2016年に出演したドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が社会現象を巻き起こし、主題歌『恋』は200万枚を超える大ヒット。2018年にはアルバム『POP VIRUS』をリリースし、その後の5大都市を巡るドームツアーでは計33万人を動員した。

音楽家、俳優に加え、文筆家としての顔も見せるなどさまざまな肩書きを持つ星野 源。8月30日には、6年ぶりの主演映画『引っ越し大名!』が公開される。芸能界に足を踏み入れて以降、長い下積み時代を経験してきたが、現在は多忙を極める彼の、多彩な活動を支える原動力を探った。

撮影/祭貴義道 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.

好きなものにだけ囲まれていたいのは、自分も同じ

星野さんが本作で演じられたのは、書庫に閉じこもって本を読んでばかりいる引きこもりの侍・片桐春之介。彼に共感するところはありましたか?
自分の好きなものや趣味がしっかりあって、それ以外のことはあまりしたくないのは、僕とすごく似ていると思います。僕もつねに好きなものに囲まれていたいので(笑)。
春之介は引きこもっていることを揶揄する相手に「体面を気にせず普通にしているだけです」と言いますが、そこにも共感を?
春之介が生きているのが江戸時代であることを考えると、おそらく彼の生き方は普通ではないんでしょうね。でも、どんな人だって身分は関係なく一緒でしょ、というスタンスにはシンパシーを感じました。
本作は時代劇ですが、改めてオファーを受けたときのお気持ちは?
以前、NHK大河ドラマの『真田丸』に出演させていただいたときは、徳川第2代将軍となる徳川秀忠役だったので、所作や着物の着方もちゃんとしなければならず、甲冑を着るシーンもあって、時代劇はとにかく大変という印象がありました。

しばらくはやらなくていいかなと思っていたんですけど、そこから間を空けずに今回の依頼をいただいて(笑)。
そうなんですね(笑)。
だから「これは大変だ」と思ったんですけど、脚本を読んでみたら、偉い立場にある侍が「ギャー!」と叫ぶシーンがあって、そのセリフがカタカナで書かれていたんですね。

今回、原作者の土橋章宏さんが脚本も手がけられているんですけど、土橋さんがそう書かれているのであれば、これは時代劇というよりも喜劇に重きが置かれているのかなと。これはおもしろそうだと思って、参加させていただくことに決めました。
本作での所作はいかがでしたか?
最低限のところは教えていただきましたけど、春之介は予想以上にちゃんとしておらず、社会からドロップアウトしている人なので。着物もぐちゃぐちゃですし、休憩中も衣装のまま寝ていても問題なくて、すごく楽でした(笑)。

所作をちゃんとしすぎてしまうと春之介ではなくなってしまうので、現代劇に近い感覚で演じたほうがいいんだろうなとは思っていました。

“いっちゃん”はすごくストイックで、見ていて気持ちがいい

春之介の幼なじみで武芸の達人である、鷹村源右衛門を演じた高橋一生さんとは久しぶりの共演だったそうですね。
いっちゃんとは10年以上前に舞台(2005年の『アイスクリームマン』)で共演して、それ以来です。
高橋さんのことを“いっちゃん”と呼ばれているんですね。
その舞台のときにいっちゃんと呼んでいて、それが今も続いている感じですね。
ひさびさの共演ということで、感慨深さもあったのではないでしょうか?
本当に久しぶりだったので、感慨深いというよりも、また一緒に仕事ができてうれしいなという気持ちのほうが強かったです。
では、今回の共演で改めて感じた“俳優・高橋一生”の魅力を教えてください。
すごくストイックですよね。できるアプローチは全部やって当たり前みたいなところがあって、それは見ていて気持ちがよかったです。
具体的に言うと?
鷹村は豪傑な役なので、体をものすごく鍛えられていたんです。そうしたらデカくしすぎて、動きにくくなってしまったらしく、今度は逆に少し筋肉を落とそうとしていて。

そこまでストイックな方は、僕の周りにはあまりいないので、「ちゃんとした役者さんだ!」と思いました(笑)。
舞台となっている姫路城を始め、地方ロケも多かったと思いますが、共演者と食事に行ったりすることもあったのでしょうか?
(春之介に国替え術を指南する於蘭役の)高畑充希ちゃんとは一緒に撮影するシーンが多かったので、よく食事に行ってました。あとは松重 豊さんですね。
松重さんは春之介に「国替えに失敗したら即切腹!」と言い渡す怖い上司の役ですが、裏では仲良くなられていたんですね(笑)。
松重さんは音楽がすごく好きな方で、出会ったその日から休憩時間も話が止まらないくらいでした。共演させていただくのは今回が初めてだったのですが、お会いした初日に連絡先を交換して、夜中まで一緒に食事をしていました(笑)。
よほど意気投合されたのですね(笑)。
そのときは京都の京丹後市で撮影をしていて、ホテルのある京都市に戻ってくるまで3時間弱かかったんです。松重さんとは別の車で移動していたんですけど、そのあいだもずっとメールでやりとりしていて。カップルのようでした(笑)。
今まで、そこまで共演者と仲良くなったことは?
初めてかもしれません。松重さんもそんなに共演者と食事に行く人ではないらしくて、僕自身も本当に仲良くならないと行かないので。松重さんは大先輩ですけど、僕の中ではもうベストフレンド(笑)。親友を見つけた感じがしていて、そういう意味でも今作は思い出深い作品になりました。

理想のリーダー像は『いだてん』で共演する阿部サダヲ

コミカルなシーンが多かったと思いますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?
主に京都で撮影していたんですけど、気候的に厳しい時期で。加えて、監督の犬童一心さんがとてもこだわりのある方なので、朝から晩まで撮影していたんですよね。

