入試最大の壁は「全科目記述式」という試験形式だったそうです。

「もともと、作文は『大嫌い』で『大の苦手』でした。でも、東大生がみんなやっている書き方に気づいた途端、『大好き』で『大の得意』になり、東大にも合格することができました」

「誰にでも伝わる文章がスラスラ書けるうえに、頭もよくなる作文術」を『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文』にまとめた西岡氏の近著『東大集中力』から、「東大生の集中力の高め方」を解説します。

受験勉強にいちばん重要な能力は?

「受験勉強において一番重要だと思う能力はなんですか?」

こう聞かれた時に、みなさんはどう答えますか? 受験勉強を耐え忍ぶ忍耐力? それとも受験のスケジュールを想定する計画力?


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実は東大生の6割が、この質問に対して「集中力」と答えました。6割という数字は、他の大学生と比べても高い数字です。この結果から、東大生が東大生になれたのは、その集中力によるところが大きいと考えることができそうです。

確かに東大の学内にいると、少し前までおしゃべりしていた友達が数秒後にはもう周りの音も聞こえないくらいに集中していたり、騒がしかった教室が、教授が問題を出した途端にシーンと静かになってみんな一斉に問題を解いたりと、「東大生は集中力が優れているんだなあ」と感じる瞬間によく出合います。

また、東大生はダラダラ勉強したり時間を無駄にすることを極端に嫌う人が多く、試験勉強もレポートも会議も何もかも、短い時間で集中して終わらせようという意識で臨む人が多いです。集中力が優れているからこそ、東大生は結果を出すことができるのです。

今日は、彼ら彼女らの集中力の源泉となっている3つのテクニックを皆さんにご紹介したいと思います。元偏差値35で2浪、もともと集中力なんてかけらもなかった僕でも、マネするだけでいっきに集中力を高められた効果バツグンの方法です。ぜひ参考にしてみてください!

最初のテクニックは、「目的を1つに定める」です。

集中テクニック1:目的を1つに定める

集中=忍耐力ではない

初めにはっきり言っておかなければならないのですが、「集中」というのは苦しい労働に耐えたり、辛いことを耐え忍んだりすることではありません。つらい思いをしている状態では絶対に集中することなんてできません。「忍耐力」を「集中力」と履き違えてはいけないのです。

「集中≠忍耐」ということをわかっていないと、集中なんてできっこありません。

例えば僕は昔、「頑張って集中しよう!」「無理してでも勉強しないと!」と、身体的に無理をしながら集中しようと心がけたり、精神的に嫌々ながら集中しようとしたりして挫折してしまいました。そうやって、強いて集中しようとしているうちは集中などできないと気づけなかったのです。

みなさんも経験あるかもしれませんが、自分が「集中したなあ」って感じるときって、だいたい後から気づくパターンが多いですよね? 強いてそうなっていたわけではなく、意識せず、自然と集中していたことのほうが多いはずです。

東大生は、「頑張って」「耐えて」集中していたりはしません。

集中するには「目的の明確化」が不可欠

では東大生がどういう集中をしているかというと、「目的がはっきりした」集中です。どんな場合でも、ダラダラ時間を浪費してしまうことがないように、自分が今どんな目的のために行動しているのか、はっきり意識しながら行動するのです。

例えば、本を読むときの目的って何だと思いますか?

これは人によってさまざまですが、「その分野の知識を得る」という人もいれば、「本で得た知識を活用できるようにする」かもしれません。あるいは難しい本や初習の内容であれば「大ざっぱな流れを理解する」かもしれません。実は「本を読む」という行為だけに絞っても、いろんな目的があるのです。

自分がどういう目的で本を読んでいるかをしっかり考えたうえで本を読んでいる人はまれかもしれません。僕も以前は、本を読むときにはただ「読もう」としているだけで、そこに目的なんてありませんでした。

しかしそれは、「自分が何をするべきか」が見えておらず、「何がクリアできれば目標を達成できるのか」がわかっていない状態にほかなりません。それでは初めから集中なんてできっこないのです。

先程列挙したように、本を読むときには多くの目的がありえます。普通の状態だと、そのうちどれが大切な目的なのか、優先順位がついていない状況なわけです。複数の目的のうち、今の自分にとってどれが大事でどれを達成したいのかがはっきりしていないと、何に集中すればいいのかわからないのです。

「集中というのは、切り捨てることだと思う」とは、僕の友人の東大生の言葉なのですが、まさにそのとおり。いろんな目的が存在する中で、何を優先してどれを先に終わらせるのか、逆に自分が集中しなくていい目的は何なのかをしっかり把握することこそが重要なのです(これについて詳しく知りたい人は、僕と『ドラゴン桜』の桜木先生が話しているこの動画をチェックしてみてください!)。

目的を1つ定めて、優先順位をつけること。これが重要なのです。

集中テクニック2:アウトプットを目的にする

さて、次は「アウトプットを増やす」というテクニックです。実は人は、何かを読んだり誰かの話を聞くといった「インプット」よりも、問題を解いたりする「アウトプット」のほうが集中できるものです。

例えば、みなさんにとって、どちらが集中できることですか?

・数学の教科書を読む
・数学の問題を解く

当たり前ですが、教科書を読むよりも問題を解くほうが集中できるという人が多いと思います。人間は、インプットよりもアウトプットのほうが集中しやすいのです。

理由1:目的がわかりやすい

これはなぜかというと、アウトプットのほうが「目的がわかりやすい」からです。インプットするときは、何に注目して本を読むか、何にエネルギーを注ぎながら人の話を聞くのかを明確にするのがかなり難しいと思います。

しかし、「読んだ内容をノートにまとめる」とか「人の話を後から振り返れるようにメモを取る」というアウトプットを用意しておいたらどうなるでしょうか? 目的が明確ですよね? 問題を解くときも同じく目的が明確になっているので、集中しやすいのです。

理由2:アウトプットは形に残る

また、アウトプットというのは形に残ります。例えば「本を読む」とか「人の話を聞く」というのは、いくらやっても「これだけやった!」という成果がわかりにくいですよね。「読んだ」「聞いた」というのは、何かができるようになるというわけでもないですし、終わった後に「これだけできたぞ!」という結果が形として残るわけでもありません。

一方、問題を解いたとか、ノートにまとめるとか、そういうアウトプットは「これだけの問題数を解いた!」みたいなものがわかりやすく目の前に残り続けます

勉強でも仕事でも、努力が形として残るほうが集中しやすいです。「勉強してる!」「仕事してる!」という感覚が生まれて、次へ次へとどんどん進んでいけるからです。

ちなみに、東大生に「いちばん集中できる科目はなに?」とアンケートを取ったところ、いちばん多い回答は数学でした。文系理系問わず、数学は集中しやすい科目として認知されているのです。

その理由はきっと、数学はアウトプット前提の科目だからだと思います。数学の成績を上げようと思ったとき、教科書を読んだり先生の話を一生懸命聞くよりも、まずは問題を「解こう」とすることが多いです。インプットが多い科目よりアウトプットが多い科目のほうが集中しやすいのです。

「脳科学的に正しい」勉強法

「アウトプットが集中しやすい」のは脳科学的にも正しい

インプットよりも、アウトプットのほうが集中に向いているというのは、脳科学的にも証明されていることだそうです。

例えば何かを覚えたいとき、理解したいときに、ペンも何も持たずに、ノートもメモも取らずに頭の中だけで考えて覚えられる人はなかなかいません。これは、頭の中だけで考えている状態が、「五感」を活用していないからです。

逆に、アウトプットをするということは、ペンを持つ「触覚」、ノートに書いた文字を目で追う「視覚」、自分で口に出した声を聞く「聴覚」と、五感のうち3つを活用することになります。そして、五感を多く使ったほうが、がぜん集中しやすいのです。

昔からよく「何かを覚えるときには口に出して、書いて覚えるといい」といわれることがあります。みなさんも聞いたことありますよね? 実はあれ、「口に出して書けば覚えられるようになる」ということ以上の意味があるんです。

「口に出して書く」という行為は「アウトプット」であり、五感のうち3つを使う行為です。そして、そういういろんな感覚を使っている行為のほうが、「実践している」という感覚があります。「見る」よりも「書く」という行為のほうが「アウトプットしている」という感覚が付き、その結果「集中できる」のです。