なので、和気あいあいというよりも、みんな必死にやっている感じで。できあがったものを見るまでは、ちゃんとコメディになっているのかなと心配になるくらい大変でした(笑)。
春之介たちが引っ越しの道中で歌う「引っ越し唄」のシーンはとくに楽しそうでしたが…。
撮影は過酷でした(笑)。劇中で使われているのは数分だと思いますが、実際は丸1日かけて日陰がまったくない場所で撮っていたので、ずっと日に照らされていたんです。
そんなに大変だったとは!
エキストラさんもいたし、馬もいたので、あそこは本当に大変でした。映像で楽しいシーンに見えているならよかったです(笑)。
コメディの場合、どこまでやるかのさじ加減が難しいと思うのですが、星野さんはそのバランスについてどのように考えられていましたか?
あまり頭で考えないようにしていました。今回は脚本の時点でおもしろかったので、余計なものをプラスしないほうがいいんだろうなと。

それに、感動するシーンもしっかりと作っていきたかったので、目先のおもしろさを求めるよりは、ひとつずつ真剣に作っていって、その中で自然に生まれる笑いを感じてもらえたらいいなと考えていました。
たしかに、本当にダメダメだった春之介が立派に国替えを仕切っていく姿には感動を覚えました。その姿は理想のリーダー像と言えると思いますが、星野さんの身近にそういう方はいらっしゃいますか?
阿部サダヲさんですね。NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の現場でそれを強く感じました。
どういうところに感じたのでしょうか?
無理に鼓舞したり、リーダーシップをとったりすることがまったくないんです。

現場でもひとりでお茶を飲んでいて本当に静かに過ごされているんですけど、みんな阿部さんのことが大好きで、阿部さんの芝居に触発されて周りのお芝居もどんどんおもしろくなっていくんですね。

そうすると周囲も笑顔になっていくし、自然と阿部さんが主演として中心になっていく。それが見ていて感動的というか、本当にカッコいい人だなと思います。
人によっては「俺についてこい!」というタイプの方もいらっしゃいますし、主演にもいろんな方がいるんですね。
「俺がまとめる!」みたいな方もいますが、阿部さんはそうじゃなくて、余計なことは一切しないんですよね。でも、急なむちゃぶりにも必ず「はい」と言っておもしろいことをするし、あの人は本当にカッコいい。たぶん阿部さんが主演でなければ、現場はもっと大変になっていると思います。

自分の“到達点”は決めずに、おもしろいことをやり続ける

昨年末、アルバム『POP VIRUS』を出されたときに、「『恋』が爆発的にヒットしたことで、陰の自分が膨らんでしまった」とラジオでお話されていました。そこから時間が経過して、今はどのような思いでいらっしゃいますか?
あのときはいろんなことが目まぐるしく変わっていったし、少しのことがものすごく大きなものになってしまう状況だったので、何をやるにも「怖いな」と思うところがありました。

昨年の1年間は、「あきらめる」と言ったら言葉が悪いですけど、「しょうがないな」と思っていて。でも、その中でアルバムを作って、ドームツアーをやっているうちにいろんなことがよい方向に変わってきて、いい意味で自分がいい加減になったというか、いろいろなことを楽しめるようになってきた気がします。
ご自身の中に少し余裕ができてきたということですか?
そうですね。あとは、ちゃんと余裕を作ろうという感じですかね。スケジュール的にもそうですし、精神的にもしっかりと余裕を持っていろんなことに臨んでいこうと思うようになりました。
お話をうかがっていると、人気者になったからこその苦悩があるのかなと。
どうなんでしょうね。注目していただけるのはありがたいことですし、下積み時代も長かったですから。だから、長い目で見れば、自分がそういう状況になったのもすごくいいことなんじゃないかと今は思っています。
音楽家としての活動に加え、俳優としても大活躍し、いつ休んでらっしゃるのかなと思うのですが、原動力になっているものは何なのでしょうか?
“好き”という気持ち。音楽もお芝居も、中学生のときから続けてきて、好きというのがいちばん中心にあります。だから辞めようとは思わないですね。

有名になりたいとか、仕事としてヒットを飛ばしたいというのが中心だと、もう辞めているのかもしれません。でも、好きなので、飽きない限りは続けると思います。
そんな星野さんが考える到達点は?
あまり考えてないですね。

僕はおもしろいことがしたいので、到達点を決めると、目標だけに向かって進むようになってしまうんじゃないかなと。たとえそのあいだにおもしろいことがあっても、無視しないといけなくなってしまうかもしれない。

だからこれからも、おもしろいことを思いついたら、飽きるまで「やる」を貫いていくような気がしています。
星野 源(ほしの・げん)
1981年1月28日生まれ。埼玉県出身。AB型。2013年に映画『箱入り息子の恋』、『地獄でなぜ悪い』などに出演し、翌年の日本アカデミー賞新人俳優賞など映画賞を多数受賞。2016年には出演ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が社会現象を巻き起こし、自身が手がけた主題歌『恋』も大ヒット。2018年にはNHK連続テレビ小説『半分、青い。』の主題歌『アイデア』を担当した。アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』、『未来のミライ』では声優を務め、『いのちの車窓から』(KADOKAWA)を始めとする多数の著書を刊行するなど文筆家としても活躍している。NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』に出演中。

映画情報

映画『引っ越し大名!』
8月30日(金)ロードショー
http://hikkoshi-movie.jp/
©2019「引っ越し大名!」製作委員会

サイン入りポラプレゼント

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応募方法
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受付期間
2019年8月26日(月)18:00〜9月1日(日)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/9月2日(月)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから9月2日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき9月5日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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