なぜ口に出して書くと覚えられるのかといえば、単純に「そのほうが集中できるから」にほかならないのです。

アウトプットを増やすことで勉強に集中できる

「アウトプットが集中に効く」ということをご理解いただけたでしょうか? これを踏まえて東大生たちがやっている「集中を継続させるための勉強法」が、「インプット」を減らして「アウトプット」を増やすやり方です。

例えば、「教科書を読む」「授業を聞く」というやり方に重きを置くのではなく、「問題を解く」「人に説明する」というやり方の比重を増やしてみることで、より集中して勉強することができます。

また、「文章の中でキーワードになっているものを探す」ことで、重要な言葉がどれなのかを読みながら探すという能動的なアウトプットに変換できます。「この人が言いたいことって、一言で言うとどういうことなんだろう?」と読みながら考えてみる。これは能動的な行為であり、そういう問題を解いているのと同じ、すなわちアウトプットです。ぜひやってみましょう。

または、「まとめノートを作る」「ミスしやすいポイント集を作る」のもオススメです。次にその分野を勉強する人のためのノートや、次にその仕事をする人のためにミスしやすいところをまとめたノートなどを作ってみるのです。単純な作業や退屈な勉強でも、自分なりのアウトプットを作ることができるこの作業をすると、集中することができます。

集中テクニック3:目標に数字を入れる

3つめのテクニックは「目標に数字を入れる」です。先ほど僕は「目標を1つ決める」という話をしましたが、その目標の中に「数字」を入れることで、より集中しやすくなるのです。

「次のテストで80点取る!」「この本を30ページ読む!」というように、目標に1つだけでいいので数を入れて、設定するのです。

例えば、僕はこんな集中力の実験をしたことがあります。

ほとんど同じレベルの学力の子2人に協力してもらい、1人には「次のテストでいい点が取れるように頑張ろうね」と言いました。もう片方の子には「次のテストで、80点が取れるように頑張ろうね」と言いました。

結果は、前者が58点で後者が76点でした。結局後者も80点には到達できなかったのですが、しかし結果として「いい点」を取ろうと頑張っていた子よりも点数を獲得することができたというわけです。

これは、「目標を数字で明確に設定したほうが集中できる」ことを表していると思います。

80点を取ろうとしていた子に聞いたところ、「80点を取るために、100点満点のうち20点分は落としてよくて、その分点数を取らなければならないところに集中して勉強した」と語っていました。逆に「いい点数」という漠然とした目標を持っていた子は、「満遍なく点数を取るために、広く勉強していた」と語っていました。

この2人の集中度を考えると、きっと「ここで点を取ればいける!」と具体的な目標が見えていたほうが集中できていたのだと思います。だからこそ、結果として80点に到達しないまでも、いい点数が取れたのではないでしょうか。

これは別に勉強に限った話ではありません

「今日はタスクをたくさんこなそう」ではなく「今日は5個タスクをこなそう」と考えたり、「この本を早めに読み終えよう」ではなく「この本を3日で読み終えよう」と考える。そうすると、結果的には5個は全うできなくても、3日では読み終わらなくても、そういう数値的な目標設定をしないときに比べて格段に集中していい結果を得ることができます。

数字があると、物事はより具体的になります。「たくさん」では抽象的すぎて、3個でも6個でも12個でもよくなってしまいますよね。しかし「5個」と決めて、その数字のために頑張れば、目標が明確なのでその分「今は4個。あと1個頑張ろう!」なんて具合に、目的がブレずに集中しやすくなるのです。


だからオススメなのは、「目標の中に1つ、数字を入れること」。3ページでも5問でも12タスクでも、3日でも1年でも、数字が1つ入るだけで、格段に集中しやすくなるはずです。それを取りあえず1つ選ぶことで、より取り組みやすくなるのです。

いかがでしょうか? 無理したり、嫌々ながら集中するのではなく、きちんとやるべきこと・目標をしっかり定め、アウトプットを意識して、数字を入れることで目的を具体化する

この3つのテクニックを使えば、みなさんもより集中できるようになるはずです。ぜひやってみてください!